第10話

ぼくは今日知った

パパは死んだんだって

お友達とパパの話をした

ぼくのパパは空にいるんだ

そういえばペンギンなのに、どうして

そう言ったら、お友達が言ったんだ

それ、死んだんだよ

ペンちゃんのパパは死んだんだよって

死んだ

空に行くのは、「死んだ」ってことなんだね




幼稚園クレイシ、楽しかった?」


 お家に帰ってきて、ママはぼくに今日のことを聞いてきた。いつものこと。


「うん、今日もたくさん遊んだ。お話もした」

「そう、良かったわね」

「ねえ、ママ」

「なあに、ペンちゃん」

「ぼくね、死にたい」

「……へ?」

「ぼく、死にたい。パパは死んだんでしょ? 空に行くことは、死ぬってことなんでしょ? だったらぼく、死にたい。死んでパパに、会いに行くんだ。飛べないなら、ぼく死ぬよ」


 ペチン!


「……ママ?」

「そんなこと言っちゃダメ!」

「ママ?」


 ぼくは、ママに初めてぶたれた。そして、初めてママを泣かしちゃった。

 ママは今、この前ペン介くんとご飯を食べたときみたいに、ぼくをぎゅっとしている。

 温かい。

 でも寒い。

 これも初めて。


「ペンちゃん、ごめんね……」

「ママ……」

「でも、もう二度と死にたいだなんて、言わないで」

「うん、分かった。ごめんね」


 ママはしばらくの間、ぽろぽろときれいな粒を流しながら、ぼくをぎゅっとしていた。そしてぎゅっが終わるとき、ぼくに言った。

「いつか、ちゃんとお話するから。ママを信じて……!」

「うん」


 ママのこと、大好きだから。

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