第2話-1

 機会を見つけ、田渕に海野先輩のことを相談すると、得心したような声を出した。

「ああ。ウチの顧問が言ってたよ。余命が短いのに通学してる生徒がいるって。普通に勉強したい、って本人の希望で口外厳禁らしいけど、ウチの顧問も口が軽いからな… 海野先輩のことだったのか」

 田渕まで知っているとなると、認めざるを得ない。本当に海野先輩は死病にかかっているらしい。

「まさか、まだその気じゃないよな」

「何がだ?」

「だから、まだ海野先輩に気があるわけじゃないよな」

 返事の代わりに、鞄からちくわを取りだす。

 俺は鉛筆でちくわに点々と穴を穿った。ちくわの輪に唇を当てて、音色を奏でる。

「吹くな!」

 田渕は怒鳴った。

 俺は鞄からキュウリを取りだすと、ちくわの空洞に詰めた。

「だからって食うな!」

 俺は吹矢のようにキュウリを田渕に射出した。教室内をすばやく移動しながら、次のキュウリをちくわにつがえる。

「だからって吹くな! …はッ」

 田渕は頭を抱えた。

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