第415話 ガチャ結果(前編)

「はあ、まあ良い。確かにシンヤたちに比べても、ハルアキの能力上昇やスキルの増減は異様だからな」


 とゼラン仙者。『鑑定』で俺のステータスを見たのだろう。


「そんなに変わってますか?」


「自分で確認すれば良いだろう? 弱いが『鑑定』を手に入れているんだから」


「え!? 『鑑定』!?」


「何故驚く? 自分の命を削って買ったのだろう?」


 ゼラン仙者だけでなく、皆が不思議そうに俺を見ていた。


「いやあ、それ多分、十連ガチャで手に入ったスキルですね。ラッキーでした」


「十連ガチャ!? 自分の命削って、十連ガチャしたの!?」


 驚いているのはシンヤだけだ。他の面々は十連ガチャが何なのかも理解していないのだろう。皆が俺に視線で説明を求めていた。仕方なく俺は十連ガチャがどんなものか説明した。


「馬鹿だろう」


 そんな、皆して呆れなくても。


「日本人は、十連ガチャの魅力には抗えないんです」


 俺の言葉を聞いた全員の視線が、シンヤに向けられる。


「ええ? どうだろう? 僕はあまりゲームをやらないからなあ。でもガチャで身を持ち崩したって話も聞いたりしますね」


 それを聞いた全員の俺を見る目が、残念なものを見る目に変わった。はいはい。俺は残念な人間ですよ。


 それにしても『鑑定』か。これはとうとう俺もあの言葉を口に出す時が来たのだろう。


「ステータスオープン」


 俺がうきうきとそう口にすると、確かに俺の前に半透明のステータス画面が現れた。おお! テンション上がる!!


「何をやっているんだお前は」


 が、ゼラン仙者始め、皆が呆れ顔で俺を見ている。


「そんな事をいちいち口にしなくても、念じるだけで『鑑定』は出来るぞ」


 と優しいゼラン仙者の言葉に、俺は顔が赤くなるのを止められなかった。


「へ、へえ、そうなんですねえ」


 曖昧な返事で済ませて、俺はステータス画面の方に視線を向けた。恥ずかしくて皆の方を向いていられなかったからだ。


 あれ? 俺のステータスが全体的にさっきよりちょっと上がっているな。何でだ?


「どうかしたの?」


 俺がステータス画面(多分俺にしか見えていない)を見て固まっていたのを不思議に思ったシンヤが声を掛けてきた。


「いや、さっき女神のショップにいた時よりもステータスが上がっていたから……」


「レベルが上がったからだろう」


 とゼラン仙者が教えてくれた。レベルが? 確かに一つ上がって三十九になっている。これって十連ガチャの商品の一つか? 混合セットはレベルやギフトも獲得出来たはずだ。いや、


「これって、皆も死に戻ったら自然とレベルが上がっていたんですか?」


「そうだな。神丹もコレサレの首飾りも貴重なので、検証目的では使用されないが、これまで見てきた勇者たちも、尸解仙法で蘇った時にレベルが上がっていた」


 そうなのか。じゃあ、十連ガチャの商品は別にあるのか。


 え〜と、確かにステータスの能力欄のMPと精神値が大幅に上昇している上に、精神値の横に括弧で(↗3)と表記されている。これが上方補正なのだろう。値が大きいのか小さいのか分からないが、レベルアップ毎にプラスで上昇するならありがたい。


 能力値はMPと精神以外にはそれ程上がって……、幸運が結構上がっているな。なんで? 『英雄運』の効果か? とギフトの欄を見てみると、『超時空操作』と『清浄星』の他にも色々増えている。え? こんなに? と思ったら、『五感』と『五体』だった。そう言えばこれもギフトだったっけ。それ以外にも、


「『幸運』が増えている。これの効果か?」


 ゲームだと『幸運』って上がっても微妙なんだよなあ。でもこの世界だとMPになるんだっけ。え〜と、『幸運』の効果は……、


『幸運』:幸運値に+50。遭遇する様々な事態で運上昇。


 う〜ん、効果自体はやっぱり微妙かなあ? どうだろうと首をひねっていると、


「『幸運』は『英雄運』よりも持っている人間が多いギフトだな」


 とゼラン仙者が教えてくれた。ああ、いるよね、妙にツイている人って。あんな感じか。まあ、1000命秒のセットじゃあ、こんなものかもなあ。


 ついでスキルの欄を見てみる。ギフトの『超時空操作』とか『清浄星』も確認したいけど、そっちは長くなりそうだから後回しだ。んでスキルは、元からある『代償』、『逆転(呪)』に加えて、『魔力増大』、『魔力庫』、『魔力回復』の他にも、『鑑定(低)』と『偽装』と言うスキルが追加されていた。


「『鑑定(低)』?」


 普通の『鑑定』じゃないのか? この『鑑定(低)』を鑑定してみると、


『鑑定(低)』:自身のレベル以下のものを鑑定する事が可能。


 と表示された。自分のレベル以下? ってどう言う事?


「この自分のレベル以下って、どう言う事ですか?」


 俺はゼラン仙者に尋ねてみた。


「そのままだ。私たちを鑑定してみろ」


 ゼラン仙者に言われるままに、皆を鑑定してみると、名前以外が『?』で表記された。ゼラン仙者にパジャンさんなんて、名前も『?』である。


「分かったか?」


「人物に対しては分かりましたけど、物とかはどうなるんですか?」


「物の希少性や作成者のレベル、作成物の複雑さなどによるな」


 物の希少性や作成者のレベルは分かるが、作成物の複雑さなんてのも関係してくるのか。確かに、車や時計みたいな複雑な物の鑑定は難しそうだ。


「他にも、ハルアキが新たに手に入れた『偽装』や『隠蔽』で隠されれば、真実を見通す事は難しい」


「それはそうかも。と言うか、そっちは『看破』が関係しているのでは?」


「普通はな。だがハルアキは運が良い」


「はあ?」


 意味が分からず首を傾げる。


「『偽装』を持っているだろう?」


「はい」


「それを持っているお陰で、『偽装』や『隠蔽』で誤魔化しているものを、『鑑定(低)』で見破る事が可能なのだ」


 へえ、それはラッキーだな。これも『幸運』の効果だろうか? 隠しパラメータである上方補正が見えているのもその関係かな?


 ちなみに『偽装』の効果は、


『偽装』:様々なもの、情報などに偽装を施す。偽装の効果は使用する魔力量に依存。


 これは結構使えるよな。自分以外でも偽装出来るみたいだし。しかし商人が『偽装』を持っているのはいかがなものか。いや、情報を偽装出来るなら、『偽装』を持っている事を偽装して、持っていないようにみせかける事も可能なのか。俺は『偽装』を偽装して、『聖付与』としておいた。


「まあ、良いんじゃないか?」


 ゼラン仙者、そんな興味なさそうな態度取らなくても。

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