第三話〜生徒会と風紀委〜陰謀

レイジ「正直に言う——昨晩からずっとお前のことが気になって仕方ないんだ、—だから頼む」


俺の言葉が届いたのか、彼女は意を決して話し始めた


レツィア「生徒会定例会議の帰りに襲撃を受けた

敵は目視できただけで軽く四十はいた—

個体の戦闘力はおよそランクC ++〜B -程度、

全員がダガーナイフを所持し、暗殺系列の殺人スキルを習得していた」


クロサキ「バカな⁉︎対殺人武術アサシンスキル

取得する事さえ認められていない!」


レイジ「その通りだ、取得や習得をできる体制も当学園では整わせていない」


レツィア「誰が敵が聖煉と言ったのよ」


二人「 ——えっ?」


二人は思わず顔を見合わせた


レツィア「黒い魔術コートで身を隠していたが、わたしには無意味だった」


クロサキ「そうか!貴女は確か迷彩看破ソルソドスを会得していたわね」


§ソルソドス§

ランクS +

【看破系列の最上位】

対象が如何なる偽装迷彩魔術を用いてもそれを見破ることができる


尚、能力を自分のものにしている度合いを示すのは以下の通りである

取得<習得<会得

・取得=能力名をただ単に自分の物にしただけ

・習得=能力課程を修了し使えるようになること

・会得=能力の潜在力を限界まで引き出し、

常にランク以上の力を行使できる領域に達すること


レイジ「な…嘘だろ…?ソルソドスを会得した生徒がいたなんて初耳だ…

政府機関レヴァノイズ”でもそうはいないんじゃないか…?」


§レヴァノイズ§

ランクA +で卒業した者達が収容される政府直轄の特務機関

主に世界の治安や国家防衛、要人の護衛に就く


レイジ「…ん?さっき襲撃者の戦闘力はC〜Bって言わなかったか⁉︎」


レツィア「迷彩で全ての能力値を偽装していた—

恐らくその場にいた全員に、ランクA +“ロジャーの柩”が施されていた」


§ロジャーの柩§

ランクA +

対象に偽装迷彩を施し、他人を欺くスキル

会得すれば疑似透明化にする事が可能となるため、学園は

対殺人武術アサシンスキルにも繋がると判断し取得を禁止した


レイジ「…つまり、C〜Bのランクが偽装されていたってことか…

確かに高レベルのランクは、相手を特定され易からな…」


クロサキ「百歩譲って仮に政府機関レヴァノイズだとして、

なぜ狙われる?」


レツィア「—嫉妬、わたしはそれが全てだと考えてる」


クロサキ「嫉妬?—誰かに憎まれているってこと?」


彼女は頷き、続けざまにこう言い放った


レツィア「一晩考えて整理した結果、生徒会執行部メンバー

コードネームI、やつが政府機関レヴァノイズに暗殺を依頼した—

これがわたしの辿り着いた答え——以上よ」


クロサキ「………ッ」


レイジ「Iとやらに会った事もないが…副会長の座でも狙っているのか?」


クロサキ「…確かに奴は、学園一の野心家と言っても過言ではないし

可能性としては有り得るが…まさか実行に移すに至るとは…」


三人は暫く言葉が出ず、沈黙が続いていた


レイジ「——でもまぁ…ようやく相容れぬ君達二人が、

こうして一緒にいる理由がわかった——

それと、もう一つ分からない事があるんだが…

…なぜ俺を助けた?余計に関係が悪化してしまわないか?」


レツィア「—無実の人が殺されかけているのに、助けないバカはいないでしょ——それにあなたは、聖煉の特別顧問であり教官でもある

優秀な人材を失うわけにはいかないしね」


クロサキ「教官、そう言うことにしておいて欲しい」


レツィア「…は?」

レイジ「?」


レツィア「わたしはもう行く、手筈は任せる」


クロサキ「政府機関レヴァノイズが出てきてからでは手遅れになる

——早期に決行する」


レイジ「…やるのか?…Iを」


クロサキ「GMの戦術チームを二人に付ける——決行まで我々は仲間だ」


副会長が部屋の扉を開けたまま、こちらを見ていた


レイジ「…ん?」


レツィア「なにをしているの?早く来て」


クロサキ「暴君姫がお呼びだ、早々に立ち去れ」



—風紀委員専用通路—


レツィア「——そんなに怖い?」


彼女が呆れるのも無理はない

二人の距離は優に十メートルは超えていたからだ


レイジ「いや—他の生徒に誤解されると思って」


レツィア「風紀委員は味方よ、考えすぎ」


レイジ「いや…お前美人だしファン多いし…彼氏と思われ——

…とにかく君に迷惑をかけたくない、

生徒会は教員でも手が出せない天下にも等しい存在だからな」


レツィア「——そう、なら捨てようかな」


言葉にならないような小さな声で—そう口遊くちずさんだ


レイジ「ん?何か言ったか?」


これだけ距離が離れているため、聞こえる筈はなかった


彼女はそれから、口を聞いてくれなくなった



—生徒会執行部—


G「何だと⁉︎目撃者を拘束しておきながら取り逃がしたァ⁉︎」


SV「G様…大変申し訳ございません…思わぬ邪魔が入り—」


G「そんなのは理由になるか‼︎生徒会メンバーともあろう者が…」


I「そうかっかしないでよ、みっともない」


G「I…貴様いつからそこに」


I「そんな事より、彼等を怒るのはやめてあげなよ」


G「何故だ?目撃者を逃し—」


I「妨害したのが、クロサキ氏だとしても同じ事が言えるかしら?」


G「何を馬鹿なことを…風紀委員長が介入してくる筈が…」


SV「……」


I「高いリスクを侵してまで目撃者を救う理由があった—

それはつまり、風紀委員があの副会長襲撃に深く関わっている証拠」


G「ッ‼︎」


男の目が見開いた


I「風紀委員は生徒会に次ぐ権力を保持している—

過去の歴史から見ても衝突は幾度となく起こしてきている—

この事から導き出されるのは、極めてシンプルなモノ」


G「—覇権の—奪還」


I「ご明察、因みに過去の文書によれば、一度だけ生徒会は風紀委員に敗れ

覇権を譲り渡している」


G「なんということか…」


I「更にあの目撃者は、我が学園の教官であり、生徒会の情報を

風紀委員に横流しにしている諜報員である事も判明している」


そう言うと彼女は、おもむろに一枚の写真を取り出した

それは何故か古い写真だったが、副会長と教官らしき人物が

仲良さそうに手を握っているものだった


G「……I、まさか…」


I「証拠隠滅の為に燃やされそうになったけどね——

目撃者と副会長は繋がっている」


G「副会長が一体何故…」


I「私の推測では、副会長襲撃は自作自演であり

覇権闘争のキッカケが必要だった

風紀委員のリスクが高すぎる妨害、目撃者の不自然な行動—

——これで全てが繋がる

これで生徒会が風紀委員に、疑いの目を向けるのは明白の理であり

副会長襲撃は、決して話し合いでは解決しない事を—

風紀委員ヤツらが熟知しているの事こそが動かぬ証拠」


G「……」


I「そして風紀委員が覇権を制し、副会長が風紀委員長の座に君臨する」



N「———」

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