能力者である俺たちの生き方
互野 おどろ
第1話 入学式
附属中学校と初等部がある、能力者のための学校。
能力の有無は4、5歳ではっきりするとされているから、大抵は初等部からこの学校に入学する。
だが俺は、まあ色々とあって高校から入ることになった。
それまでは何処で何してたのか、それはまた今度。
大荷物を背負い、学校に続く坂を登る。
入学式前日に学校側から「保護者の付き添いはお断り」という旨のメールがあった。
それを伝えたときの「そもそも行く気なかったけどな」という同居人のセリフを思い出す。
しかもマジの真顔。
別に良いんだけどさ、もう少し寂しがってくれても良くないか?
小中高で入学式の時間が分かれているため、俺の周りにいるのはみんな同学年ということになる。
高入生は珍しいと聞いていたが、いることにはいるみたいだ。
急な坂を登り切ったところに学校はあった。
校門の前に立ってプリントを配っている先生が、先生?
思わず目を疑う。
何故かって、その髪が真っ白で、目が濃いピンクだったから。
その先生を見て、俺はやっと南ヶ丘高校に来たんだな、と実感する。
能力者は、その能力に応じて身体的特徴が現れる。
単純な話、水系統の能力者は青に、炎系統の能力者は赤に髪や目が染まるってことだ。
そしてこの学校は、先生も全員能力者だ。
白髪のこの先生は、一体何の能力者なんだろう。
若そうだし、流石に
プリントを受け取るとき、白髪の先生は俺の顔を見て「おや?」という風に眉を上げた。
ああ、そうだった。
そもそも俺も特徴的な外見だってことを忘れてた。
髪は腰あたりまである黒髪で、目はオッドアイ。
そりゃあ「おや?」ともなるよな。
プリントの指示に従って敷地内を進むと、入学式の会場になっている体育館に到着した。
この学校では、体育館のことは「アリーナ」と呼ぶらしい。
事前に支給されていた室内靴に履き替え、来た人から順にアリーナ内に並ぶ。
周りの人たちが俺の目を見て息を呑むのが分かる。
たしかに珍しいけど、でもそこまで露骨な反応は良くないと思うよ。
ほとんどが遠巻きに眺めている中で、1人だけ声を掛けてくる人がいた。
野次馬なら無視してやる。
そう思ったんだけど、
「貴方の目、綺麗。
人が多い中国にも、そんな目の人はいなかった」
中国?
びっくりして、思わず振り向いてしまった。
そして声の主を見てまたびっくりする。
髪の色が、左右で綺麗に分かれていたからだ。
いくら能力者とは言えど、ツートンカラーにも程があるだろ。
「初めまして。
私は
この学校に集まる能力者って、日本人だけじゃないんだな。
「日本語、すごい上手ですね」
にっこり笑って言うと、彼女は狐目を更に細めて笑った。
「今日の日のために勉強した。
敬語はまだ出来ない。
日本語はとっても難しい」
分かる。
すーごい分かる。
日本語ってむずいよなぁ。
日本人でさえ使い熟せないんだから、中国人の
「日本人の俺も日本語は難しいと思う。
頑張ってね」
「謝謝」
中国の「ありがとう」のポーズ。
生で見るのは初めてだけど、本当にやる人いるんだな。
ふとステージの方を見ると、いつの間に男の人が立っていた。
状況と服装から察するに先生なんだろうけど、また奇抜な色合いの人だ。
水色と白が入り混じった髪は、光に反射してピンクに輝いている。
肩につくくらいの長さのそれを、後ろで1つにくくっている。
その目は反射と同じ、透き通った薄いピンク。
黒のスーツに水色のネクタイを締めたその人は、壇上のマイクを使って話し始める。
「新入生の皆さん、入学おめでとう。
校長の
こうちょう、って。
ええ!?
あの人がここの校長!?
驚いたのは俺だけではないはず。
だってこの人、すごい美人だ。
目分量だけどかなり身長高いし、顔小さいし、足長いし。
今すぐ校長辞めてモデルにでもなったら良いと思う。
「堅苦しいのは苦手なので、今この瞬間から敬語はやめます」
ん?
「初めまして!
あ、ちなみに身長は187あるかな」
呆気。
ツッコミどころが多すぎる。
てか本当に身長高いな。
頭に?が浮かびまくっている俺たちを無視して、校長は自分のペースで話し続ける。
「これから君たちと特に関わることになる先生たちに自己紹介して貰うね!
トップバッターは
元気いっぱいに宣言して、俺たちの背後を指さす校長。
振り向くと、そこには。
「呼び捨てるなと何度言えば…」
面倒臭そうな、うんざりしたような表情でため息を吐く、この人、が、
…この人もモデルに転職すべきだ。
頭身がおかしい。
毛先だけ白にグラデーションした真っ青の髪。
それが、高い位置でポニーテールにした状態で腰辺りまで伸びている。
そして何より変わっているのが、前髪だ。
鼻がぎりぎり見えるぐらいの長さで切り揃えられている。
つまり、両目とも前髪で隠れて見えていない。
怪しさ満点の髪型なのに、何となく大人な雰囲気がある。
その先生は、ハイヒールを高々と鳴らして俺たちの前まで来る。
そして壇上の校長からマイクを受け取り、口を開いた。
「今日から君たちの学年主任、兼『体育・技能』の教科担任を務める
京都出身の27歳、好きな食べ物はラーメンと手羽先。
特技は書道と弓道で、趣味はバスケだ。
1年間、どうぞよろしく」
「君たちの斜め後ろにいる、その小さくて白いのが
プリントの配布、ご苦労様!」
プリントの配布、って。
「ほんっとに余計なことしか言わねえな、あんたは」
あの白髪の先生だ!
先ほど少し目が合っただけの関係性だが、俺は何となく嬉しくなる。
「小さいは余計なお世話だ」
「事実じゃん?」
「そもそもあんたがデカすぎるんだよ」
「まあ僕は高身長のイケメンだからね」
言い合いの末にチッと思い切り舌打ちをする白髪の先生。
物静かな大人、というイメージが一瞬で崩れ去った。
「…
是非とも名前で呼んでくれ。
運動はからっきしだが、機械いじんのは得意だな」
しかも名前呼び指定て。
何でだよ。
変わり者揃いかよ。
隣にいる
学校生活は始まったばかりだが、もう既に不安しかない。
俺、こんなとこでやってけんのかな。
能力者である俺たちの生き方 互野 おどろ @neuneu0101
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