第十九話〜提案〜

彼から離れようとしたが、背中を押さえられた


レツィア「会長⁉︎」


レイジ「お前がこんな目に遭ったのは、全て俺に責任がある」


レツィア「会長何言って…」


レイジ「五十嵐は完全なノーマークだった——

レヴァノイズが介入してきた時点で、気付くべきだったのに—」


レツィア「—これは偶然です、だから自分を責めないで下さい」


レイジ「……お前は何も解ってない、自身の魅力に」


レツィア「会長…?」


レイジ「レヴァノイズでもそうは居ないSランク保持者であり、

大魔術の中でも高位のを会得している——更にとどめはその

神秘的なまでの美しさだ」


レツィア「…か、会…長—?」


クロサキ(なんだの空気…完全にRSと一緒に出るべきだった…居辛ッ)


レイジ「これからも、お前を狙ってくる存在は必ず出てくる—

だがそれらを対処するには、副会長という位置が邪魔だ」


レツィア「どういうこと—?」


レイジ「会長と副会長、RSとSVとでは同じ組織内にはあるが

それぞれ独立していて、緊急時には色々と面倒だろ?」



生徒会という組織だが、生徒会長と生徒副会長が行動を共にする事はない

誰が生徒会長かは極秘であり、絶対に外へ漏れてはならない

裏のトップが会長で、その直属の部下が会計•書記•庶務•RS

表のトップが副会長で、その直属の部下が執行部メンバー•SV

指示系統は一方的で、双方が連携する事はなく、基本独立している



レイジ「お前を助けるのに—手間をかけたくない」


クロサキ(この展開…)


レツィア「—なら、会長は——どうしたいの?」


——自然と上目遣いになる


レイジ「—こうする」


突然彼は、わたしの制服に手を伸ばし—副会長の徽章を掴んだ


レツィア「—ぇ」


勢いよく剥ぎ取り、部屋の窓から投げ捨てた


クロサキ(そこに捨てるの⁉︎拾われちゃうよ⁉︎)


レイジ「生徒会長権限を以て、お前から副会長の座を剥奪する」


レツィア「会長待って…それって—」


彼は上着の制服から、光り輝く物を取り出した


レイジ「—まだこの位置が空席だったんだ」


先程剥ぎ取った箇所に、取り出した徽章を取り付けた


レツィア「会長…?」


レイジ「その呼び方も、もう禁止な」


新たな徽章には、特殊装飾でRS•SVの文字が刻まれており

頂点にいる鷹が刀を催した爪で、その二つを握り潰している姿が描かれていた


レツィア「うそ…これって—」


レイジ「そこに描かれている鷹は、

神想種の中で最強と謳われた伝説上の生き物だ—

地球上で一つしかない徽章だから無くすなよ」


レツィア「レイジ…」


レイジ「今を以て、ユズリハ‐レツィアを—生徒会首席総長に任命する

——返事は?」


レツィア「……—はい」


それから駆けつけて来た医師らと共に、亡くなった者達を安置所へ運んだ

しかし肉体損傷が激しく、誰が誰の体か—もう見た目では判断できない


—安置所前通路—


クロサキ「…せめて苦しまずに逝った事を願うわ—」


レツィア「死なせたのはわたしが原因—…弱かったから救えなかった」


クロサキ「それは……」


——彼が安置所から出てきた


そして三人はそこから暫く歩き、病院の屋上へ来ていた


レツィア「いい空気——新鮮で気持ちいい」


——そよ風が、彼女の髪を優しくなびかせた


疲れが溜まっていたのか、三人は何か話すわけでもなく

ただただ、空や景色を眺めていた


——それからどれくらいの時間が経っただろう


落ち着いた気を感じたのか、彼が口を開いた


レイジ「——レツィア、本当に入院しなくて平気か?

何日かなら一緒に泊まれるが—」


レツィア「あれは傷に見せかけたヤツの部分転移だったから、ただの—」


レイジ「違う、能力のことだ——」


レツィア「へ❓」


レイジ「お前まだ、大魔術行使の代償が抜け切ってないだろ」


クロサキ「そういえば色々あって気付かなかったけど…それ—」


彼女の髪と眼の色が、未だに紅色のままだった


レイジ「今の反応だとまだ鏡も見てないか—

レツィアは完璧そうに見えて、意外と抜けてるからな」


レツィア「ぬ、抜けてるって…」


レイジ「だってそうだろ、お前髪の毛長く下ろしてるから、

色くらい普通自分で気付くだろ」


レツィア「——しッ、知ってました〜!そのくらいーッ!

いつ突っ込み入れてくるか待っていただけです〜!」


レイジ「“へ❓”」


先程の彼女の真似をしてみた


レツィア「ッ!ぜんぜん似てないし‼︎」


レイジ「さっきのお前の顔、一般生徒が見たらなんて言うだろうな」


レツィア「見せません」


レイジ「新入生達の間で、もうファンクラブが出来てるらしいぞ?」


レツィア「へ❓——ハッ、こ…これは違ッ」


レイジ「俺は生徒会長としては、今まで公の場には姿を見せてないからいいが

お前は副会長として、名前も地位も知れ渡っているから

ファンクラブが出来てるんだ」


レツィア「ファン…クラブ…わたし何もしてないけど…」


レイジ「お前を見て楽しんでるんだろ、色々」


レツィア「…好きでもない人に、色々見られるのは…嫌かな…」


レイジ「じゃあこれからは、俺だけのために——お前を見せて欲しい」


レツィア「——うん」


クロサキ「あなた達、生徒と教官ですよね⁉︎今目の前に誰がいるか知ってます⁉︎」


二人「…」


クロサキ「…私を誰かお忘れで?学園内の乱れを取り締まる風紀委員です」


レツィア「乱れって…まさかわたしに言ってる?」


クロサキ「男に媚を売るような女の顔は、風紀を乱します」


レツィア「なッ⁉︎」


レイジ「サクヤごめん—お前の事、全然考えてなかった—謝るよ」


——そっと頭を撫でた


クロサキ「——」


——彼女は俯いてしまった


レツィア「…サクヤ?」


不安になって顔を覗き込むと、

わたしが今まで見たことないのない表情をしていた


レツィア「……サクヤ、あなたもしかして—」


頬を赤らめ、まるで異性に初めて触られたと感じさせる動揺っぷりで

彼の頭撫で行為を抵抗することなく、受け入れていた


クロサキ「お、男に優しく触られたのがッ…初めてで悪いかッ‼︎」


レイジ「ひょっとして不快だったか?」


クロサキ「ぁ…あ、当たり前ですッ‼︎女性の髪を不意打ちで撫でるなんて…

会長でなければ、風紀乱者で即牢獄行きです‼︎」」


彼女は口を手の甲で押さえ、必死に口元を隠していた


レツィア「かわいい…」


クロサキ「ッッッ⁉︎」


レツィア「ねぇレイジ、風紀委員と生徒会—合併とか出来ないかな」


クロサキ「ちょ!はぁ⁉︎」


レイジ「実行決定権は、総長であるレツィアにある—まぁ俺も異論はない」


クロサキ「覇権争いで戦った仲だぞ⁉︎不可能だ!」


レツィア「サクヤの本心はどうなの?—しがらみとか無しにして」


クロサキ「……合併」


レイジ「どんな理由にしろ、俺達はレヴァノイズとジェネラルを殺した—

言わば政府に、喧嘩を売った事になる」


二人「……」


レイジ「隠し通せる時間は長くないだろう、そう遠くない未来—

大規模な争いが起こるかもしれない

そうならない為にも、政府と裏で解決方法を探るが——

—全てが失敗した時の対策もとっておくべきだろうな」


クロサキ「その対策が、生徒会と風紀委員の合併—」


レイジ「…正直、今の政府は信用できない

国の機密組織の人間が、一個人の感情や判断で動いてはならないし

それを管理しきれていない政府機関も危う過ぎる

——ユクシヌ、そして五十嵐の件

内部で何か問題が起きてるとしか思えない」

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