寒い季節…①
私は今、彼に包まれている。
とても暖かい。
私は人肌を深く感じられる、この寒い季節が好きだ。
互いに愛を弄る際に、ベッドに置いてあった幾つかのぬいぐるみがフローリングに落ちていることに気が付いた。
早朝に彼が家に帰る時に、元のお気に入りの位置に戻せばいいやと、そんなことよりも私は彼の厚い胸板に顔を埋めて匂いを堪能する。
私を包む筋肉質な両腕に力が入っていないことから、彼が深い眠りについていることが分かる。
時刻は早朝の4時。
彼を起こさないように頭だけ起こして、枕元の電子時計で時刻を確認した。
あと2時間で、彼のスマホのアラームがなる。
そして起床して一番に、彼は私と一夜を過ごしたことを洗い流すかのようにシャワーを浴びる。
私はその切ない水音を聞きながら、いつも寝たふりをする。
そんな私の頬にキスをして、彼は家庭に戻る。
ベッドに残る彼の温もりと匂いが徐々に消えていき、やがて彼のいた場所が冷え切ってしまう、この寒い季節が嫌いだ。
彼との関係をいつまでも続けるわけにはいかない。
未来のない恋にいつまでもしがみついていられない。
でも、
「愛してるよ」
去り際の、眠るふりをする私の耳元で囁くその言葉が私を縛り付ける。
口先だけだと知っていても、私はたまらなく嬉しくなる。
あと2時間…
あと2時間は彼は私だけのもの。
私は人肌を深く感じられる、この寒い季節がやっぱり好きだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます