第3話 七海白兎はのぼせて妹にキレられる

 よく覚えていないけれど、気がついた時、僕は何故か坐禅をしながら湯船に浸かっていて、時計の針は最後に覚えている琴羽と喋る前のそれから一時間半進んで現在六時。


 普段長風呂なんかしないからのぼせてフラッフラ。なんでこんなになるまで風呂に浸かってたんだ僕は……。


「とりあえず、水……」


 服とかまぁ……いっか、多分この時間ならキッチン誰もいないだろうし。


 風呂とキッチンが近くて助かった。蛇口から直飲みは怒られるかもしれないけど、今だけは許して欲しい。本当にそんな事考えてる余裕ないから。


 あ〜、蘇る〜!


 このだんだん視界良くなってく感覚ちょっと好きかもしれない。


「ふー……助かっ……た?」


 なんで、肩に手が乗ってるんでしょうか……? なんならどんどん力入れられてる気がするんですが!?


「バカにぃ……一旦死ぬ?」


 背後に感じる殺気と、特徴的な「バカにぃ」という呼び方。


「えーと、暁乃あけの……これには訳が──」


「うるせぇ、言い訳してる暇あったら服着てここまでビショビショにした床掃除しろ!」


 キレると男みたいな口調になるのが特徴の僕の妹、七海暁乃の怒りが大爆発した。



 ──────────



「で、風呂の中で奇声を上げ、黙ったなーと思って下に降りてきて晩ご飯の用意し始めたら全裸でキッチンに来た挙句蛇口から直飲みしやがったクソにぃ、弁明はあるか?」

「最初のやつに関してはすいませんでした……。でも後半のやつは風呂でのぼせて大変だったんです」

「そんなん関係ねぇだろ服着るぐらいしろ」


 一番最初のやつは全く記憶にないんだけど、風呂で奇声上げてたってだけでもう謝るには十分すぎる。


 ただのぼせて何も見えないし力入らないのに服着ろはちょっと無理がある。


「周り見えないし力も全然入らないのにどうやって服着ろって言うのさ」

「そんなん私呼べばいいだろ!?」

「妹に全裸見せろと!?」

「さっき見せてきただろうが!」

「あれは事故でしょ!」


 誰もいないと思ってたからね! 食べ物の匂いとかしてたら気づくし! そしたら他の手考えるぐらいできるし。


「事故じゃなきゃ覚悟決めれるからな!」

「覚悟決めなきゃ見れないとか!兄妹だよね僕達!!」


 普通に悲しいわ! だって兄妹だよ!? 男の僕が見るのは怒られるかもしれないけど、暁乃からしたらどうってことないでしょ! 普段から僕に対してあんだけ強くあたってるんだから!


「えっ!? あ、あぁうん。そ、そうだね、確かに、にぃの裸ぐらい、み、見れるし!」

「え、えぇ……?」


 ここでそんな照れるの……? 言ってることと態度百八十度反対だけど……ていうか情緒やばいよ暁乃、さっきまでめちゃくちゃ喧嘩腰だったのに照れすぎなんだけど?


 制服のワイシャツの上からエプロンした姿でもじもじしてて、いつもは下ろしてる長い黒髪も今はポニテでゆらゆらゆらゆら。

 ……ちょっとからかってみようかな。


「えいっ」

「ぴゃあっ!?」


 へぇーそんな反応するんだ……。


 ちなみに僕がやったのは着てるTシャツを胸元まで捲っただけ。決して僕の僕を出したわけじゃない。


 にしても、これだけでこんだけ反応するんだったら、今度からたまにからかってあげよ。


 やばいニヤニヤ止まらない。


「〜〜〜〜ッ!! クソ! 死ね! バカにぃ!!」


 思いっきり罵られたけど、その後作ってくれた暁乃のカレーは普段のより美味しかった。






 ───────────────────────

一話にするには短いかな、と思いつつ分けてみました。次回はゲームシーンになると思います。



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