第14話 信じる心

 学校裏の往還稲荷おうかんいなりには豊作をかなえるおキツネ様がまつまつられているのだが、二十年ほど前に新しい鳥居が建造された結果、封印が強くなりすぎた。

 なぜ鳥居を増やしたのか、千颯ちはやはシオに質問した。神社に参拝して御利益があったとき、御礼として鳥居を奉納する習慣があるのだと、シオは教えてくれた。


「その鳥居も豊作に対する御礼だったんだろうけど、きっと人々の願いが強すぎたんだな」

「どういうこと?」

「感謝するだけじゃなく、自分たちの土地だけ実り豊かにしてくれとでも願ったんだろ」


 二十年前、この地方一帯が台風によって甚大な被害を受けたが、往還おうかん山のあたりは奇跡的に無事だったという。それをおキツネ様のおかげだと考えた人々が、鳥居を奉納するとともに、これからも・・・・・この地域を守ってくれ、と強く祈ったのではないか。結果として、おキツネ様が外に出られないほどの封印が生まれてしまった。


「もともと、往還稲荷おうかんいなりは、その力を地域にひろげるため近隣の稲荷神社に嫁を出していた。豊穣の神で、子沢山でもあるらしい。それが、あの鳥居のせいで、嫁入りの支度をととのえても出発すらできない時代が続いた」


「二十年?」

「くらいかな。で、千颯ちはや様の登場だ」

 歩きながらの説明だったが、シオの一言で千颯ちはやは足を止めた。


「ぼく?」

「そう。封印を破っただろ」


 シオはかまわず歩きつづけ、千颯ちはやは自転車を押しながら彼を追いかけた。


「あの、四角い紙?」

「あと、油揚げな。紙垂しでを破るのはスタートの合図。油揚げはゴールテープみたいなものだよ。そうやって道をつないでおかないと、嫁入り御一行が迷いかねない」

「そんなの、だれだってできるだろ。なんでぼくが」

「そんなことない。なにより、信じる心が大事だから、まず、見えるってのが肝心なわけだ」

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