寒い季節…①

私は今、彼に包まれている。


とても暖かい。


私は人肌を深く感じられる、この寒い季節が好きだ。


互いに愛を弄る際に、ベッドに置いてあった幾つかのぬいぐるみがフローリングに落ちていることに気が付いた。


早朝に彼が家に帰る時に、元のお気に入りの位置に戻せばいいやと、そんなことよりも私は彼の厚い胸板に顔を埋めて匂いを堪能する。


私を包む筋肉質な両腕に力が入っていないことから、彼が深い眠りについていることが分かる。


時刻は早朝の4時。


彼を起こさないように頭だけ起こして、枕元の電子時計で時刻を確認した。


あと2時間で、彼のスマホのアラームがなる。


そして起床して一番に、彼は私と一夜を過ごしたことを洗い流すかのようにシャワーを浴びる。

私はその切ない水音を聞きながら、いつも寝たふりをする。


そんな私の頬にキスをして、彼は家庭に戻る。


ベッドに残る彼の温もりと匂いが徐々に消えていき、やがて彼のいた場所が冷え切ってしまう、この寒い季節が嫌いだ。


彼との関係をいつまでも続けるわけにはいかない。


未来のない恋にいつまでもしがみついていられない。


でも、


「愛してるよ」


去り際の、眠るふりをする私の耳元で囁くその言葉が私を縛り付ける。

口先だけだと知っていても、私はたまらなく嬉しくなる。


あと2時間…


あと2時間は彼は私だけのもの。


私は人肌を深く感じられる、この寒い季節がやっぱり好きだ。

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