第二十話〜闇夜〜

レツィア「あのユクシヌは、わたしにレヴァノイズでの

中将の座を与えると—」


クロサキ「ルークも貴女に固執していた—」


レイジ「—どれも元首が交代してからだな

色々事が表に現れるようになったのは」


クロサキ「前元首は政府内で根強い支持があるから、

今の元首と派閥別れが起きている—という話もある」


三人はしばらく沈黙する


レイジ「政府相手に、万が一の事態が起きた場合

生徒会と風紀委員会が別々では、生徒や一般人に掛かる被害が

大きくなる——レツィアが言った合併とはそう言う事だ」


レツィア「風紀委員長の実効支配が弱まっている今が、組織再編の時だと思う」


クロサキ「……わかった、一晩考えさせて欲しい

とても重要な案件だから」


レツィア「待ってる—」


レイジ「サクヤ、これからもよろしく頼む」


クロサキ「—もちろん」


二人は優しく握手を交わした


レツィア「サクヤが自分から男に触りにいくなんて…」


クロサキ「誤解を生む言い方をするなッ‼︎」


すると彼は繋いでいた手を持ち替え、指と指が絡め合う“恋人つなぎ”にした


レイジ「お前って、綺麗な指してるよな」


クロサキ「なっ…」


レツィア「ちょっレイジ!さすがにそれは—」


レイジ「ほら、レツィアも見せてみ」


もう片方の手で、わたしの手を掴み上げた


レツィア「もうレイジっ」


レイジ「—ふむ、レツィアの方が白いな」


クロサキ(ち、近いって!……私は…風紀を—)


レツィア「こんなとこ見られて…新聞部にでも報告されたらどうするのッ」


レイジ「いやここ病院の屋上だし、誰もいるわけ—」


“カシャ📸”


❓「ども!続きをどうぞ!」


三人「——え?」


❓「自分、新聞部部長のフブラ-カイトです

いや〜まさか生徒会副会長兼執行部長のユズリハ氏と、

風紀委員長のクロサキ氏に彼氏がいて

その彼氏が学園の特別顧問教官であり、三人は恋人同士だった——

で一面は決まりですね」


そんな事を本当に書かれたら、大騒ぎとかのレベルじゃなくなってしまう


カイト「才色兼備のユズリハ氏と、冷徹無比のクロサキ氏

その最強究極のツートップの心を射抜いたアナタは

一体全体何者です?いやマジで」


レイジ「本妻と愛人です」


“ドスッ!ドスッ‼︎”


鈍い音が二回鳴った瞬間、彼がその場に崩れ落ちた


レツィア「最ッ低」


クロサキ「私が愛人…?それとも—」


カイト「御二方も男に興味があったのですね、少し安心しました」


部長は、今撮って現象した写真をこちらへ差し出した


レツィア「…?」


カイト「いい表情だったので、ついつい撮りたくなりまして—お返しします」


そこには、本来なら絶対にあり得ない異色の三人組が

楽しそうに絡む姿が写っていた


クロサキ「それで新聞部がこんな所へ何の用?」


カイト「いえ、ちょっと先ほど父が亡くなったと報告を受けたもので」


レツィア「—ぇ」


カイト「うちの父、ここの執刀医をやってまして—

ちょっと亡骸を拝見しに来た次第なのです

あぁ、今ここで見た事は他言無用ですから、心配なさらず

私も命が無いと記事が書けないので」


この屋上で泣いていたのだろう

——平常心を装ってはいるが、わたしにはわかる

とても、とても深い喪失感が彼を覆っている


レツィア「フブラ部長…わたしは—」


カイト「また父のところへ行ってあげないと、

あんな真っ暗な場所で一人は…寂しいでしょうから」


一礼して、部長は屋上を後にした


レイジ「奴にも俺らと同じ人生がある—

他人の事を主観的に考えられないから、どうしても状況を軽んじてしまう

だがそれが人間だ……そう…割り切るしかない」


それから俺たちは一度、学園へ帰ることにした



—聖煉学園・正門前—


異変に気づいたのは、門をくぐってからだった

時刻は深夜過ぎ—静かなのは当然なのだが、そこに明かりという光が

全て消えた状態だった


クロサキ「非常灯も消えている——不自然だ」


レツィア「—レイジ」


彼が真っ先に連絡をとったのは会計だった


レイジ📱「ハミル、今学園内の状況で変わったことは?」


📲「大丈夫です会長、ついさっき停電がありまして

どうやら電力系統のトラブルみたいで、少し復旧に時間がかかるそうです」


よく見ると監視カメラやセンサーの点灯も消えており

防衛システム自体の電源も落ちているのがわかった


レイジ📱「—そうか、わかったすぐ行く」


クロサキ「おかしい—例え電力の供給が失われても、

貯蓄魔力が電力に代わり、システム全体は落ちないように設定されてる筈」


すると彼は、再度同じ事を繰り返し始めた


レイジ📱「ハミル、今学園内の状況で変わったことは?」


レツィア「ちょっと何?今言って—」


📲「大丈夫です会長、ついさっき停電がありまして—」


レツィア「—ぇ」


——先程と全く同じ答えだった

違和感のある既視感に、三人は互いに顔を見合わせる


レイジ「—ッ」


彼は空を見上げて、何かを悔いる素振りを見せた


クロサキ「会長?空と何か関係が…?」


レイジ「—お前らはここで待機してろ、もし今の異変が

体感まで及んだら——逃げることを優先しろ」


レツィア「レイジッ‼︎わたし達は、守られるだけの一方的な関係じゃない

——そうでしょ?」


クロサキ「合併の件は前向きに検討中だ—故に、

ここは貴方一人では行かせられない——私にも背負わせて欲しい」


レイジ「お前ら…」


レツィア「それで、今の心の中で考えてることを教えて?」


彼は少し躊躇ちゅうちょしていたが、二人に見つめられ続け

観念したように話し始めた


——五十嵐ルークと冥府契約していた蠢く者を

生徒会本部がある、建物の最下層に閉じ込めている話をした

そして、その契約が数時間前に解除された事を明かした


レイジ「闇夜の殺し屋ナイトウォーカー、ある条件下では

叡幻種を超える黄泉の亡者——闇夜の王となる存在」


——彼女達も空を見上げる


空に見えるのは、月も星もない暗黒の一帯

光が存在しない黒い海と化していた



—生徒会本部—


エレベーター動かない為、三人は階段で目的地へと向かう

魔術を行使しないのは、対象に察知されるのを防ぐためである


レイジ「最下層への行き方は、生徒会の中でも俺も含め三人しかいない」


クロサキ「書記と会計—ですか、いいのですか?彼女レツィアはともかく

私は完全に部外者で—」


レイジ「構わないさ、サクヤはもう特別だから」


クロサキ「勘違いする言い方やめてください」


レイジ「最下層のオベリスクは要塞並みの強固さがあり

魔術ならSランクまで耐えられるように設計してるが——」


レツィア「主との契約が切れたナイトウォーカーに、

そこまでの脅威はないと思うけど—」


レイジ「(リサの解析結果で示された〈闇・支配・世・放・死・主〉

という文字列——その中に、主・死という文字があった——何か胸騒ぎがする)

この目で見極める、行くぞ」

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