第606話 崩壊都市コース(前編)
スタートシグナルが緑へと変わるや否や、北のバルーンへと走り出すカヌスのマシン。それを追走するでなく、まず一発ミサイルをぶっ放して、右前方のビルの破壊を優先するカッテナさん。
そんな妨害工作など初めから分かっていた。とでも言いたげに、倒れてくるビルに向かって射出式ウィンチを撃ち出すカヌスだったが、フックがビルに引っ掛かろうと言うところで、レーザーが通過してビルを破壊した。やったのは南へ向いていたはずのバヨネッタさんのマシンだ。
今回の作戦は、カヌスに対して同ルートのカッテナさんと、真逆のルートのバヨネッタさんと武田さんが、カヌスの妨害に当たる。
180度反転して、中央の電波塔を躱して、カヌスのマシンを追走するバヨネッタさんと武田さん。ウィンチのフックが空振りして、ビルに引っ掛けられなかったカヌスだったが、バヨネッタさんのレーザー砲が思ったよりも威力があり、ビルを予想以上に破壊したので、その部分だけ登り坂のようになってしまっていた。これを見逃すカヌスではなく、マシンをその登り坂へと滑り込ませ、ぐんぐん登っていく。
まあ、初手で止められるとはこちらも思っていない。こちらの三台もカヌスを追って登り坂を登っていく。登った先は横倒しとなったビルがそのまま崖となっているが、そんなものはお構いなしに、カヌスは飛び出し、ガタガタの路面に着地すると、後続の三台を引き離してバルーンへと向かう。
そんなカヌスのマシンを、カッテナさんと武田さんのマシンがビルの崖を飛び出して追い掛ける中、横倒しのビルのから上を取ったバヨネッタさんが、カヌスのマシン目掛けてレーザー砲を連射する。
これを右へ左へ見事なドライビングテクニックで避けるカヌスだったが、そこへ飛んでくるのが武田さんのマシン前方に付いた射出式ウィンチだ。
そのフックがカヌスのマシンの後部に引っ掛かると、思いっ切りマシンをバックさせる武田さん。これでマシンのコントロールを奪われて、バルーン直前で止まってしまったカヌスのマシンへ、更にカッテナさんのマシンが襲い掛かる。
レーザーカッターと丸鋸が、カヌスのマシンを斬り刻もうとその刃を向けるも、カヌスは武田さんのマシンの引っ張る力に逆らわないように、マシンを同じくバックさせる事でカッテナさんの攻撃を回避、同時にこれによってフックが外れた事で、マシンのコントロールを取り戻したカヌスは、素早くマシンを再度前進させて一つ目のバルーンに触れて、バヨネッタさんのレーザー砲の射線から逃れる為に、東の横道へと逃げ込んだ。
これを追うように横道へと入っていくカッテナさんと武田さんのマシン。それに遅れてバヨネッタさんのマシンも後を追う。
四台がそんなバチバチのやり取りをしている中、他の面子はどうしているかと言えば、ダイザーロくんとミカリー卿の4WDチームは、順調に西のバルーンにタッチして、北西のバルーンへと向かっていた。都市は徐々に崩壊し始めており、頭上からは砕けたビルの破片が降ってくるし、路面も隆起したり陥没したりと、マシンの行く手を阻んでいるが、西側はまだまだ崩壊が遅いようだ。
対して東を進む俺とデムレイさんの二台の前を、倒壊したビルが行く手を遮っていた。俺たちが破壊した訳ではなく、ランダムに崩壊していく都市で、運悪くこのような事態になってしまっただけだ。引き返して横道へ迂回するのも手だが、それでは時間が掛かり過ぎる。
『デムレイさん!』
『おうよ!』
俺の念話に応えて、デムレイさんのマシンのボディに搭載されているクレーンが、俺のマシンへとフックを引っ掛けたかと思ったら、強引にクレーンで俺のマシンを投げ飛ばした。
デムレイさんのマシンと、フックとワイヤーで繋がったまま、俺のマシンは横倒しになったビルの上まで飛ばされるも、見事に着地。まあ、マシンに二つ付けられた超大口径ホイールをジャイロ回転させて、安定させたのもあるが。
ビルの上に着地した俺は、デムレイさんのマシンのフックが付いたまま、バルーンへと直進する。これに引きずられるようにビルを登るデムレイさんのマシン。
こうやって互いに助け合いながら、ビルを越えた俺たち二台は、東のバルーンにタッチすると、戦闘を避けるように、南東のバルーンへと向かった。『六識接続』で他の面子の視点を確認するに、どうやらこちらの方が、他の二地点より崩壊の速度が早いようだ。碁盤の目状になっている道のいくつかは、既にビルの倒壊によって、通行不能となっていた。
俺とデムレイさんが大通りを迂回しつつ南東のバルーンにタッチした時点で、ダイザーロくんとミカリー卿は北西のバルーンにタッチし終えており、二台はもう東へ、北と北東のバルーン目指して移動していた。
こうして着々と俺たちがバルーンにタッチする中、カッテナさん、武田さんのマシンに追われるカヌスのマシンは、碁盤の目状の道を右へ左へと方向転換しながら、射線を潜り抜けて、北東のバルーン地帯へと到着。
ドーンッ!!
それと同時に爆撃音が鳴り響く。カッテナさん、武田さんと別ルートで北東のバルーンへとやって来た、バヨネッタさんのマシンによるミサイル攻撃だ。これによってバルーン地帯は爆煙に包まれるのだった。
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