第3話  転生先がおとめげーむと酷似し過ぎる世界ってアリですか⁉

 前世日本で、社畜同然に扱き使われクタクタの身体で帰宅をすればである。

 そうして一日の終わりにとキンキンに冷えたビールと愛すべきつまみ達を片手に最初は何気に興味本位で始めたモノが何時しか毎日の日課となり、気が付けばついつい先が気になって遊んでいた乙女ゲーム『真実の愛はただ一つ!! この愛からは絶対に逃れられない』。



 最初は友人に勧められ、半ば無理やり押し付ける様に部屋へ置いていったディスク。

 まあ最初はそんなもん……って感じに部屋の隅で放置する事数ヶ月――――ってその間もちゃんと部屋の掃除はしていたわよ!!

 それに興味がないとは言え何時までもディスクを床へ放置何てしないし、一応友人が貸してくれたのだからそこはきちんとチェストの上にある籠の中へ入れておいたのよ。


 そうして数ヶ月……偶々何かを探している時に見つけてしまったのがこのゲーム。

 

 その時の私は単なる好奇心かそれとも時間潰し的なものだったのだろうか。


 多分休日に暇を……ってまあ何時も年中お一人様ですからね。

 暇は確かにありましたよ。

 だからきっと時間潰しで始めたのだと思う。


 

 またそれまでの人生において乙女ゲームなるものをした事はなかった。

 精々やってテト〇スまたはパズル関係若しくは小説を読んでいるのが私の休日のルーティンだった。


 だからあれはきっと興味本位。


 そして始めて見ればゲームの内容はまあはっきり言って一般的な乙女ゲームらしいもの?

 

 ヒロインはヒーローの婚約者候補である悪役令嬢にこっ酷く虐められ――――って抑々そもそも人の男を取ろうとするヒロインの性格に問題があると私は冷静に思った。


 だってそうでしょう。

 ヒーローは一国の王子様設定……いやいや王子でなくともたとえ一般男性であったとしてもだ。

 相手のいるだろう男へアプローチする何て私の中に存在する常識ではあり得ない。

 普通に考えても王子様の婚約者候補と言えばそれなりの令嬢で、はっきり言えば未来の王妃様にほぼほぼ決まっている様な女性なのだ。

 

 そこへヒロインが王子様を横取りすれば悪役令嬢でなくとも普通の恋人同士であれ、これはかなりヘビー且つ厄介な問題へと発展するのは目に見えている。

 どう客観的に見ても悪いのは悪役令嬢ではなく二人の間へ割って入ってきただろう


 なのに何故か王子様は悪役令嬢ではなくヒロインを助ければ、瞬く間に恋へ堕ちてしまった――――ってこれ絶対に有り得んし許せないだろうな!!


 然も婚約者候補である悪役令嬢自身きっと王子様と釣り合う立派な身分の筈なのにそんな彼女を追い出せば、ヒロインと王子様はハイスピードで婚約を交わし後は豪華絢爛なる結婚式を待つと言うハッピーエンドって何だこれ?


 この二人は余りにも無責任でそして何だろう。

 所謂頭に虫……花が咲いていると言うか既に湧いている?

 

 まあこんな安っぽい男とはさっさと別れられた悪役令嬢は最初こそショックなのかもしれない。

 でも長い目で見れば幸せ――――って何だこれ!?


 驚く事にヒロインと王子様はトントン拍子に婚約までは無事に済ませられたけれどもである。

 だがやはりお馬鹿なヒロインに待っていたのはあるあるの厳しい王太子教育だった。

 うん、確かにゲームや物語と言えども現実と言うものは何時の世も厳しいものなのよ。


 私はゆっくりと何度も頷いてしまった。


 しかしこのヒロインには何処をどう探してもと言う文字は一切見当たらず、あっと言う間にお妃教育に音を上げてしまったのである。


 だったら直ぐにでも王子と婚約を解消しろと私は心の中で叫んでいた。


 だがヒロインは元来とても欲深いのだと思う。

 何と言うか、一度手に入れた地位を捨てるには惜しいと思ったのかそれとも百歩引いて王子への恋……心と言うあやふやなものかあったのかもしれない。


 さり気……いやいやここはしっかりあざとくだろう。

 私には決して真似の出来ない猫撫で声と言うもので媚びる様に王子へお願いすればだ。

 おまけにしっかりと長いまつげをぱちぱちさせつつ憂いを含めば下からの、がっつり上目遣いまでしていやがる。

 そうして絶対に考えられないしあり得ない事に王子はヒロインの望み通り周囲の猛反対を他所に彼女の妃教育を中止させれば――――って、大概だけれどこの王子も相当阿呆なのだと私は思う。


 まあ言うまでもなくお花畑なヒロインは何も出来ないお飾り的な王妃へと出世をし、またここで何故か追い出した筈の悪役令嬢が本来王妃が行うべき公務の全てをとして国王の許へと召し上げられればだ。

 当然とばかりに彼女が行う事となってしまった!?


 私はここで激しく悪役令嬢へ同情した。

 何故に舞台より降りた際にさっさと逃げ出さなかったのかと……。

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