第14話


 昼休み終了の鐘が鳴り、僕たちの昼休みの活動も終了になる。

 僕が本を閉じて部室を去ろうとすると、由香ちゃんがそれを引き留めた。


「さいじょー!ゲームしよー!」


 さっきまでは一人でやっていたというのに、いったいどういう風の吹きまわしなのか。


「由香ちゃん、僕は授業があるから……」

「や!ゲームやるのー!」


 由香ちゃんにテレビゲームのコントローラーを押し付けられる。


「そりゃあ僕も授業よりはゲームがしたいけど……」

「やろー!」


 そんな僕たちのやり取りを見ていた秋川さんは、なぜかニヤニヤとしていた。


「やってあげれば?特別保育生さん?」


 特別保育生。まさか、秋川さんがそのことを知っていたとは。


「知ってたんだ」

「うん。理事長に失礼な口をきいたんだってね」

「まあ、そうなんだけど……それでこの仕打ちって、理事長も子供だよね」

「あー。それ、理事長に報告しとくね」

「えっ!?」

「ふふふ。冗談だよ」


 秋川さんは、女神のように朗らかにほほ笑んだ。

 思わず秋川さんに釘付けになってしまい、慌てて目を逸らす。

 本当に、昨日の今日で秋川さんに何があったんだ……?


「じゃあね」


 僕がそんな風に驚いているうちに、秋川さんは部室を出て行ってしまった。

 意外とお茶目な秋川さんに、僕の心が揺さぶられる。

 浮きだった心のまま、由香ちゃんに押し付けられたコントローラーを握りしめた。


「ゲーム、しよっか」

「うん!」


 どうせ授業に出ても集中なんてできない。そう自分に言い訳をして、僕は由香ちゃんの気が済むまでとことんゲームに付き合ったのだった。

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