第5話 配信者は二人で魅せる その二

「じゃあ今から入ってきてどうぞー、はい!」


 一瞬でパーティーの残りひと枠に人が入ってきて、配信のコメント欄は『入れなかったー!』というコメントで埋まる。


 これだけの人が入れる条件満たしてるってすごいな……僕達がやってるのランクマのマッチングって最上位のとこで、ゲームのシステム上その一個下のランク帯の人までしか入れないはずなんだけど。


 ……世間って広い。


 今入ってきてくれた方も最上位ランクだし……IDはえーと……HKF_nqG1(ナギ)ナギ……ナギさんか?


「まず自己紹介からお願いします」

「結構最初の方の配信からおじゃましてて、このクランタグのようなもの、HKF、すなわちハクファミリアの創設者。ナギと申します! 先程は申し訳ありませんでしたっ!」


 他のリスナーさんに軽い野次を飛ばされ、すいません、すいません! と謝る姿は、普段コメント欄にいるナギさんそのものって感じだ。

 めちゃくちゃイケボだけど、これボイチェン通しての声か。てことはこれは本当のナギさんの声じゃないと。


「なんか、声を出せない理由とかあるんですか?」

「へ? あ、あー。ちょっと地声を一万人の視聴者さんに聞かせられるような声じゃなくてですね……」


 なるほど。まぁ無理に声出しさせるのも悪いしね。知り合いに聞かれるの嫌う人とかもいるし。


「そうですか。じゃ、早速やっていきましょう!」


 マッチング開始のボタンを押すと、すぐにマッチが始まって、キャラ選択画面へ。


「いつもはこんなマッチング早くないのになぁ……」


 本当はこのマッチング中の時間に色々聞くつもりだったんだけど……まぁいいか、試合中に話が途切れないって考えれば。


「なんか、ゴースティング(配信者の配信を確認して、狙って倒しにいくこと)やるぞってトゥイッターで募集かけてる人とかもいましたし、運が良ければハクさんに会えるかもって言ってやってる人も多そうですよね」

「それは困るなぁ……僕達だけでやるんならいいけど」


 あれに追っかけ回されるのはストレス溜まるしね。まぁそんなことは置いておいて、ナギさんに質問してかないとね。


「ナギさんってこんな強いのにトゥイッターとかやってないんですねぇ……」


 最上位ランクにいるんだからカジュアルマッチのキル集とか出しててもおかしくないんだけど、全く出てこない。


「はい、そうですね。って敵結構来てるけど大丈夫です?」

「あーうん大丈夫大丈夫。もちろんナギサンが大丈夫じゃなかったら話すの一旦辞めるけど、どうする?」


 やば、話すことばっかり集中してて全然ナギさんのこと考えてなかった!


 最上位ランク帯で雑談しながら初動で戦うなんてアホなことできる人の方が少ない。そんなこと分かってたのにすっぽり抜けてた。ユイが聞いてくれなかったらほんとに忘れてた。助かる!


「ごめんなさいナギさん。ちょっと僕の配慮が足りて──あ、一人やった」

「……規格外の人がいるんで大丈夫じゃないですかね?」

「そうだな。あ、こっちも一人やった。同じタグつけてるから多分同じチームだわ。あと一人ナギさんの方行った……あ、ハクがやったわ……」

「あ、あはは……」


 ヘッドホンから聞こえるナギさんの乾いた笑い声。呆れられてるとしか思えない。

 ナギさん、ごめんなさい、いつものつもりで体が勝手に動くんです……! いや、手抜きとか出来ないの忘れて企画した僕が悪いんだけどさ……。


「……ハク」

「何かな、ユイ」


 ちょっと自分の準備不足に自信失ってるんだけど?


「今日の企画コーチングとか全体のレベルアップ目的でやるって言ってたよな?」

「そうだったね! ナギさん僕のプレイ参考にしてプレイしてみてください! 次の接敵までに色々教えるんで!」


 そういうことなら好きにやっても問題ないよね!


「じゃあまずこの動きとかから説明すると──」


 動きとかの解説は案外好評だったので、また今度動画にしようかと思う。



 ──────────



「敵いましたハクさん!」


 報告と共にナギさんが敵がいることを示すピンを立てる。


 距離は大体五十メートルぐらい。このゲームなら中距離と言われるぐらいの距離。


 本来ならこの距離で撃ち合ってもいいんだけど……。


「よし、詰めましょう。ユイはここからカバーしてて、僕とナギさんで行くから」


 言いながら、僕のキャラのスキルであるポータルを敵のそばまで繋げて、撃ち合い始める。


「さっきナギさんが苦手って言ってたインファイト(近距離戦)の練習ですね」

「は、はい……!」


 とは言ってもさすがに最上位ランク帯なので単純に一対一を勝つ戦い方じゃなく、複数人対一の戦いを勝つための戦い方だけどね。


 という事で僕はヘイト(敵からの注目)を買わないように後ろから削って……。


「あっ!」


 一人目を倒して、二人目の体力を少し削ったところでナギさんがダウン。削られていた二人目を倒して、味方を捨てて逃げる三人目をユイがスナイパーで削りきって戦闘終了。

 ……と、思っていたんだけど、


「やっぱり漁夫しにくるよなぁ……」


 相手を倒すことでもランクポイントを獲得できるこのゲームにおいて、戦闘終了後、キルログ(誰が倒されたかが表示されるログ)を確認して、人数有利の状態で戦闘を始めるのは基本中の基本。ユイも近くまで来て近距離武器に切り替えてはいるけど……うーん。二パーティは厳しくないか……?


「『一人一パーティずつ倒せたら赤スパします』」

「マジですか!? よーしやっちゃうぞー!」


 コメント欄も盛り上がってるし、ここは魅せねば……! お金に目が眩んでるとか言わない。これだって配信盛り上げるひとつの手段だから!

 ……ふぅ、でもちょっと集中しないとね。


「ほんの少しだけ無言になるかもしれないから、ナギさん場繋ぎ頼みます」

「へ? あ、あぁはい!」


 ドーム状のシールドをこちらに向かって投げて、三人で一気に敵が流れ込んでくる。


 一人目はそのドームを遮蔽物として利用してほぼノーダメ削り切り二人目。


 ドームが時間経過で消えて大きくダメージを負ったがギリギリで勝利。三人目の銃撃を避けつつ先程倒したプレイヤーの死体箱から体力を増強するアーマーを着替えてもう一度撃ち合い。


「「あっぶなぁ!」」


 残り体力僅かで三人目を倒して戦闘終了。ユイも同時に戦闘を終わらせた。


「『うおおおおおお』『カッコよすぎかよ!!』『これは切り抜かれる』『切り抜き期待』『三対一勝てるとか人外かよ‪w‪w』」


 コメント欄も大盛り上がり。ナギさんを蘇生しながら、スパチャに感謝!


「ゆーりさん、二万円スパチャ、ありがとうございまぁす!柿の種さん五百円スパチャありがとうございまぁす!えーと、あとは多すぎるから配信の最後に!」


 この試合をしっかりチャンピオンで終わらせ、その後二時間ほどで、配信を終わらせた。

 今までで一番盛り上がったからまた今度やろうと思う。






 ───────────────────────

長らくお待たせしてしまい申し訳ない!

近況ノートにも報告させて頂きましたがテスト期間で執筆に割く時間が取れませんでした……お許しください!!

ここからはできるだけ早めに投稿していく所存です……!


できるだけ本編の中で用語解説などしていますが、分からないものがありましたらコメントなどで教えてくだされば幸いです!


批評等割とモチベにつながりますので、お星様やコメント等してくださると嬉しいです!!

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