第8話 魔王に魅入られた側近S Ⅱ
「おうおうスゲぇな。やっぱ実際聞くと見るとは大違いだっっ」
目的場所である鍛錬場は思いの外直ぐに見つかった。
そして俺はひっそりと隠れて……まあな。
幾ら頭のネジが一つや二つはないとは言ってもだ。
正体不明の5歳児が鍛錬場の、然も王宮騎士達が集う鍛錬場へひょっこり現れ見学するのは決して褒められる事ではないくらい俺だってわかるってものよ。
まあその辺に関して俺は
そうして俺は木刀で様々な剣劇を繰り広げている騎士達に見入っていた。
もう心がしっかりと鷲掴みになっていたと言ってもいい。
だから――――周りの異変に何も気が付かなかった。
「ねえ彼らを見てそんなに面白い?」
「ああスッゲぇ面白いって言うかさ。もうドキドキとワクワクが止まらな――――?」
ここで初めて俺以外にもう一人いる事に気が付いた。
いや、一人なんかじゃねぇ。
よくわかんねぇが目の前にいる俺と同じくらいのガキと何人か……そう大人が複数人いる!?
俺はゆっくりと、出来るだけ……本当はスゲぇビビっているし泣き出したいのが本音だ。
だがこれに気が付いているのは俺だけであり、気づいてしまった以上俺は表情を変えないようにしつつとは言え5歳児には色々と限界ってもんはある。
それでも泣きたい気持ちを必死に抑えて目の前のガキへと向かい合えばだ。
出来るだけ小さな声でそっと囁いた。
「おい、俺が合図したら一気に鍛錬場の方へ走るんだぞ!! 何なら声を思いっきり叫んでもいい。でも絶対に後ろは振り向くなっ。前だけを見て走れっ、いいな!!」
俺は恐怖とちょっとした後悔と泣きたくなる気持ちを堪えてそっとガキの手を掴んだ。
まあ何処で知り合ったのかもしれないけれどもこれも何かの縁……なのかな?
取り敢えず身につけているものは上等な服――――に俺と同じくらいの年齢。
多分だ。
ああきっと俺が逃げ出したのを見て面白がってついてきただろう例の候補の子息だろう。
へへっ、俺って何気に冴えているじゃん。
まあ誰かは知らねぇが取り敢えず助けてやろう。
そう俺は将来騎士になるんだからな。
これも騎士道精神ってもんだ。
何と言っても騎士は強くそして人に優しくなくちゃあいけねぇからな。
それにしてもだ。
可笑しいのはこの感覚。
周りから幾つもの視線を感じるけれども何故かありがちな殺気は感じない。
でもだからと言ってずっと見張られているのは何とも鬱陶しい。
おまけに隙は全くない。
この状態では動く事――――?
「はは、やはり君は凄いね」
「はあ?」
こいつ何を……。
「君の魔力は
「お、おまっ、一体何をって言うか、幾ら何でも初対面の相手へ多少の気遣いってもんくらい……」
「でも事実だよね。頭を使う事よりも思いつくままに身体を動かすのってはっきり言えば脳筋だよね。然も物心のつく頃よりサーチの能力に目覚めている。
何を勝手にべらべらとってこいつ一体何者だっっ。
「ふふ、そんなに僕の正体が気になる? じゃあ……そうだね、試しに僕の胸倉でも掴んでみるといい。そうすれば面白いものが見られるよ」
きっとね……そう言って目の前のガキはクソ生意気な事を言ってのける。
別にそんなバカみたいな挑発に乗って……ああ上等だ!!
こいつの胸倉くらい軽く掴んでやろうじゃねぇかって言うの。
「――――っっ⁉」
こいつの胸倉を掴もうとした刹那だった。
こっちの様子を見つめていた視線はその刹那で殺気へと塗り替えられるだけでなく、物理的にも数人の騎士が俺の喉元へ剣が向けられるだけじゃないっっ。
向こうは俺がただの5歳児だからと言って容赦する事はなく簡単に地面へと拘束した――――ってアリなのか⁉
「もういいよ。彼を放してあげて」
「ですが……」
「何? 僕の言葉が聞こえないのかな?」
「い、いいえっっ」
そう返事をすれば騎士達は俺を即座に開放すればだ。
直ぐに起こしてくれただけではなく、服に付いただろう土もしっかりと払ってくれた。
それにしてもこいつ……って何者だ。
身体のごつい騎士達のこいつを見つめる視線って言うか全身全力で恐れている?
俺と然して変わりのないいや、身体つきでは俺の方が大きいししっかりとしている筈。
でも何だろう。
こいつの放つオーラが半端なくヤバいって俺のサーチ……いやいや本能がビシビシとそれを告げている!!
そして一刻もこの場から逃げろ――――って。
「……駄目だよ。もう僕からは逃げられない。だって僕は君を気に入ったのだからねサイラス」
「おまっ、俺の名前を――――」
今思えばこの日……いやもっと早い時点で俺は
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