第3話 探し物


 ───なんてオチをつけるわけにもいかず、僕は必死で彼女に食い下がった。

 彼女の前で名乗ってしまった以上、このまま覗き男として撤退するわけにはいかないのだ。下手をしたら、明日から僕は変態ロリコン覗き野郎として学校生活を送らなければならないことになる。

 そんな青春なんて断固お断りだ。僕は、仲間たちと好きなことを全力で取り組むためにこの学校に来たのだ。いや、言葉にするとちょっと恥ずかしいな。


 ……とにかく必死で食い下がったおかげか、なんとか協力することは認められた。


「それで、何を探しているの?」

「フィギュアよ」


 フィギュア。

 僕はその言葉に、心当たりしかなかった。


「それってこれのこと?」


 先程拾った魔法少女のフィギュアを取り出す。


「あー!ゆめこちゃん!」


 僕が取り出したフィギュアを見て、その女の子───由香ちゃんが目を輝かせた。


「やっぱり、そういう人だったんですね」

「いや、違うよ!?これはさっき裏庭のベンチで拾ったんだよ!」


 そういう人。というのが何を指すのか詳しく聞く気にもなれなかったが、彼女の視線は完全に凍り付いていた。


「えっと……由香ちゃんの探し物ってこれだったのかな?」

「うん!さいじょーありがとー!」

「いやいや、見つかってよかったよ」


 由香ちゃんの頭を撫でる。


「……」


 はっ!?僕はいったい何を!?

 慌てて撫でるのをやめると、由香ちゃんは名残惜しそうな顔をした。


「おわりー?」

「終わり終わり。続きはまた明日ね」


 自分でもわけのわからないことを口走る。

 すると、由香ちゃんは「じゃーねー!」と叫びながら嵐のように去っていった。


「……では」


 彼女は由香ちゃんを見届けると、不審者から距離をとるように速足で去っていった。


「ちょ、ちょっと!ほんとに誤解だから!」


 去っていく彼女の背中に声をかける。

 その言葉が彼女の耳に届いたのかどうかは、僕にはわからなかった。

 ただ一つ確かなのは、僕の理想の学園生活が一歩遠のいたということだった。

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