第6話 見える人
校門の手前でシオに追いつくと、まっさきに質問した。
「お
「言っただろ、あやかしのこと、見すぎだって。裏のお稲荷様が、わりに強いから、おまいりしとこうって話だよ」
すらすらと語られる言葉は、しかし、
「ほ、ほかにも見える人がいるの?」
ようやく、まともな質問が口から出てきた。
「そりゃいるだろ」
こともなげに、シオは答えた。校門を出て左に曲がり、学校のフェンスが途切れるところをまた左に曲がった。さっきの通り雨の
「きみは? あやかしって、なに? 妖怪じゃないの?」
「妖怪って、普通じゃん」
不服そうに言いながら、シオはリュックのストラップを右肩にだけ引っ掛けた。
「普通? 妖怪が?」
「メジャーすぎるっていうかさ、アニメとか漫画とかに使われすぎて、もう、
不満げな口調に、
「だから俺は『あやかし』って呼ぶ。渡辺も生まれたときから見えてるのか?」
「わからない」正直に、
シオは
「片方だけ? 右目は? 見えない? ああ、さっき手で隠してたもんな」
そこは見抜かれていなかったのだと思うと、すこしだけ、
「片目でしか見えないって、どんな感じなんだ? 距離感とか狂うだろ? いや待てよ、あやかしはもともとこの次元にいないんだとすれば、見え方は普通なのか?」
でも渡辺の目そのものは三次元の構造になっていて……とシオはぼそぼそと考えを声に出しつづけた。そして、とつぜん「ふうん」と声を大きくした。
「あの、あのさ」
身長の差はそのまま歩幅の差にもなり、どうしても一緒に歩くのではなく、
「渡り廊下の、あ、あ、あやかしは」
「三階のだろ。あれ、ぞっとするよな」
その反応に、
三階の渡り廊下の真ん中あたり、床に張り付くようにして、おおきな顔が・・いる。
初めて気がついたのは、入学してすぐのときだった。先生が荷物を運ぶのを手伝ってほしいと声をかけてきて、友人たちと三階まであがった。渡り廊下に出るなり、
三階建ての校舎と校舎をつなぐ渡り廊下の一面に、巨大な、長い顔が、いたのだ。
段ボール箱をかかえていたおかげで、すぐには気づかなかったが、なにか動いた気がして、ビーカーの詰まった箱をずらすと、巨大な顔が見え、その目が動くところまで目撃した。
以来、三階の渡り廊下には近づかないようにしている。
「もしかして、
「いや。不気味だとは思うけどさ、あれもべつに悪さしてるわけじゃなさそうだし、見た目であれこれ決めつけてやるなよ。俺もできるだけあそこは通らないけど、それは、あいつを踏むのが申し訳ないからだよ」
思いがけない返事に、
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