第5話-3
始業式の日、俺はホームルームの直前に登校した。
教室はすでに賑わい、久しぶりに再会した生徒たちが、みやげ話に盛りあがっている。
俺は席に着いた。
窓外を眺める。気候は秋の涼気を感じさせる。空は水色で、薄雲が棚引いていた。
「よッ。久しぶり」
日焼けした田渕が話しかけてくる。
「知ってるか。校舎の窓ガラスが割られたらしいぜ。今、教師たちが盗難がなかったか確認してるってよ。まあ、夏休みの最後に暴走したバカな生徒の仕業だろうけどな。まさかお前じゃないだろうな」
「違うよ」
そうだ。俺がやったのではない。
俺は窓に視線を向けた。
「おいおい、なんか大人しいな。いつものお前はどうしたんだ?」
田渕は軽薄そうに言ったが、何かに気づいたように言葉をとめた。
「おい」
不思議そうに俺の顔を見る。
「涙が出てるぞ。アクビでもしたか?」
「いや。失恋しただけだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます