第7話

 ペンちゃんが「もっと話を聞きたい」と言ってくれたので、僕は今晩ペン子親子の夕食に、ご一緒させてもらうことになった。僕と食事をすることになって、ペンちゃんはすごく喜んでくれた。僕もペンちゃんと同じ気持ちだった。

 ペン子は、どうかな……。


「どうして人間は、たまにぼくたちを見に来るのかな」

「人間は、僕らペンギンのことが好きだからね。かわいいかわいいって、いつも言ってくれる」

「ペンギンは、人間のために特に何もしていないのにね。なぜかしら……」

「人間にとって、僕らはいるだけで癒しになるみたいだよ。ちょっと歩くだけで『キャー』だ。ペンギンが好きで、名前を辺銀ペンギンにしてしまった人間もいるし」

「……これだけ愛されているのに、なぜ地球温暖化が始まってしまったのかしら……」


 ペン子の表情が曇る。「?」のペンちゃんの隣で、僕は焦った。


「地球温暖化については、人間たちも反省していて、対策をいつも考えているし実行しているよ! 僕たちを思って!」

「うん……」


 ペン子の声は、まだ元気がなかった。


「やっぱり人間は、僕たちのことが好きなんだよ!」

「……ねえ、ペンギンは人間に何もしていないのに、人間はペンギンのことを好きなんだよね?」


 僕の横で、ペンちゃんが一言。


「ママはそう思うわ」

「人間は、ぼくと同じだ」

「え?」

「どうして?」


 僕が不思議そうにしていると、ペン子も表情を変えて、ペンちゃんに聞いた。


「ぼくはママに何もしていないのに、ママはぼくのこと、好き好きって言ってくれるから」

「ペンちゃん!」


 ペン子はペンちゃんを抱きしめた。

 ペンちゃんを「これでもか!」と言うくらいかわいがるペン子を見て、僕は思った。

 ペンギンは、人間に何もしていない訳ではない。

 存在することで、人間を幸せにするのだ。存在するだけで、幸せにさせる。

 ペン子がペンちゃんを愛しているように。

 僕がペン子を好きなように。

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