chapter2  伯爵令嬢の取り巻く環境と魔力測定の儀式

第1話  王子様の拗れ具合について

 僕はこのリーネルト王国の王子カールハインツ。

 

 現在僕には何人かの婚約者候補が存在する。

 何故何人か……と言う表現をするのかと問われれば、それは単に僕が彼女達へ興味を持てないと言う他ならない。

 そしてその筆頭はゲルラッハ公爵家の令嬢アロイジア。


 彼女は王族と姻戚関係と言う事もあり幼い頃より会う機会が多い。

 だがはっきり言って僕はあの子の事が好きではない。

 いや、候補の令嬢全てに……抑々そもそも婚約そのものに興味がないと言った方が正しいかな。


 何と言っても女は皆総じて煩いだけでなく香水臭い。


 甘ったるい花の匂いをこれでもかと振り撒けば、まだまだお互い子供の癖にゴテゴテと化粧を施し、キラッキラのドレスを纏えばその姿で皆僕の許へと闘牛の如く、うんそれはもう一直線に突進してくるのである。


 はっきり言って迷惑この上ない。


 母上の命令とあり仕方なくお茶会へ参加しているとは言え、子供の癖に発情しっぱなしの雌牛の、然も1対1ではなく僕一人対少なくとも5、6頭の雌牛ならぬ令嬢が一気に襲い掛かってくるのだよ。

 

 それをマタドール宜しくと言った具合に寸での所で何とか躱してきているけれどね。

 はっきり言ってあれは本当にシュールだよ。

 いっそ本物の闘牛の様に剣を突き刺していいのならば僕は躊躇う事無く刺していたと思う。

 

 特にアロイジアと言う雌牛はかなり手強いし、出来る事なら彼女から心の臓を目掛けて突き刺したい。


 

 確かにアロイジアは他の候補者よりも抜きん出て優秀だと思う。

 そして色々と努力をしている所は評価をしてもいい。

 でもだからと言ってその努力を僕に押し付けないで欲しい。

 幾ら王子が僕一人だからと言って、まるでアロイジアが努力した全てを僕が責任を取る必要はないと思う。


 何故なら彼女は婚約者


 まあ裏では目ぼしい候補の令嬢達を虐めていると言う噂まであるからね。

 でもそれは噂ではなく真実だと思うよ。

 表面上お淑やかで優秀、将来の王太子妃として期待されていると評価が高い一方で、彼女の性格はかなりえげつない。


 勝ち気で苛烈で自信過剰の傲岸不遜にヒステリックからのサディスティックな一面もあるかな。


 父親のゲルラッハ公爵によく似た娘だよ。


 そんな彼女を幼い頃より見てきた僕が女性を厭う気持ちになるのも当然と言えばそうなのかもしれない。

 母上や父上達はそんな人間ばかりじゃないって言うけれどもね。

 確かに僕の両親は王侯貴族世界にしては珍しい恋愛を経ての結婚だ。

 今でも夫婦仲は良好と言うかだな。

 父上は母上の尻に敷かれて喜んで……変態か。


 そんな父だが為政者としては尊敬をしているよ。


 民を想い国を想う優しき王。

 だがその反面不正には厳しい……けれどもまだまだ僕から見れば父上は優しい男だね。



 それにしてもアロイジアのお蔭で煩いコバエの様な令嬢を一掃してくれるのはいいが、一番のオオスズメバチであるアロイジアをどう処理すればいいのかな。

 あの女王バチを退治するには色々と策を講じなければいけない。


 そして将来僕とこの国にとって益となる令嬢若しくは他国の王女を将来の王太子妃と据えればだ。

 王族の務めとして子を生し、それもスペアを入れて二人くらい孕ませればもう誰にも文句は言わせない。

 

 女に支配される事なく僕は立派な王としてのみに生きる心算なのだよ。


 そう思っていたのにね。

 そんな拗れに拗れまくった僕の心をあっと言う間に解してしまう女の子に出逢うなんてね。


 僕は本当に忘れていたのだろう。

 そうして久しぶりに再会したあの子によって凍結されていた心が一瞬で溶けてしまったのだ。



 クリスティーネ。

 僕の大切で可愛い僕だけの女の子。

 誰からも護りたい。

 誰よりも一番幸せにしたい。

 当然この僕の持てるもの全てで以ってね。


 だから早く大きくおなり僕の大切なお姫様。

 君が17歳になった時、僕は愛する君を必ず妻に迎えるからね。

 

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