第11話

 喫茶店へ行くと、そこにはペン子がいた。

 そのカウンターにはペン子しかいなくて、彼女は元気がないようだった。


「どうしたの?」


 ここはそっとしておいた方が利口だったのだろうか。でもぼくは彼女を放っておけなかった。


「ペン介くん」


 ペン子は僕を見てくれた。僕はホッとして彼女の隣に座った。


「良ければ、話をしてくれないか?」




「……この前ね、ペンちゃんを初めてぶってしまったの」


 誰にも言えず、心の中にしまっていたこと。

 でもペン介くんには言えた。本当は誰かに聞いて欲しかったのだと思う。

 そのまま私は言葉を続けた。




「そんなことがあったのか……」


 あの日から心に留まっていたことを全て出し切った後、ペン介くんはそう言った。

 私は何を言われるのか。自分で全部口に出してしまったというのに、それが怖かった。


「でも今みたいに、いつかきちんと言えるときが来るよ」

「え?」

「誰にでも、言いづらいことの一つや二つ、あるよ」


 ああ、でもそうか。


「ペンちゃんも分かっているよ、きっと。ママのこと大好きだから」


 ペン介くんは……。


「ペンちゃんもペンちゃんの友達も、まだよく分からなくて言ったことなんだよね。まだ小さいから、そう言っちゃったんだよ」

「そうよね……」


 優しいから、こうして私は話を打ち明けられたのだと思う。


「ペン介くん、ありがとう」

「僕の方がありがとう、だよ。話を聞かせてくれて」


 ありがとう。

 本当に彼は優しい。


「あ、あとね、もうちょっと聞いてくれる?」

「もちろん」

「実はこの前……」

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