第21話
結局指示通り三限の途中で授業を抜け出した僕は、由香ちゃんを連れてデパート内のファミレスへとやってきたわけだ。
夢子ちゃんコラボというのはメインがお子様ランチにおもちゃが付いてくるという内容で、あとは料理を待っている間に塗り絵で遊べるとかそういった感じのものだった。
店員さんに注文を済ませて水と由香ちゃんのジュースを取ってくると、由香ちゃんが例の塗り絵を二枚持ってきた。
「さいじょーもやろー」
「僕も?まあいいけど……」
「どっちがうまいかしょうぶね!」
そう言って、由香ちゃんが躊躇うことなくどんどんと色を塗っていく。
僕も塗り絵を完成させるべく、色鉛筆を手に取った。
「……いや、全然わからん」
とりあえず、夢子ちゃんの部分を塗っているまではよかった。僕もなんとなく見覚えがあったし、想像がつきやすいからだ。
ただ、問題は夢子ちゃんの隣にいる謎の生き物と残りの二人の人物だ。
これが一ミリもわからない。
案外勢いで何とかなるだろ……とか思っていた数分前の自分を殴りたい気分だった。
なんて思っていても何も解決しないので、とにかく何か解決口を探してみることにした。だいたいのテーマカラーみたいなのがわかればどうとでもなるのだが、そこを外すと大惨事だ。
由香ちゃんはかなりの夢子ちゃん好きなので、間違えた色で塗ってしまうと機嫌が悪くなる可能性もある。まさか、こんなところでピンチが訪れるとは……!
───いや、今まさに夢子ちゃんコラボ中のファミレスにいるんだ。どこかにヒントがあるはずだ。
そう当たりをつけて、周囲を見渡す。
しかし、そこには普段通りのファミレスの風景しかなかった。
(内装にまで手を付けるほどのコラボじゃないってことか?まずいな。由香ちゃんを一人にするわけにもいかないから、外に確認に行くこともできないぞ……)
ちらりと由香ちゃんを見る。
由香ちゃんは塗り絵に集中しているようで僕のことは見ていなかったが、塗り絵に覆いかぶさるようにして色を塗っていたため、進み具合や色合いはほとんど確認できなかった。
───由香ちゃんがこっちを注意してないなら、携帯でパパっと調べるしかない!
そう判断した僕の行動は早かった。
音で気づかれないように持っていた色鉛筆はソファーに着地させ、ズボンの右ポケットに手を滑り込ませる。そして携帯電話を───
「お待たせいたしましたー!こちらお子様ランチと、Aランチセットになりまーす!そして、こちらがコラボ商品になります!」
「あ……はい」
タイミング悪く商品を運んできた店員の前に、僕の作戦は跡形もなく崩れたのだった。
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