第七話〜条件〜

§罪を刀に罰を剣に§

ランクB【処刑系列】

罪を犯した者の血で刀と剣を創り出し、

対象の罪を刀に被せ、その刀を剣で粉砕し罰を与える

血で創られた刀は対象そのものであり、砕かれれば廃人と化す

※断罪執行証を持っていない者や無実の者には魔術が発現しない


—断罪執行証—

聖煉生徒を本人の許可無しに裁くことができる

取得権利があるのは、生徒会長・副生徒会長・風紀委員長

以上の三名のみであり、かつ幾つもの人格適正テストを経て

合格した場合のみ許可される



レツィア「……」


戦術メンバー(以下:TS)が五人がかりで彼女を止めていた


【風紀委員戦術メンバー】

風紀委員メンバー(GM)の中でもより実戦に特化した精鋭部隊

ありとあらゆる戦術魔術を駆使し、任務を全うする


TS「…なりません」


レツィア「離せ、やつはレイジをナイフで刺した—報復は受けてもらう」


TS「執行証を所持しているのは存じ上げております

この者を今、執行するのは可能です

ですが今は執行部のデメリットの方が遥かに高い—

曲がりなりにも、この者は拳闘部主将であり傭兵部のトップでもあります」


レツィア「——Iが仕向けた囮、この男を執行すれば

拳闘傭兵部に全面闘争の口実を与えることになる」


TS「お言葉ですが副会長、そこまで解っておられるなら

この者の処遇は、法を司る風紀委員に一任すべきです

彼等なら、責任をもって然るべき罰を与えてくれるでしょう」


TSが男に近づき、手錠を掛ける


レツィア「!」


ふと我に帰り、急いで教官の元へ駆け寄った


レイジ「俺は大丈夫」



TS「—これを飲め」


男の口に得体の知れない粉を入れた


ガロア「んぐっ⁉︎」


TS「使えない奴め」


男が急に苦しみだし、もがき苦しみ始めた


TS「どうした⁉︎」


TS「それが…手錠をした途端に苦しみ始めて…」


TS「そんな馬鹿な事—」


レツィア「見せて」


TS「危険です!演技かもしれません!」


レツィア「Iに自決を強制されてるのかもしれない」


男を調べる—


レツィア「……—中央医務室へ、急いで」


TS「俺とお前で連れて行く、残りは二人の護衛を」


レイジ「大丈夫なのか…?」


レツィア「あなたも行くの、刺されたでしょ?」


TS「……」



〈夜〉

—聖煉B棟屋上—

レイジ「此処にいたのか——奴は死んだよ」


レツィア「殺される運命だったのよ、口封じも兼ねて——最初から」


レイジ「…一体何がどうなってる?最近になって急に怪我人や死者まで…」


レツィア「風紀委員の実行支配力が弱まってしまったからよ」


クロサキ「悔しいがその通りだ」


レイジ「風紀委員長⁉︎」


クロサキ「デートの邪魔をして申し訳ない」


レイジ「?」


レツィア「冗談を言えるようになったんだ?」


クロサキ「違うのか?」


レツィア「わたしが男に興味ないのは知ってるでしょ」


風紀委員長は俺たちに近づき、屋上の手すりにもたれ掛かった


クロサキ「——カマをかけてみたが、あながち冗談でもなかったり?」


レツィア「そんなことより見て、満月よ——襲撃された夜と同じ」


レイジ「今度は俺たちが襲撃する番、だろ?」


レツィア「—えぇ、そうね——」


クロサキ「ターゲットの居場所は突き止めてある、今は学内宿舎にいる」


レツィア「——始めましょう」



—学園内宿舎—


クロサキ「先遣隊からの情報によると護衛のSV数は8人、

予測配置は、通路4・室内3・寝室1」


レツィア「了解、寝室まで気付かれずに侵入し、処理する」


レイジ「…周りはどうする?」


レツィア「万が一しくじれば、全員気絶させて—その時は合図する」


クロサキ「了解、全チーム配置に付け」


風紀委員長が耳に手を添え、無線でTS達に指示を出す

彼等の出番は、あくまで失敗した時の敵増援を阻止する為


レツィア「“影縫い”」


§影縫い§

ランクA +【空間移動系列最高位】

自身と複数の対象との間に影の道を創り、その目視不可の空間を行き来する


—Iの寝室—


予測通り寝室内にいた一人の護衛の影から出現し、無力化

その流れのままに、Iが横たわっているベッドに向けて

慟哭の預言書エルディアシス”を発動させた


レツィア「ッッ⁉︎」


数秒先の未来を見た刹那——

幻術では変えられない結果を知る事となる—


クロサキ📱「…?」


レツィア「——」


レイジ「どうした?…何か—」


レツィア📱「教官はそこで待機、サクヤ…来て」


—Iの室内—


クロサキ(おかしい…部屋の外にも中にも護衛がいない—

でも先遣隊からの報告では確かに……)


そして、寝室だと思われる場所のドアを開けた


クロサキ「——何してる」


副会長は一歩も動こうとはせず、不自然に停止していた


レツィア「“黒の滅却”」


黒の滅却ブラックキューブ

対象をロックした瞬間、動作検知で発動する魔の道具

全ての魔術を吸い上げ、対象に無差別へ返還放出する

返還というのは元通りにというわけではなく

致死ダメージとして帰る意味を持つ


クロサキ「…まさか…我々が今夜奇襲する情報が漏れていた…?

それに黒の滅却これは…聖煉内どころか、

何処を探しても入手なんて出来ない代物…」


レツィア「—そうよ、政府機関レヴァノイズをおいて他に存在しない」


クロサキ「…これで確信が持てた、レヴァノイズはこの件に絡んでいる…

Iが雇ったにしろ、政府に目をつけられるとは—」


レツィア「—だめ…少しでも動けば作動するわ…なんて迂闊——」


罠ならなんで攻めてこない…?

やるなら今なのに—こちらには何も——


レツィア「教官は⁉︎」

クロサキ「!」


察してくれたのか風紀委員長は急いで宿舎へ向かう為、部屋を出る



——そこは、血だらけの惨状だった


ドア前で待機していたGM達は、見るも無惨な姿にされていた


クロサキ📱「—ッ!全GMに連絡!何か変わったことは⁉︎」


——無線には不気味な濁った雑音が響くだけだった


クロサキ「誰でもいいッ!応答をッ!」


——突然、無線から声が聞こえてきた


📲「風紀委員、GM30人・レイジ教官は我々の管理下にある」


クロサキ📱「…誰だ」


📲「解放する為の条件は、ユズリハ・レツィア副生徒会長を

指定する場所へ一人で行かせる事」


クロサキ📱「何を馬鹿な—」


📲「アラノイヤタワー七階、今から一時間後がリミットとする

なお、条件を誤った瞬間にGM30人とレイジ教官を処刑する—以上だ」


—無線が遮断された


クロサキ(……副会長を一人で行かせる——

殺すだけなら黒の滅却で完結している…狙いは他にある…?)


寝室へと戻った

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