第413話 ステータス

 うわあ、俺のステータスとか初めて見たわ。あ、『鑑定』を獲得しておくのもありかも? いや、今更か? レベル三十八まできたら、ここから『鑑定』のレベルを上げても、中途半端になるかもなあ。下手したら敵の『偽装』やら『隠蔽』やらで騙されるかも。まあ、『鑑定』は命秒が残っていたらかなあ。で、俺のステータスは……、


「幸運だけやたらと高いな」


「ギフト『英雄運』の影響ですね。ただ、これも『英雄運』の影響で、必ずしも幸運であるとは言えません」


 まあ、『英雄運』ってトラブル体質になるものだからねえ。様々なものとのエンカウント率が上がるって事かな。


「んでこれって、ステータスとしては高いんですか? 低いんですか?」


「…………平均的です」


 え? なんか回答に初めてラグが出来たんですけど。そんなの、低いです。って言っているもんじゃん。


「お答えしますと、地球人類として、日本人としてはとても平均的な能力をお持ちです。ですが現在おられる世界では、レベルに対して低いと言わざるを得ません」


「そうなんですか?」


「はい。理由はハルアキ様が神の祝福を受けていないからです」


 神の祝福を受けていない? こっちの世界にきて、クーヨンでオルさんに連れられてデウサリウス教の教会で祝福の儀を受けたんですけど? その時に『回復』と『聖結界』を授かったんですけど?


「表面上の祝福の儀を受けられましても、きっちり入信なされた訳ではありませんから」


 言われれば確かにそうか。あの時はちょいとスキルを貰いましょう的なノリだったからなあ。


「え? じゃあちゃんと入信していると、ステータスに補正が掛かるんですか?」


「はい。信仰する神やその方の個性、スキルなどにもよりますが、複数の能力に対して、信仰によってレベルアップ時に上方補正が入ります」


 オーマイガ。


「じゃあ俺は……」


「現在のレベルまで、神の祝福による上方補正はなく、今まではプレイヤースキルによる上方補正のみでした」


 なんてこったい。思わず膝から崩れ落ち、四つん這いになってしまった。今まで誰もそんな事教えてくれなかったじゃないか。いや、誰も知らなかったのかも知れない。でなきゃオルさんとか絶対教えてくれているはずだもん。ここまで隠してきた意味がないし。


「上方補正は隠しパラメータですので。普通は気付かれません」


 成程。


「その、上方補正って獲得出来るんですか?」


「可能です」


 なら獲得するべきか。でもステータスの項目も色々あるんだよなあ。HP、MP、膂力、耐久、敏捷、器用、精神、幸運。上方補正一つで1500命秒。全部に補正を入れたら一万命秒じゃ足りないよなあ。


「全部に補正入れたら、セット割りでお得になったりしません?」


「全部に補正を入れると、個別補正より上方値が低くなりますが、よろしいでしょうか?」


 そうなるのかあ。上手く出来ているなあ。あれ? それだともしかしてさっきのスキルがギフトになったのも拙速だったか?


「あちらは命秒を余分に支払われておりますから、問題ありません」


 良かった。って言うか俺の心の声、筒抜けだったんだなあ。女神を見上げるとにっこり微笑まれた。俺は咳払いをしてゆっくり立ち上がる。


「じゃあ、多く命秒を払う事で、上方値を上げる事も可能なんですね?」


「全部で12000命秒です」


 無理か。さて、全部に補正を入れるのが得策とは言えないなら、何を伸ばすかだ。俺は改めて自分のステータスを見遣る。


「他と比べると、精神値が少ないな。これって俺が精神的に脆いとか?」


「精神値は集中力ですね。魔力量MPに関係する値です」


 そうなのか。それにしてはHPもMPもあまり変わらないな。


「HPは膂力、耐久、敏捷の合計値に補正を入れたもの。MPは器用、精神、幸運の合計値に補正を入れたものですね。ハルアキ様の場合、幸運値が高いので、精神値分が補われております」


 へえ、成程ねえ。


「と言うか、このHPの722/1ってなんですか?」


「下の分母はLPライフポイントです」


「LP?」


「命の数です。普通は1ですが、今世の魔王のように6の者もいます」


 成程。つまりいくら上の分子を増やしても、心臓や脳などの急所を攻撃されれば、分母が刈られて死ぬ。って訳か。


「このLPって増やせないんですか?」


「1000000命秒です」


 百万命秒! そりゃあそうだよなあ。一回死を回避出来るんだから。


「LPが増えれば、HP、MPなどステータス全体も上昇しますので」


 ふむ。命が二倍になれば当然ステータスもそれに引っ張られるか。流石にステータスまで二倍になったらチート過ぎるから、それはないだろうけど。


「…………」


 ないよね? いや、でも、魔王ノブナガの場合、六人で身体をシェアしているしな。


「…………」


 あはは。聞かなかった事にしよう。う〜ん。ここは素直に精神値を増やすべきか? しかし値が低過ぎない?


「地球人類は一般的に魔力を必要としない期間が長かったので、その進化の過程で魔法を扱うのに特に必要な精神値は、少なくなる方向に進化してきました。逆に身体能力などは少し高いですね」


 そうなんだ。じゃあやっぱり短所を補強するにも、伸ばすなら精神か。ぶっちゃけ魔力はいくらあっても良いし。と言うかこの世界ゲームって、最小単位が時空と魔力だったはずだ。なら魔力量を増やす方向にステータスを上げるべきだろう。


「魔力量を増やすスキルとかあります?」


「あります。単純に基礎魔力量を増やす『魔力増大』。余剰魔力を貯蔵しておく『魔力庫』。魔力回復速度を上げる『魔力回復』など、色々ございます」


 言いながら購入画面を見せてくれた。意外と命秒は少ないな。どれも1000〜2000命秒くらいだ。


「これって、ステータスのMPや精神値なんかを上げるのと、どっちが有用ですかね?」


「一長一短です。スキルの方が魔力量は増やせますが、そのスキルを奪われたり封じられれば、使える魔力量がガクンと減りますから」


 ああ、スキルを封じるスキルなんてのも当然あるのか。怖いねえ。俺のは……ギフトになったから大丈夫かな? いや、ギフトを封じるスキルなんかもあるかも。


「魔法は上位から、ギフト>スキル>魔導具の順になっており、スキルでギフトを封じるのは難しくなっております」


 成程ね。だからってギフトを封じるギフトなり、超強力なスキルがないとも限らないと。でもそうなると、


「じゃあ、このスキル『魔力増大』に『魔力庫』、『魔力回復』と、ステータスのMP、精神値を増やすのと、精神値の上方補正でお願いします」


「かしこまりました」


 そして光る俺の身体。これでほぼ使い切ったな。『鑑定』は2500命秒だから無理。なので、


「この、『限定ミラクルセット』の人セット、混合のやつください!」


 やっぱりガチャはやらなきゃいけないよねえ!

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