第九話〜沁神ノ戦器〜
—七階—
ダニメラ「どうやら彼女は、宴に乗ったようです」
ユクシヌ「賭けは俺の勝ちのようだな」
K「私の負けですね」
ダニメラ「執行部K、嬉しそうですね—」
ユクシヌ「相手の気持ちを最大限に利用する—相変わらずだなお前も」
K「利用だなんて人聞きの悪い事を——私はただ、
彼女の背中を押してあげたに過ぎないのだから」
—六階—
I「ァ—ぁ…」
レツィア「死にたい?」
力を込めて顔を横に振る——次の刹那
自身の身体を見ると全くの無傷だった
I「ハァ…ハァ…」
——しかし恐怖は消えない、先程の現象がリアル過ぎる夢となって脳に響く
レツィア「わたしの目的はIの処分—“だった”
でもそれは、真実に辿り着く今となってはどうでもいいこと」
I「風紀委員の下僕共…副会長をやってしまいなさいッ‼︎“悠久の操士”」
§
ランクB ++【支配系列】
対象を物理的に意のままに操縦できる魔術
最大支配数は50人
操り人形と化したTS達が一斉に襲いかかる
I「貴女にはコイツらは殺せないッ‼︎」
——しかし人形が副会長に接触した感覚がない
I(この多人数の攻撃でも掠めることさえ出来ないッ⁉︎)
瞬間、天井付近で何かが突き刺さる音がした
I(見破られた⁉︎)
天井から伸びていた見えない魔術糸が解け、
何かから解放されたように、30人のTS達がその場に倒れていく
レツィア「殺せないんじゃない—殺さないの」
I「……ムカつく…ムカつく、ムカつくムカつくッ‼︎
アンタのような自己中無能女が生徒会副会長⁉︎
ふざけんなッ‼︎殺さない?—ハッ!何カッコつけてんだよ…
ムカつくんだよッ‼︎ユズリハァァ‼︎」
“黒天裂く九神の抉”——発動
§
ランク特A ++【沁霊系列最高位】
執行部I固有武装魔術
沁神ノ戦器から生み出される高次元の摩擦斬撃
【沁神ノ戦器】
魔術戦争時代に神々が創り出したとされる兵器の一種
絶え間ぬ魔力を糧に、選定者へ理の域を外れた力を注ぐ
尚、兵器自体に常久の呪いが付与されている為、壊す事は出来ず
戦器自らが意思を持ち、器となる者を選ぶ
【クェルデフェルン】
一振りする度、空間に裂け目を発生させる
その裂け目から、シャボン玉のように噴き出す空気を互いに摩擦させ
高濃度の魔力を帯びた無数の刃を乱反射させる—その到達次元は3
——解き放たれた摩擦斬撃により、六階全域は見るも無惨な光景が広がっていた
I「ハァ…ハァ…」
レツィア「そんな奥の手を隠し持っていたなんて、正直予想もしてなかった」
I「…私が執行部まで上り詰めれたのは…この力があったからこそ—
故に…ッ、この力がある限り…私が負ける事はない‼︎」
レツィア「—なら逆に、それが無くなれば—貴女には何一つ残らない」
副会長の袖から魔力でできた刀が精製される
I「そんな無名の武器でッ!神が創り出した魔刀には勝てないッ‼︎」
殺意の一振りによる生み出される摩擦斬撃が、副会長を包み込む——
I「ギャハハハ!木っ端微塵になっちゃ—…え?」
——いない
レツィア「わたしが使う魔術の影縫いは、
影の道を創り、到達次元4の間を行き来する—今無傷のということは、
その刀で斬れるのは——次元3以下」
I「ッッッ‼︎」
レツィア「今は停電で、この階一帯が影の中——この意味わかる?
その武器とわたしの相性が—最高ってこと!」
I「クェルデフェルン‼︎あの女を切り裂けッ‼︎」
幾度となく刀を振り下ろす
I「シネシネシネシネッ‼︎」
レツィア「“悠久共鳴”」
§
ランクB【多重強化系列】
指定した箇所に何度も魔術を重ねる事が可能
重ねた回数分濃度が高くなり、魔術強度が増す
——影の道を突き進む
I「そこかァ‼︎」
無数の斬撃が霧散する
I「なにッ⁉︎」
暗闇から一閃一太刀が空を切り、Iへと襲い掛かる
I「わッ私を守れッ‼︎」
周囲の空間を斬り、円を描くように摩擦斬撃が放射する
I「このッこのッ‼︎(一体どういう事…右から一閃がきた瞬間に
また後ろからも一閃が…まるで分身が攻撃してるみたいに…)」
…分…身…?
——刹那、真後ろの床から、真黒く濃い影がゆっくりと這い出てきた
レツィア「貴女には戦術も戦略も見受けられない、ただの力の行使」
I「…刀の硬度を強化したんじゃなくて…数を強化していたのか…」
—
——Iの両腕が飛ぶ
I「…ぁ゛」
しかし何事もなく無傷——その瞬間を突き、彼女から戦器を叩き落とした
レツィア「抵抗するな」
背後からIの首に腕を巻きつけ、締め上げた
I「うぐっ…ァ、っ…—」
動かなくなった彼女をゆっくりと寝かせた
【七階・イシュカムシュの間】
エレベーターの扉が開く
ユクシヌ「—23時55分、ふむ—55分30秒で条件クリア
しかしこの程度の課題なら30分は切れたはずだ」
レツィア「—彼はどこ」
ユクシヌ「心配しなくてもここにいる」
レツィア「カレハ、ドコ?」
ユクシヌ「どこまで己を下落させれば気が済む—お前程の女が、
たった一人の男で価値が下がっていくなど、あってはならない」
レツィア「アナタ程度の男に——わたしの価値はわからない」
ユクシヌ「……ふん—もういい、単刀直入に言おう—こちら側へ来い」
レツィア「彼を解放するのが先」
ユクシヌ「——」
奥にある祭壇の明かりがつき、彼が椅子に座っているのが確認できた
ダニメラ「心配無用です、ただ眠っているだけ—」
レツィア「それは解放とは言えない、彼を渡して」
ユクシヌ「それはこちらの要求が済んでからだ」
レツィア「約束と違う」
ユクシヌ「こんな手の込んだ演出までしてやったんだ
要求を呑むのが筋だろう?」
レツィア「わたしには
学園もまだ卒業していない」
ユクシヌ「問題ない、君が要求を承諾すれば
レヴァノイズでの中将の座を与えると約束しよう」
レツィア「なんの戯言を…レヴァノイズの中でも
最高位クラスの称号をわたしなんかが—」
ユクシヌ「それだけの地位と名誉を与える価値が君にはある——更に、
彼の失われた記憶も戻すと言ったら?」
レツィア「——ぇ」
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