第11話 側近Rは人生の挫折を味わってからの再出発をする
私はあの馬鹿ラス……いえサイラスと同様に5歳の側近候補選考より選ばれたのではなく、私自らが父へと願い出た後に殿下へと私自身を売込みに出向いたのです。
普通は馬鹿なとかそんな事はあり得ない――――と思うでしょうね。
たった5歳児の癖に……ともね。
ですが貴族の家に生まれそれが嫡男でない場合の次男三男は嫡男のスペア若しくは何かしらの利用価値があれば利用され、何もなければそのまま打ち捨てられる。
そう嫡男以外の子供の人生とはそれ程までにシビアなものなのです。
ただ往々にして多くの者はそれを中々受け入れる事が出来ず突き付けられた現実を逃避すればです。
自ら進んで自滅していく又はこの際家格等どうでもよく、男児のいない令嬢の婿養子として爵位を継承か場合によっては女性の持つ爵位の補佐として生涯を送ると言った具合でしょうか。
もう一つは王宮の一文官として平から叩き上げての運が良ければ出世街道の夢を見られる事も
そしてサイラスの様に体力に自信のある者は騎士として軍功を上げれば騎士爵へ、一代限りですが叙爵をされる事もあります。
また7歳で行われる魔力測定の儀式で思わぬ結果が出れば魔塔で魔法師それか魔法騎士と言う道もなくはありません。
ただし何れの場合もどの時点で自分の身の内に秘められし能力を見極め、迅速に動くかで将来の道は決められてしまうのです。
一般的にはまず最初に7歳の選定の儀式。
次は12歳より始まる学院で何を選び学ぶかでも決まりますね。
その次が15歳、二年後の成人を控えた準成人として結婚も認められる年齢です。
そうして最後に17歳で成人し最終的なる道を選択します。
まあこれはあくまでも一般的な模範解答ですよ。
人生は波乱万丈なのだと以前本で読んだ事があります。
また私の人生の岐路はその模範解答の何れにも該当しません。
何故なら私は4歳で自分の能力を何となく悟ったからです。
貪欲に知識を会得する事へ喜びを感じれば、その得た知識を余す事無く使える場所は一体何処なのだろうかと考えた結果一つの答えが導かれたのです。
そう同じ年齢の王子殿下。
彼の秘書官上手くいけば宰相と言う道も捨て難い。
幾ら公爵家の子息と言えどもです。
そこは幾ら正攻法では私の望む人生は得られないと悟りました。
学院時代で運が良ければ学友からの側近候補?
ですがこの私が運等と言う不確定で頼りないものに人生を掛ける――――それこそ有り得ない。
運=博打等で人生を決める事程愚かしいものはない。
それよりも私は父より王家が王子殿下の側近候補兼学友を選考し始めたと言う情報を得ました。
確かにその選考に私も含まれるでしょう。
しかし人生とは与えられるだけではない筈。
そう私は己が道を自らの手で選び進みたいのです。
他人からの施し等必要はない。
『だから単身で僕の所へやってきたと言うの?』
何故でしょう。
私は父を介して王宮で殿下と対面する機会を得ればです。
ただ一人の世継ぎ王子故に相当甘やかされているだろう。
そこは一般的な5歳児ばかりだと思い込んでおりました。
だからこの豊富な知識を誇る私がっ、そう私が王子の知恵となって何れは国の――――⁉
『これ以上馬鹿な考えはやめた方がいいよ』
『な、何……を』
『たった5歳で死にたくはないでしょ』
『死? え、あ、い……』
目の前の王子が一体何を言わんとしているのかがわかりませんでした。
いえ正確には理解したくはなかったのだと思います。
何故なら生まれて初めて目の前の人物に対して恐怖を抱いてしまったのです。
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