第3話-4
学校の屋上で、俺は鉄柵を握りしめて屈んでいた。
この日は海野先輩はおらず、俺と景だけだった。景は楽しげに今後の計画を話していた。
景は不思議そうに言った。
「だいぶ沈んでますね。どうかしましたか」
「お前はよく平気だよな。病院で医者の説明を聞いてから、俺は海野先輩と接する自信がなくなったよ」
「むしろ、私は夏川先輩がヤル気になると思いましたが。死の欲動と性欲は同じものらしいじゃないですか」
「精神分析を妙に応用するな」
景は平然としていた。
「正確だと思いますが。夏川先輩も、ネットでエロ動画を見ては数億という命を犠牲にしているでしょう」
「ひとの精子に生まれてくる前の命の可能性を見出すな」
「しかも、動画のタグは《コスプレ/喪服》です」
「お前は精神分析学派に弟子入りでもしているのか!」
「もしかしたら、恋人が死ぬ物語の映画や小説が人気なのも、そういう理由なのかもしれませんね」
「フロイトも、お前みたいな患者が診療に訪れたら精神科医を廃業していただろうな」
脱力感を覚え、俺は大きくため息をついた。
景は言った。
「夏にすべきことはまだありますからね。夏の田舎と言えば、昔からの風習で、夜に大勢のひとが集まるイベントがあるでしょう」
「そうだな」
俺は頷いた。
「夜這いと乱交です」
「夏祭りだろ!」
「奇祭… つまり、夜這いと乱交ですね!」
景はなおも言った。
屋上から出ようとすると、景は追いかけてきて、印刷用紙の広告を出した。近場の神社で催される例大祭のものだ。
まったくこいつは…
「海野先輩を誘って行きましょう」
景は楽しげに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます