第2話 王子様の拗れ具合について Ⅱ
フォーゲル伯爵令嬢 クリスティーネ・ハイデマリー・ティルピッツ。
僕の可愛い天使であり愛しい俺だけのお姫様。
あの日は勉強を終えてからの国政について父上と宰相から学んでいたのだ。
いや学ぶと言いつつ父上の執務室で小さな案件を実際にこなしているのだけれどね。
まあ最終的には宰相と父上の判断を仰ぎ問題がなければそのまま父上のサインと魔印が押される。
魔印とは簡単に説明すれば魔力で作られた判子の様なモノだな。
魔力の本質とは誰一人として全く同じものを有する事はない。
確かに系統や属性、同じ様な特殊能力を秘めた者は存在するだろうが、潜在的に秘められた魔力の本質だけは血の繋がった親子と言えど全く異なるものなのである。
一般的に貴族以上の者は7歳の時の魔力測定の儀式に自身の保有する魔力で以って己だけの魔印を生成する。
その時に生成された魔印は生涯に渡り使用するもの。
どの様な色や形となるかはその者が保有する魔力の質によって決められる。
因みに父上の魔印は紅の蔦に絡まる紅蓮の獅子。
書類へサインをすれば紅色に輝く父上の魔力が注がれれば、書類全体に父上の魔印が刻み付けられる。
普通の状態ではただの書類として文字を読むには何の問題もない。
通常時は書類に刻まれただろう魔印はその姿を現しはしない。
だが魔印を一度でも刻まれた書類には改ざん等の不正行為は一切出来ないと言うか恐らく無理……だろうな。
いや、魔印を刻んだ者よりも倍以上の魔力を持ち尚且つ解呪の呪いを受ける覚悟があるのであれば改ざんも可能と言えば可能になる。
だがその解呪の呪いはそう簡単に解ける事はない。
何しろ呪い……だからな。
遥か昔この国だけでなく世界的に書類を改ざんし不正行為をする者が後を絶たなかったと言う。
まあ何時の世もどうしようもない屑の様な者が存在していると言う事だな。
それを憂いた先祖達はそれぞれの国を建て直す際に信頼の出来る者達と考えに考えた末考案すれば採用されたのが魔印だった。
最初の頃は解呪の呪いの何たるかも知らずに愚か者達が幾度となく不正を試みたらしい。
すると直ぐに解呪の呪いは発動し一番罪の重い者は未だに死ぬ事も許されず、とある場所で永遠の虜囚となっているらしい。
それ以下の者達も碌な生涯ではなかったと記憶しているけれどもな。
それ以降からかな。
不正行為が格段に減ったのはね。
でも最近は平和ボケに慣れた者達が何かと増えてきたからね。
それに僕としても解呪の呪いの末路と言うものを一度はこの目で見てみたい。
だから早く誰か引っ掛かってくれないかな。
出来ればアロイジア達ならば……ね。
きっと誰よりも僕自身が愉しめると思うのにね。
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