第十話〜覚醒〜
ユクシヌ「レイジ教官の記憶を戻す、を条件に加えると言っている」
彼女から完全に殺気と殺意が消えてしまった
ユクシヌ「お前が日々、苦しい思いに苛まれているのは知っている—
その原因を生み出したのはこちらにある—しかしそれ故に、
それを無かった事に出来るのもこちらだ」
——男が手を差し伸べる
ユクシヌ「レヴァノイズは—…いや
俺はお前の力を必要としている、お前の望みを持っている
頷くだけで、お前の心の苦しみは無かったことになる——さぁ、どうする?」
レツィア「——…わたし…は—」
レイジ「聞くな!」
ユクシヌ「ダニメラッ‼︎」
ダニメラ「そんな…薬が切れるなんて事は—」
レイジ「絶対に聞くな!いいか!俺はここに居る!
それともコイツの言葉の中に俺が居るのかッ⁉︎——レツィア!」
レツィア(胸が締め付けられる—こんなにも…
こんなにも…ッ…あなたの言葉が心に伝わるなんて…)
“あの時”の失敗は忘れちゃいけない
あの失敗を心から悔いるわたしを、消していい訳がない
無かったことになんてしていい筈がない
正面からあなたと向き合おうとするわたしは
確固として、ここに存在する
レツィア「わたしは、今ここにいる自分自身を否定したくない」
——男と改めて向き合う
ユクシヌ「…まさか要らないとでも言うつもりか?」
レツィア「欲しいモノは自分の力で手に入れる—アナタは
レイジの記憶を奪った、だから——アナタを倒して奪い返す」
ダニメラ「抵抗すれば男を殺すッ‼︎」
ユクシヌ「まぁ待て、ダニメラ——レツィアよ、
その言葉の重みをわかっているのか?
レヴァノイズを敵に回す事の重大さを、きちんと理解しているのか?」
レツィア「その名前で呼ばないで——二度と」
男は溜息を吐きながら首をゆっくり横に振る
ユクシヌ「もう少し利口な奴だと確信していたが…残念だよ、今日で—
お別れかと思うとッッッ!」
——残像が消える
ダニメラ(あの女、終わったわね)
レツィア(速い—)
ユクシヌ「“神速狼牙”」
§
ランクS -【増幅系列】
自身の覚醒核を限界突破し、体内時計をマッハ1まで速めることができる
それによって全ての動作が常時音速状態と化す
特に剣による斬撃速度は視認不可
——鮮血が飛び散った
レツィア「—ァ…」
レイジ「止めろッ‼︎頼む!彼女には手を出すなッ!」
ダニメラ「ユクシヌ卿が使うあの魔術の別名はマジックキラー
魔術行使する時間を与えないのよ」
レイジ「おいお前ッ‼︎うちの生徒にこれ以上手を出したら…ブッ殺すぞッ‼︎」
ユクシヌ「どの道二人は殺す、これは俺の独断だからな—
目撃者がいるとマズイんだよ」
レイジ「ぐッ‼︎…逃げろ副会長‼︎こうなったのは俺の責任だ…
だから…ッ頼むから…命を大切にしてくれッ‼︎」
ユクシヌ「哀れだよ…一体誰の為に、
彼女がこの報われない絶望の道を選んだか…
まぁただの教官風情に成り下がった貴様に、理解は出来ぬか」
レイジ「成り下がった…?俺は元々教官——ぐッ⁉︎」
——脳に激痛が走った
レイジ(なんだ…この痛み…心にも響く激痛…俺は——)
“——いつから教官になった?”
レイジ(…駄目だ…思い出せない……思い出せない?
思い出そうとした事もなかった……なぜ?)
ユクシヌ「運良く急所は外れ、即死は免れたようだが—
その傷、致命傷のはずだ」
しかし女は倒れない——俺を見つめたまま…
ユクシヌ「次は全ての動脈を切り刻む、それでも尚立っていられたなら
俺のコレクションにしてやろう——クソ女ッ‼︎」
音速の斬撃が放たれ
部屋全体に真っ赤な液体が飛び散った
レイジ(痛い…痛い…痛い…痛い痛い痛いッ‼︎)
“——当然だ、教官としての過去がないのだから”
レツィア「——」
レイジ「——レツィア」
そう呟いた—俺は彼女の事を、以前から知っている?
——更に痛みが強くなる
レツィアのことを考えればもっと…自我が崩壊するほどの激痛—
その先には、俺の知っている大切な何かが——
ユクシヌ「—死ね」
——心臓を剣で串刺した
レツィア「—レイジ」
ユクシヌ「断末魔の声すら聞かせないとは、どこまでも強情な女だ」
“こんな影も形もないモノの為に、今の自我を失う覚悟があるのか”
——ある
“記憶などという不確定で不安定なモノの為に
今の平穏な日常を壊す意味があるのか”
——ある
“一人の命の為に、世界と戦うだけの覚悟があるのか”
——ある
“その一人の命に、世界を壊すだけの意味があるのか”
——ある
“そのたった一人の命は、お前にとってはなんだ”
——世界で一人だけの、世界で一番失いたくない存在
——その名は
“真実の炎をその手に”
レイジ「レツィアァァァァァッッ!!!」
ダニメラ「なに⁉︎」
夢の中より発したその叫び声は、壁を突き抜け
現実世界へと響き渡った
レツィア「———」
“おかえり”
——俺にはそう聞こえた
レイジ「ちゃんと届いた—レツィア——ただいま」
ユクシヌ「ダニメラッッ‼︎」
ダニメラ「……へ?」
教官が座っていた筈の椅子に、女が拘束されていた
ユクシヌ「あの術を自力で解くなど…聞いたことがない…
だが残念だったな…彼女はたった今、あの世へ旅立った」
レイジ「そんなことより、自分の身を案じた方がいいんじゃないか?」
ユクシヌ(この余裕…何か…胸騒ぎがする…まさか本当に覚醒した訳…)
——気配が——変わる
レイジ「“幻楼ノ紅界”」
§
ランクZX(特S´+++)
【次元結界系列】
世の理を変えるほどの力を持った魔術
空間温度は術主の操作により1500万度まで上昇でき、
同等ランクの大魔術を含む、あらゆる魔術行使を無効にする
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