第5話-3

 始業式の日、俺はホームルームの直前に登校した。

 教室はすでに賑わい、久しぶりに再会した生徒たちが、みやげ話に盛りあがっている。

 俺は席に着いた。

 窓外を眺める。気候は秋の涼気を感じさせる。空は水色で、薄雲が棚引いていた。

「よッ。久しぶり」

 日焼けした田渕が話しかけてくる。

「知ってるか。校舎の窓ガラスが割られたらしいぜ。今、教師たちが盗難がなかったか確認してるってよ。まあ、夏休みの最後に暴走したバカな生徒の仕業だろうけどな。まさかお前じゃないだろうな」

「違うよ」

 そうだ。俺がやったのではない。

 俺は窓に視線を向けた。

「おいおい、なんか大人しいな。いつものお前はどうしたんだ?」

 田渕は軽薄そうに言ったが、何かに気づいたように言葉をとめた。

「おい」

 不思議そうに俺の顔を見る。

「涙が出てるぞ。アクビでもしたか?」

「いや。失恋しただけだ」

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