第5話 帰路
しかし、それを声に出すより先に、「おい、そっちの一年生二人。新しいボードゲームに加わってみないか。」と加茂先生が話しかけてきた。ポーカーは一度も手札を見ることなく終了した。
結局、その後もクラブ活動の時間にシオと話すチャンスはめぐってこなかった。チャイムが鳴ると先生は見学組を前に集め、ゲームクラブに入る際の注意事項を伝えた。長い説明を聞きながら、
「見える人間に会うの、はじめてか?」
まるで、そういう人間がいくらでも存在するみたいな言い方だった。
すくなくとも、シオは見えるのだ。自分の春休みの事件(つまり視力の悪化からの携帯ゲーム機の没収のこと)を見抜かれたことにおどろいて、白と黒の二人組について問いただすのが後回しになったが、シオの態度は「見える」どころか、対処の方法まで知り尽くしているふうだった。
「見すぎるとろくなことないぞ」とシオが言った。
(どういうことなんだろう。)
教室に戻り、帰りの会が進むあいだ、
仕方なく、
小走りで一階にたどりつくと、あとは全力で靴箱まで走った。
すると、そこにシオが待っていた。
「転ぶぞ」
濃い緑色のリュックを右手にぶらさげているシオは、親しい友人のように笑った。注意を促す言葉であることは理解できるのだが、シオの声で聞かされると「転ぶぞ」という予言にも思えた。
「ほら」
シオは
「お
「おまいり?」
「早くしないと日が暮れるぞ」
先に歩き出したシオを追いかけるため、
「ほら」
振り返りながら、シオが
「大ケガする前に、お
前の日におろしたばかりの白いスニーカーに足を突っ込んで、
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