鉄道と言えば機関車である。それは世の常識。その機関車が吐き出す煤は肺を侵すという。

 しかしホームに進入してきたそれは、彼女の常識からくる予想を覆すものだった。

 鐵輪と鐵軌がこすれあう甲高い音が響き、それは公国側から滑り込んでくる。

 金属光沢を放つ、エメラルドグリーンの上半分。下半分は白く、その境目をあざやかなピンクの帯が走る。斬新なカラーリングにも驚いたが、彼女と最初に顔を合わせた先頭車両がこれまた奇怪だった。

 車両は先端にいくほどに絞り込まれ、丸みを帯びた鼻に終わる。その異様な姿の車両には煤一つついていない。先頭車の側面には公国と帝国の国土をデザインしたマークが配され、その周辺を鳥のアイコンが飛び回っている。ちなみに『サプサン』とは公国の言葉で、中型の猛禽のことである。

「わー! すごいすごい! 何これ何これ! 煙吐いてない!」

 アデリーナはマスクを口から引き剥がしてはしゃぎ、年甲斐にもなく鞄を放置して先頭車両を追いかけた。数瞬後、彼女は周りの呆れたような視線に恥ずかしくなる。

 アデリーナは行儀よく乗車列に並んだ。車体の側面にある扉が、何か気体が抜けるような音がして内側へとへこみ、そのまま横へとずれて開く。今まで見たことがないその方式に、彼女は少しの恐怖を感じた。

 ヒトが介在しているとは思えない無機質な動きとその仕組みに、言ってしまえば田舎で牧歌的な生活を送ってきた人間にとっては異質に過ぎた。

 『理は神が与えた物』という認識のある公国の人間と、『理は人が見つける物』という認識の帝国とで価値観の相違があるのは当然なのだろう。

 公国がこの『列車』を受け入れられたのは何故なのか。——彼女は民族性の根本に踏み込むようなことを考えそうになっていたが、別の出来事が考えに耽ることを許さない。

「あったかぁ……」

 車内が暖かい。外はマイナス二桁度だというのに、アデリーナの瓶底メガネが曇るほどに暖かい。彼女は静かに驚き、感心した。しかもこれはストーブの温かさではない。重油でも燃やしているのかと思ったが、そもそもにおいがない。

「え? ここって二等車なの? ウソ」

 アデリーナが驚くのも無理はない。椅子は全てふかふか。前席と後席のスペースはゆったりととられている。椅子は見たことのない毛皮のようなものが貼られており、手触りがよさそうだ。奥のほうでは始発駅から座っている乗客らしき一団が、座席を回転させて向かい合わせにし、カードに興じている。集団で旅行に来ても楽しめるような設計である。

 こんな贅沢、とても常識では考えられない。

 椅子があればマシ。灯りは基本的に無い。暖房なんて、不完全なものが一等車にあるのがやっとなハズだ。この切符はとんでもない金額の切符なのだろうと思って、彼女は切符の額面を見た。しかし虫の触角に串を通したような通貨記号が読めない。帝国の通貨ではないようだ。

 アデリーナはズルズルと鞄を引きずって、自分の席へと進んだ。そして見つけた。

 ——自分の席が、先着者によって荷物置きになっているのを。

「……あのう……」

 先着者の男は紺色の制服をだらしなく着込んでおり、制帽を顔に引っかけ椅子の背もたれを思いっきり後ろへと倒して、眠りこけていた。

「あの! あの!」

 アデリーナの無力な抗議は、なんとかその男の眠りを打ち破った。だが彼女は後悔した。

 男は二十代後半ほどの若者だった。彼は目つきが悪く、大きいが一重の鋭い眼がアデリーナを刺すように睨み付けている。流行の草子であれば秀麗な様子もあったのだろうが、この男は違った。一言で言えば、永久凍土をぶらついているやさぐれ狼だ。真っ黒な頭髪は刈られているものの、不精さがにじみ出ている。

 アデリーナは黒髪の男にすっかり怯んだが、自分の正当性を通すことを忘れなかった。

「窓側の席! わたしの席なんです!」

 黒髪は怠そうに「ヴゥー」と変なうなり声をあげてこわばった体を解し、窓側の席に放り出していた私物を回収して頭上の荷物棚へと放り込む。そしてまた眠った。

 アデリーナは渋面を作った。こんな粗野そうな男のとなりに座らなければいけないのか、と。

 妙齢の女性としては当然の反応だった。下手すると何をされるかわからない。だがそれは二等以下の客車ではありえる常識。彼女は自分がこれから一人でなんでもしなければならない現実を直視する。

 アデリーナは、ずい、と窓側へと進んだ。だがその思い切りが良くなかった。

「いって!」

 突然聞こえる悪態。アデリーナの鞄は黒髪の向こうずねをはねていたのだ。

「ああああ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 黒髪はとてつもない恨みのこもった視線を送る。そして背もたれを直して座り直すと、目やにをこすり落として、小さいため息をついて虚空をながめだした。

 緊張に体をこわばらせたアデリーナだったが、何も起きなかったことで少し、この男への印象が良くなった。

 アデリーナは旅行鞄を持ち上げて棚へと上げようとした。当然身長も膂力足りなかったので彼女の頭の上で鞄はぐらぐら。

 それを間近で見ていた男が叫んだ。

「オイオイおめー! んなでけー荷物上げんな! 設計の想定外のモノはやめろ!」

 唐突の帝国首都訛りで責められたアデリーナは振り返った。黒髪は慌てるようにアデリーナの鞄を取り上げ、ずるずると引きずってデッキのほうへと向かった。彼女はひったくられたことに驚き、悲鳴もあげられないまま男を追いかけていく。

「おらっ! ここに荷物置き場あんだろうが! ここに置いとくんだよ!」

 確かに彼が指し示す場所に、大きな手荷物がベルトで固定されて置かれている。しかしアデリーナは眉をハの字にしていた。

「なんだよ」

「盗まれませんか……?」

「監視カメラついてるし乗員は全て切符の支払い情報で把握してる。営団はバカじゃねぇよ」

 彼は乱暴に鞄を置き場に放り込み、備え付けのベルトでガッチリ固定した。

「それなりに固定したからな。どこまで行くんだ? 降りるときにほどくからよォ」

「し、終点まで……」

「ああ、なら俺と同じだわ」

 そう言うと黒髪は踵を返して席へ戻る。アデリーナはそれを追いかけるので精一杯だ。黒髪は窓側の席を指さして、言った。

「座れ。帝都まで五時間だ。適度にトイレとか散歩して水も飲めよ。旅行者血栓症エコノミークラス症候群起こして死ぬぞ」

「な、なんです? それ」

「聞くな。俺はただの非番のサラリーマンなんだからよォ。今朝も夜勤明けでねみーんだ」

 アデリーナはだんだん腹が立ってきた。慇懃無礼も頭にくるが、この不良狼は直球で無礼だからだ。

 別にレディ扱いして欲しいというわけではない。特に公国は国教の教えが浸透しているのもあり、女性の地位が低い。しかしそれでも男性は女性に対してスマートに接するし、未成年の女性に対して男性もレディとして接することがある。そして女性もそれに甘んじず、男性のエスコートを助けるための身のこなしをするのがベストと教えられる。

 しかしこの男は違う。自己中心的で他人の心を考えない。帝国の人間はみんなこうなのかと思ってしまう。

 アデリーナは不安を感じながら席に座った。男は相変わらず憮然とした表情を崩さないまま席へと体を投げ出して眠り始める。

 ふと、彼女は外を眺めた。

 景色が、ものすごい勢いで後方へ吹っ飛んでいくのが見える。

「えっ! えっ! もう走ってるんですか! もう出発したんですか!」

 黒髪はアデリーナに聞こえないよう舌打ちをした。

「だからどうしたよ」

「いや、あの、全然揺れないし、音も聞こえないし……」

 黒髪は諦めたかのように天井を眺めた。

「全車両に動力部があんだよ……。だから動きがスムーズだし、発車時の衝撃もない。線路の段差なんて絶対ねぇ。あったら死ぬからな」

「なんだか分からないけど、すごいですね……。これ、どのくらい速いんですか?」

「今は知らんが、最高速度は時速三〇〇キロだぞ」

 アデリーナはその速度の意味が分からなかった。

 彼女は「どのくらい速い」と聞いた。それが意味するのはつまり、「馬と同じか、馬より速い何かの動物と等しいか」を聞いているだけなのだ。

 これは別にアデリーナが常識を知らないからではない。公国の教育が歪なのである。

 魔法が便利すぎて、それに至るための近道的な教育に終始した結果、過程が失われたのだ。

 国文の授業で名文を暗記させられてテストされるが、その言葉や思考に至った筆者の考えは無視されるのと同じである。

 アデリーナのきょとんとした顔を見た黒髪は、パッと言葉をかえる。

「サプサンって猛禽いるだろ? あれより少し遅いくらいだ」

「猛禽と同じ速度で、地面を這ってるわけですか……」

 やっと合点がいった彼女はしばし、外の吹き飛ぶ景色を眺めていた。

「お弁当にスープ、お菓子、お飲み物は如何でしょうか……」

 ガラガラと、後方からワゴンがやってくる音が聞こえる。

 アデリーナはそれに気づいていなかった。だが男は手慣れた様子で手を挙げ、車内販売を呼び寄せていた。

「ホットのコーヒーちょうだい」

 男はポットから注がれたコーヒーを手に取って決済を済ますと、音を立てて啜りだす。その音に気づいたアデリーナは振り返ると、販売員から商品を提案された。彼女はすでに暖かいお茶を持っていたので、何か茶菓子が欲しくなっていた。

「あの、何かお菓子ございませんか。暖かいお茶にあう……」

「それでしたら、限定のアイスクリームなどは如何でしょうか」

「あ、アイスクリームですか! ちょっとそんなお金は……」

 公国ではアイスクリームは富裕層の菓子である。当然のように、商業的な冷凍技術は錬金術師が独占している。だからたかがカップアイスでも贅沢品だ。

 個人で氷魔術を使って作ることも出来るが、疲れる。クリームを撹拌しながら魔法を掛けるのは体力がもたない。夏などにクタクタ汗みずくになってそんなことをするぐらいならば、大きな氷をみんなで造ってかき氷をするほうが人気がある。アイスクリームは高嶺の花だ。

「ワンコインでお求め頂けますが……」

 アデリーナは「そんなバカな」と思ったが、そのやり取りを聞いている黒髪が肩をすくめるのを見て、購入を決めた。

 紙のカップに入ったアイスが目の前に置かれた。見たことのない文字が帝国・公国の言語と併記されている。アデリーナは意気揚々と蓋を開けて付属のスプーンを当てようとしたが、それを見ていた黒髪が警告を出してきた。

「メチャクチャ硬いぞ。当分放置しとけ」

「え? あ、うわっ、硬っ!」

 まるで石膏のように硬い。力任せにスプーンを当てたら絶対折れるだろう。

 ならば、と思ってアデリーナは懐から刺繍の入ったハンカチをとりだしてテーブルに敷き、その上にアイスクリームカップを置いた。そして何かをもにょもにょと唱えると、目に見えてカップに付いていた霜が消えていく。

 その時、車両の後ろのほうから前方へと歩いてくる壮年の男がいた。

 始発駅から乗ってきてカードに興じていた連中の一人で、どうやら酒が入ってるようだ。

 横に大きい体を揺らしながら前方のトイレに向かうところだったらしいが、アデリーナがアイスクリームに手をかざしている様子を見て眉をひそめた。そしてそのままトイレのあるデッキへと消えていく。

「何してんだ」

 アデリーナの真横で様子を見ていた黒髪の男は、端から見て不思議なことをしている彼女に尋ねた。

「ちょっと柔らかくなるまで、温めているんです」

「手の熱で?」

「いえ。これは初歩の加熱術式ですよ。……そろそろいいかな?」

 アデリーナはそういうとカップの蓋を取り去った。スプーンを突き立てるとサクッと入っていく。そしてスプーンですくった象牙色の欠片を口に運ぶ。口の中で少し溶かしたのち、翠瞳が大きく見開かれた。アデリーナは無言でサクサクぺろぺろ堪能し、最後は名残惜しそうにカラのカップを眺めていた。

 そもそも砂糖は暖かい地方のものである。現在も公国は砂糖を輸入に頼っているため、アデリーナのような庶民の脳は砂糖の耽美な誘惑に弱い。

 アデリーナの脳にはこの氷菓が、おそらく一生の思い出として刻まれたことだろう。

 となりの男はコーヒーを飲み干してからは、耳の穴になにかを詰めて再び目を閉じてじっとしている。その様子を不思議に思ったアデリーナだったが、すぐに窓の外に目をやった。

 白銀の世界。そこまで見通しは良くは無い。防風林と思しき木々が、線路と平行してどこまでも続いている。時々それが途切れても、地吹雪で真っ白な景色しか見えない。

 それもそうだ。この季節はホワイトアウトが日常茶飯事なのだから。

 これは冒険だ。魔法さえも珍しい田舎の小さな村で生まれた小娘が、数奇な運命に従って単身、未知の世界へ旅をする。

 アデリーナは御伽草子の主人公になった気分になりはじめていた。

 ……ぎゅー……。

 アデリーナは口をへの字にしておなかを押さえた。隣席を見たが男は相変わらず寝ている。腹の虫の抗議は聞かれていないようだ。

 興奮から緊張状態になり、弛緩し、期待がたかまって腹が減ったらしい。

 彼女はポーチをまさぐり、母親から渡された弁当をとりだした。中にはピロシキが二個。当然冷たくなっていたが、これも刺繍の入ったハンカチの上で手をかざして温めた。

 ピロシキ表面の脂がじくじくと泡立ち始め、腹の虫が暴れ出しそうになる。

 その時、車内販売が折り返してきた。アデリーナは手を挙げて止めるとスープを所望する。

 サーブされたスープは公国風の真っ赤なボルシチだった。肉は当然入っていないが、香りは肉の出汁がきいている。赤ビーツの独特な香りが懐かしい。弁当のピロシキと合わせると、あっというまに立派なランチになった。

 そしていよいよ、彼女がピロシキにかじりつこうと思ったところだった。

「におうと思ったらボルシチか」

 野太い、黒髪の男とは違う声が横から聞こえてきた。

 その声に驚いたアデリーナは、豆鉄砲喰らったハトのような顔で横を見た。そこにはよく肥えた壮年の男が、顔を真っ赤に酒に焼けさせながら彼女を睨んでいた。

「公国の野蛮人は相変わらずその赤い根っこを食べてるんだな」

 アデリーナは何も言えなかった。突然の因縁と状況に混乱しきっていた。

「どこの田舎から出てきた? こんな列車に乗れるような稼ぎないだろう? キセルか?」

「い、いえ……。切符はあります……」

「フン。何をしに帝国へ来るんだ」

「医術の勉強に……」

 それを聞いた男は失笑した。

「識字率四割の国の平民が、勉強なんてできるわけ無いだろう」

 男はひき笑いして肩を揺らす。

 その様子がアデリーナには恐ろしかった。初対面の人間を徹底的に見下してマウントをとるその意識に戦慄した。

「わ、私は今日まで帝国の医学書で学んで……」

「本当に読めたのかね? ページの下端に書いてある文字を読んで勉強した気になったかね? それはページ番号だよ! 君ィ、次の駅で降りて習字からやり直したまえよ。悪いが帝国は貧乏で、君のような無能力者を養うような余裕はないのだよ。ハハハハハ!」

「うるせぇな」

 隣席で寝ていた黒髪の男が、耳の詰め物を取り払いながら忌々しそうに起きた。一重の目玉がぎょろりと動き、酒焼けの男を下から睨めつける。

「俺の頭の上でぎゃぁぎゃぁ騒ぐなよ酔っ払い。とっとと戻っておとなしくカードしてろや」

「なんだ若造」

「おう。若造だぞ。だから何するかわかんねーぞ。キレやすいからな」

 黒髪の男は立ち上がり、酒焼けの男に詰め寄った。背はそこまで高くないが、それ以外の部分で酒焼けの男は気迫負けしていた。

「——お前営団の職員だな」

「そうだよ。非番だけどな。それがどうした」

「名前は!」

「楠田」

「クスダ、覚えたぞ。帝国に戻ったら営団の本社に怒鳴り込んでやる。俺は帝国鋼材公社の供給部長だからな。震えて寝ろよ」

 そう捨て台詞を吐いた酒焼けの男は、車両後部の自席へ戻っていった。

「ったくよォ……、いちいち脳みそにカビはえてんな……」

 楠田はまた気だるそうに席に座ろうとしたところ、目を真っ赤に腫らしたアデリーナを見つけた。彼女は怒っているような様子だったが、こぼれ落ちそうな涙を堪えていることはすぐに分かった。

「災難だったな。だがああいう手合いはどこにでもいるだろ」

 アデリーナはハンカチを目に当てて、懸命に泣き声を抑えて涙をこぼした。単純に怖かったし、自分の国のことをストレートにこき下ろされたことに耐えられなかったのだ。

 楠田はウンザリした様子で、席を立ってどこかへ去って行く。その間にもアデリーナの頭の中に、あの男の言葉がこだましていた。

 未だに貴族社会で、大規模な製造業は一部の魔術師や錬金術師が独占している。魔法が使えない者は『モノ』になる。そこからの逆転はない。数字を弄んで世紀の大発見をしたり、リンゴを眺めて万物の理にたどり着くこともないのだ。それが公国の病だった。そして魔法が使えても、多くは嫉妬からのイジメで心を壊してやはり『モノ』になってしまう。

 アデリーナはそれが嫌だった。そういう神から押しつけられた理によって、人が見つけるべき理を知ろうともしない社会が嫌だった。

 それを変えたくて、今まで勉強してきたのに。

「おい」

 楠田の呼びかけに、アデリーナはハッとして声の方を見た。彼は紙コップを手に持っていて、彼女にそれを突きだしてきた。

「飲め。落ち着けよ」

 アデリーナはそれを手に取り、口を付けた。淡泊な苦みのある淡緑色のお茶だった。

 楠田もとなりで茶を飲みながら、どこからかとりだした丸い白い団子に黒い紙を巻いたものを食べている。

「なんですか……それ……」

「握り飯」

 楠田は口をもちゃもちゃ言わせながら答える。どうやら彼も昼飯のようだ。

「あの……クスダさん……」

「なんだよ」

「ありがとうございました」

「どうでもいいから昼飯食えよ。冷めてるぞ」

 うながされてアデリーナは昼食を再開した。魔法で温める気にはなれず、ぬるくなったボルシチを口に運ぶ。

 懐かしい故郷の味なのだが、もはやコンプレックスになりつつあった。だが母親の作ったピロシキだけは違っていた。おそらく沢山の卵を使ったのだろう。パンは黄色く、具の挽肉と干し茸の味がバターに混ざっている。

 アデリーナはまた泣きそうになった。

 こんな辛い思いをするのなら、家に引きこもって村で子供達に読み書きそろばんを教えていた方が良いのではなかったか、と。

 ダメだ。と、アデリーナは涙をこぼしてしまった。

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