第20話


「さいじょー!あっち!」

「あー、ほんとだ。あったあった」


 その日、なぜか僕はデパートに来ていた。

 昼前からデパートにいるのに休日や祝日というわけではなく、今日も普通に学校はある。

 今頃学校では、腹を空かせた生徒たちが四限の授業を受けている頃だろう。うちくのクラスは確か……英語だった気がする。


「はーやーくー!」


 教室に思いを馳せる僕を、由香ちゃんが急かす。

 由香ちゃんが待つ先には、デパート内に併設されたファミレスの有名チェーン店があった。

 そして、その入り口には、『魔法少女・夢子ちゃんコラボ開催中』の看板が立てかけられていたのだった。




 事の発端は、朝のホームルームのことだった。


「ああ、それと西条」


 朝のホームルーム終了の挨拶の後、突然思い出したかのように担任に呼ばれた。


「なんですか?」

「理事長からこれを渡せって言われてな」


 担任から封筒を渡される。


「まあ、いろいろ大変だと思うが頑張れよ」


 担任に肩を叩かれる。

 完全に他人事だった。


「いつもは呼び出しなのに、なんでわざわざ……」


 ぶつくさと文句を開けながら封を開ける。

 そこには、外出許可証と現金、そしてメモが入っていた。

 とりあえず、メモに目を通す。


『今日は由香ちゃんと夢子ちゃんコラボ中のファミレスに行ってあげてください。十時に部室まで迎えに行って、お昼時に合わせてデパートのファミレスに───』


「……」


 なんじゃそりゃ。と声には出さずにツッコむ。

 なんで今日?とか休日に自分で連れてってやれよ。とか思うところはあったが、おそらく言っても無駄なのだろう。

 それに、最後の『由香ちゃんが楽しみに待っています』という文章を見てもはや断るという選択肢はなくなっていた。

 本当に、ずるい人だ。

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