第2話 今どこ?
これは男友達の身に起こった話です。
彼は彼女とドライブに行きました。
予定より帰りが遅くなったけれど、二人とも翌日は仕事です。
そこで近道のために心霊スポットと言われている場所を通りました。
その時は何も起こりませんでした。
しばらく後で2人は、お手洗いがてらコンビニに寄りました。車はそこの駐車場に止めます。
男友達のほうが先に用を済ませ、彼女も車に戻ってくると、出発しました。
あとは田畑と林とまばらな民家。街灯一つない暗い田舎道がまだ続きます。
といっても、山奥のいちばん薄気味悪いところはもう過ぎたので、彼はリラックスして運転しています。いま思えば気が緩んでいたとも言えるでしょう。
ブブブブブブ
彼のスマホに着信通知がありました。
運転しながら、彼は片手をハンドルから離してスマホをチェックします。
表示されたのは、彼女との LINE のトーク画面。
待たせてゴメン
今どこ?
彼の心臓は恐怖に凍りつきました。
心の叫びが聞こえてくるようです。
「じゃあ俺の助手席にいるのは誰なんだ⁉︎」
そこに助手席の女の声が聞こえ、彼はますますパニックになりました。
そしてカーブを曲がりきれず、車は林の木に衝突しました。
さいわいと言うべきか、怪我は大したことはなく、彼は医療費、車の修理費、有給休暇のほかに何も失いませんでした。
* * *
彼女はどうしたのかって?
……察しがついてるかもしれないけど、私がその彼女。男友達と言ったのはよくある照れ隠しです。
運転中に表示されたのは、デート当日の待ち合わせの時に私が送った LINE です。送ってすぐに会えたから、彼はそのメッセージを見なかったそうです。
通知が来たのは広告か何かでしょう。
で、スマホを見たら、私とのトーク画面にしたままの LINE のあのメッセージが真っ先に表示されたというわけ。
不思議なことなど何もなかったんです。
助手席にいた私を幽霊か何かと思い込んで、運転中に気が散っているのを注意しようとしても聞かず、結局事故るなんてバカな人。
私も、見舞いにきてくれた友達から、そんな男とは別れちゃえって言われました。
でも、それはデート中に全くスマホをいじろうとしなかったから起きたことなんです。
それほどまでに私とのデートに夢中になっていたんだと思うと、何だか離れがたいんですよね。
(了)
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