第十一話〜🆚レヴァノイズ〜

∬オシリスの世界∬


ユクシヌ「ァ……ぁ…溶け…る?」


レイジ「今の温度は204度、生身の人間が耐えられる限界温度だ」


ユクシヌ「な、ぜ…貴様は…熱くないのだ…」


レイジ「その身を焼くだけの理由を—お前が持っているからだ

そして裁くのは俺ではなく——」


太陽が変異し、地球上最強種である竜の姿へと形を変えていった


ユクシヌ「叡幻種の…召喚など…有り得、ない…」


レイジ「残念だがこれは、叡幻種と神想種を餌として喰らう——創造種だ」



【叡幻種】

ランクS +の召喚獣

伝説上にのみ存在するとされる想像上の幻獣体を、

魔術行使によって現世へ再現した存在


【神想種】

ランクS ++の召喚霊

伝説や神話にのみ存在するとされる各属性・各世界の頂点に君臨した神々を、

魔術行使によって現世へ再現した存在


【創造種】

ランクEXの全能を喰らう最強種

竜が最強ではなく、魔術の純粋な原形が最強の果てに

想い描いたのが竜の姿だった


更に、幻楼の紅界リベレイションの効果により

温度調節は自在に操れ、座標を決め局地的にも行える

この世界では想像できる事なら全てが可能となる


《この世界ではレイジのみ魔術行使ができる》


キャンセルされるのは以下の通り

・ランクF〜ランク特S´+++魔術

※(ランクA以上になると、A+++➡︎S -とはならず、特A´+となり

特A´+++から昇格した際に、S -となる)




ユクシヌ「そん、な話…聞いたことがない…」


——眼球が溶け始め、肌全体が焦げ始める


レイジ「最後に一つ聞く、これはお前の独断か」


ユクシヌ「そ——う…」


レイジ「—審判を下せ」


オシリス『———』


左右に空間が割れ、天変地異が巻き起こった瞬間—

竜より穿たれる、刹那より速い収束光がユクシヌを焼却した


ユクシヌ「ギャア゛ア゛ア゛ァァーッ‼︎‼︎‼︎……ぇ?」


結界が解かれる——しかし体は無傷だった


レイジ「オシリスからだ——“貴様は殺す価値すらない、立ち去れ”—だそうだ」


ユクシヌ「……ぐぅぅ」


男の顔が憎悪で歪む


ユクシヌ「こんな事をして…ただで済むと思うなよ…」


レツィア「それ以上、彼に近づいたら殺す」


ユクシヌ「ひッ⁉︎な…ッ、何故生きて…いる?」


レイジ「まんまと“慟哭の預言書エルディアシス”にしてやられたな

——俺たち二人とも」


レツィア「馬鹿な…アゼファニベルで、魔術詠唱は出来てなかった筈…」


レツィア「簡単よ、アナタが能力を使う前からもう発動してたんだから」


ユクシヌ「前…だと?無理だ‼︎エルディアシスは特Aランクであり、

行動時間は限られて—……二重連動戦術デュアルクラッチ

まさかこのレベルの魔術を…重複させていたとでも…言うのか…?」


レツィア「そうね、七回は連結させたわ」


わざとらしく肩を凝った素振りを見せた


ユクシヌ「——なんという規格外な女だ」


——急に外が騒がしくなる


レツィア「風紀委員ね」


ガラス窓の下を見ると、広場には50人規模のGM達が押し寄せ

拳闘傭兵部達を次々に拘束していた


ダニメラ「ユクシヌ卿、ここは退きましょう」


ユクシヌ「——見逃した事、必ず後悔するぞ」


レイジ「次俺の女に手を出したら、レヴァノイズの組織ごと潰す」


レツィア「—」


その時、彼と目が合い気恥ずかしくなった


レイジ「あぁ、後」


ダニメラ「まだ何かあるのですか?」


レイジ「気を付けて帰れよ、今深夜だからさ」


ダニメラ「ぐッ…」


悔しそうな顔を浮かべ、二人の姿は転移で消えた


レイジ「—」


彼女が近づいてきた


レツィア「心よりお待ち申し上げておりました」


跪き、頭を下げた——と同時にエレベーターの扉が開く


クロサキ「レツィア⁉︎」


風紀委員長が駆け寄ってきた


レツィア「仕掛けは?」


膝をつく姿勢から体を戻した


クロサキ「生徒会のと名乗る男が来て、解除してもらった」


レツィア「嘘でしょ?彼が人前に姿を現すなんて—」


クロサキ「そうだ教官は⁉︎あと確認出来てないのが……」


レイジ「サクヤ、こうして実際に会うのは初めてだな」


クロサキ「?」


レイジ「会長のレイジだ、、風紀委員長」


クロサキ「——この男は頭でもヤられたのか?」


副会長が改まってレイジへ敬意を表する——


レツィア「紹介しますサクヤ、

我が聖煉学園生徒会長—カイザキ・レイジ様です」


彼女は思考停止したように動かなくなった


レイジ「ヘマをして少し記憶が欠けているんだよな…

確かレヴァノイズの罠に嵌められて…気づいたら今、みたいな感覚だ

後で副会長に聞く必要があるな」


レツィア「承知しました、会長」


クロサキ「……確かにあの時期に特別顧問教官なんて妙だとは感じていたが…」


レイジ「—今、少し取り込み中なんで、いいかな?」


さりげなく彼女に退出を促した


クロサキ「あ…あぁ…後のことは風紀委員が処理する、失礼」



エレベーターの扉が閉まると同時に—

堪えていた涙が、彼女の目からこぼれ落ちた—


レイジ「俺は…どれ位—記憶を失っていた?」


レツィア「——二年」


レイジ「—ぇ」


正直俺は数十日か、長くても一ヶ月程度だと思っていた—

しかし真実は二年という歳月——

二年も、彼女を放置していたというのか—


レツィア「—きつかったよ…あなたに…他人として接しられた時間が—」


レイジ「—無力で…すまなかった、許してくれとは言わない…だから」


レツィア「許すよ—こうして無事に戻って来れたんだから—

この二年間は決して、無駄じゃなかった」


レイジ「それじゃ俺が納得できない、だからお前の—」


——柔らかい彼女の人差し指が、俺の唇にそっと優しく当てられた


レツィア「わたしの願いはもう叶ってるから—ね?」


レイジ「……これからもよろしく頼む、レツィア」



【シュタインブリッジ】


ダニメラ「ぐッ⁉︎何⁉︎……誰?」


空間転移が遮断された


五十嵐「聖煉学園の五十嵐、因みにランクFだ」


ダニメラ「ふん、聖煉のザコが一体何の—」


——ふと先程の光景が脳裏をよぎる

この空間転移はランクAであり、それを打ち消せるのは

同等かそれ以上の魔術行使だということ—


ユクシヌ「違う…ダニメラ…ッ」


ダニメラ「動いてはいけません、精神支配がまだ抜け切って—」


ユクシヌ「聞けダニメラ!…奴の腕をよく見ろ」


黒い十字架に赤い鎖の紋章——


ダニメラ「…ぇ、そん、な…」


ユクシヌ「——粛正者」

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