第二話〜拉致監禁〜

クロサキ「今なんて…」


“共に犯人を見つけ出して欲しい”—ならまだ看過できる発言だが、

“下に就きなさい”というのは無礼と侮辱を通り越していた


レツィア「わたしの指揮の下で、風紀委員を動かして」


クロサキ「何を—」


レツィア「周りには絶対に勘づけさせない——風紀委員長の名声に

一切の傷はつかない——聖煉から罪深き者を断罪するために

サクヤの力が欲しい」



—教員室—

レイジ「……」


理事長「何か考え事ですかな?」


レイジ「あぁ…オブライエン理事長、すみません」


理事長「恋—ですかな?」


レイジ「違います。では私は次の授業がありますので」


理事長「頼りにしてますよ—Mr.レイジ

なにやら、不穏な空気が漂っているようです」



—渡り廊下—

レイジ「コソコソ後ろを付けて、気持ち悪いぞ?」


SV「穏便に事を運ぶ為に、人気がなくなるのを待っていたのです」


レイジ「生徒会…?一介の教員に用事なんて珍しいな」


SV「単刀直入に聞きます、貴方はどこまで知っていますか?」


レイジ「質問の意図が分からない」


SV「意図は教えられない」


レイジ「——昨晩、あの現場にいたのは本当に—ユズリハ…」


意識が途絶えた



—Fランク修練場—

いつまで経っても来ない教員に生徒達がざわつき始めていた


レツィア「聖煉のセンセーともあろう者が遅刻かぁ」


女生徒A「見て!あれ今朝の朝礼の!」

女生徒B「うわっ…あの超美人の!確かAランクって…」

女生徒C「こんなFの所に何か用があるのかな⁉︎」


レツィア「ねぇ、レイジ教官はまだ来ていない?」


男生徒「あ…!はい!さっきクラスの奴が教員室に確認しに行ったんですが…

もうだいぶ前に出たみたいで…」


レツィア「そう—ありがとう」



—尋問室—

レイジ「……ここは」


身体に痛みはない—魔術で眠らされたか…?

辺りを見渡すが見たこともない場所だ—

ここは—拷問室…?学園内にこんな場所もあったのか—


SV「目が覚めましたか、レイジ教官」


レイジ「…俺が…あの現場を目撃したからか?」


SV「はい、副会長が何者かも分からない連中にやられた事を

学園内外に、知られる訳にはいかないんですよ—例えそれが

どんな些細な可能性でも、拡散の元となりうる存在は徹底的に排除する」


すると男は注射器を取り出した


レイジ「正気か?俺は絶対に喋らない」


I「待ちなさい」


SV「これはI様⁉︎な、なぜこちらに…」


レイジ(部屋に入ってきた気配はなかった—最初からいたのか…?)


I「唯一の目撃者がウチの学園の教官とはね」


レイジ「執行部…教えてくれ、ユズリハは一体何に関わっている?」


I「——知りたい?」


空気が冷たくなったを感じた—これ以上、首を突っ込むなと言っている—


SV「I様、私共はG様の勅命により動いています」


I「この私に指図するつもり?」


SV「彼に事情を知られてはなりません…この薬で—⁉︎」


注射器を握っていた片腕を何者かに背後から掴まれていた


風紀委員メンバー(以下:GM)「この薬剤の所持は規則違反です、

我々風紀委員が没収します」


SV「なぜ貴様らがここに⁉︎」


GM「そこにいる教官は罪を犯した—従って、その者の身柄は

我々風紀委員が確保する」


SV「ち…違う!この男は罪を犯しては—」


GM「罪を犯したが故に、今断罪しようとしていたのでしょう?

それとも何か他の理由でも?—この手に持っている注射器の中身

“クトロキシム”は拷問でも使われる危険な薬だ、

それを使わなければならない理由を教えて頂こう—今すぐに」


SV「ぐぅ…ッ」


I「お前達、やめておきな」


SV「しかしッ!」


彼女から凍てつくような殺気が発せられた


SV「…御意」


GMに握られていた腕を振り解き、一歩後ろへ下がった


GM「立てますか教官?」


レイジ「あ…あぁ…大丈夫だ」


GMと共に部屋を出ようとした時—


I「生徒会執行部として一つ聞くわ——誰の差し金?」


GM「風紀委員長クロサキ−サクヤの意思だ、協力感謝する」


教官とGM達が出て行った


SV「I様、もし奴が風紀委員に例の事を洗いざらい喋れば、情報共有者が増え

外部への漏洩のリスクが高まります…どうか…」


I「別にいいじゃない」


SV「—はい?今なんと…」


I「——なんでも」



∬風紀委総本部∬

—委員長の部屋—


クロサキ「御苦労」


GM「生徒会はクロトキシムを使おうとしていました」


クロサキ「!——下がっていい」


GM達が退出し、二人っきりになった


レイジ「教えてくれ、俺は一体…なんの罪だ?“覗き”か?」


クロサキ「レイジ教官、貴方は無罪だ」


レイジ「…ならなぜ生徒会は俺を?」


クロサキ「それを知れば、もう無関係ではいられなくなる——そういうことだ」


レツィア「もうすでに関係ありありだ——構わない」


クロサキ「………」


彼女の表情でわかる—これ以上首を突っ込むなと

ここで俺が食い下がればきっと、明日からの生活が一変する

今までの平穏な日常に戻りたいなら——無罪だけを受け入れろ、と


彼女が用意してくれた安息の選択を俺は—


レイジ「俺は知りたい、教官としてとかではなく

シュウヤ−レイジ一個人として…あの夜の全てが知りたい」


クロサキ「———だそうだが、お望みの答えか?」


レツィア「—」


部屋の奥の暗闇から人影が現れた


レイジ「…ユズリハ」


そこにいたのは、生徒会副会長—ユズリハ−レツィアだった


クロサキ「覚悟を試すような形になってすまない」


レイジ「——話してくれるよな、副会長」

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