百合の花 ー10ー

A(依已)

第1話

「えっ、着いたの?」

 寝起きでボーッとした視界で、窓の外に目をやった。そこは、透き通った綺麗な水の水路が中心に流れ、木製のこじんまりとした瓦屋根の建物が、水路の両脇を囲うように建ち並んでいた。

 そして、あの写真から飛び出したかのような民族衣装をまとった女性達が行き交う、小さな町だった。

 町のあちこちの道端には、目も覚めるような鮮やかな民族衣装の、やや歳のいったおばさんが、煉瓦で敷きつめられた小径に、たくさんのとうがらしを広げ、乾燥させている。  水路では、同じく歳のいったおばさん達が、ワハハと高笑いで世間話に花を咲かせながら、洗濯をしている。

 民家の軒下には、どの家からも、無数のとうがらしやにんにくやトウモロコシやらが、ぶら下がっている。

「ホントに着いたんだ―――」

 行き当たりばったりの旅なので、着くまではわからなかったが、どうやらココは、まだあまり観光地化されていないようである。

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百合の花 ー10ー A(依已) @yuka-aei

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