第7話 魔王に魅入られた側近S
えーっと先ず俺に何かを質問するのは得策ではないと思うぞ。
そして俺に頭を使う事を強要するどころか決して望んではいけない。
俺はサイラス・ジェイラス・ウィルモット。
ミリガン伯爵家が嫡男だ。
だが俺は長男だが家は継がない。
そんな面倒なものは今年生まれたばかりの弟に丸投げをしようと思うって言うかな。
弟が生まれその日に母上と父上、そして母上の腕の中ですやすやと眠っている弟へ高らかに宣言してやった。
まあ当然親父は激おこ……卒倒寸前だったのはわからない訳でもない。
母上に至っては産後の疲れ……うん、そうきっとかなり疲れておいでだったのだろう。
何しろ聞いた所によれば子を産む行為は色々と命懸けのものらしい。
きっと十年前に俺を産んで下さった時もかなり疲れておいでだったのだろう。
まあ何と言っても俺は母上の初めて産んだ子供だからな。
おっと話がちぃとばかり逸れてしまったな。
そう言う訳で母上はお疲れの余り弟を抱いたまま失神されてしまわれた。
良かったな母上。
寝台の中での失神だから怪我をする事もないぞ。
だが俺の思惑とは違いその後は何とも大変だったのだ。
先ず母上が失神されたと言うのに父上は母上の名を呼ぶばかりでおろおろと狼狽えられるばかりだし、産婆と医師は母上へ掛かりきりとなれば侍女達も忙しそうに動き回る――――って所で俺は乳母に首根っこを掴まれれば、外で待機をしていただろう侍女に引き渡された。
『……坊ちゃまはお部屋でよぉく反省なさいませ』
反省と言われても……反省するものがわからん場合はどうするよ。
そうして悶々と考えあぐねていればである。
ものの数分後に父上もまた部屋から放り出されたのは言うまでもない。
取り敢えず四ヶ月経った現在でも家督に関しては保留らしい。
だが俺は諦めてはいない。
だって俺は見つけたんだからな。
そう俺のなりたいものに――――。
カールハインツ王子殿下の護衛騎士。
これが将来俺のなりたいもの。
そしてこれだけは他の誰にも譲りたくはないもの。
そんな俺とカールハインツ……カールと出会ったのは今から5年前。
そう5歳の時に王宮のとある場所において数名の子息達と引き合わされたんだ。
その目的は将来の国王の側近候補として。
全員が選ばれた訳じゃあない。
また全員が選ばれない可能性もあった。
書類選考から始まりありとあらゆる――――って高々数年、上は8歳から下は3歳だったかな。
国中の貴族から目ぼしい存在をピックアップされればだ。
その家の過去の経歴もだが選ばれた俺達の素質って本当に把握出来るのかが今一わからん。
だがその様々な中より厳選され選ばれた者が王宮でカールへと引き合わされる。
そうしてその者達より実際カールが選んだ者。
カールと会って話をしてその中より性格の合う者……って今一あいつの基準が分からねぇ。
何故なら俺はそんなお茶会と言うか選ばれる事を善しと思わなかったからな。
大体王族だか何だか知らないけれどもだ。
俺だって選ぶ権利の一つや二つくらいあってもいいと思う。
相手に選ばれたら『はいそうですか。光栄です』なんて思えねぇって言うの。
だから俺は王宮へ連れていかれた早々に、親父の目を盗んでその場より抜け出したんだ。
勿論目指す行先はただ一つ!!
ああ前から興味があったんだよな。
王宮騎士団の騎士達にな。
だから俺はこのチャンスを見逃しはしない。
幸い今日の催し会場からと騎士団の鍛錬場はそんなに離れてはいない。
目指すは場所までまっしぐらさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます