第一話〜裏切り者〜

【生徒会執行部】

K「これより執行部による臨時密会を始める」


∬執行部∬

ここ聖煉学園の教育方針を始め、各委員会の運営方針や

教員の処遇に至るまで、ありとあらゆる決定権を有する執行機関


I「昨晩、我が執行部の部長にして生徒会副会長が襲撃された—

犯行時刻は夜11時、敵勢力は同行していたSVからの情報でおよそ40人」


N「生徒会定例会議の帰りね—その時のSVの数はたったの二人—

ふむ、最も手薄な時だね」


G「それだけじゃない、襲撃された場所も時間も問題だ

本来、副会長があの道を通って帰るのは極秘であり、

知る人物は限られていた」


I「—何が言いたいの?」


G「状況報告書から判断するに、ほぼ確実に待ち伏せと推測できる

つまり、情報を外部へ流出させている人物、或いは

機関が存在することになる」


N「I、身内に裏切り者がいるってことだよ^ ^」


G「もしかしたら生徒会内部にいる可能性も—」


I「バカな…それはありえない!」


N「例えありえないことでも、他に可能性がないならそれが真実になる」


K「ハオの卵理論、か」


G「いずれにせよ、このまま放っておくわけにはいかない

万が一、生徒会が襲撃された事実が広がれば威信問題にまで発展しかねん」


N「“目撃者”でも居たら大変だからね、副会長がやられちゃったことを

他の学園の連中に知れ渡ったりでもしたら…」


K「“乗っ取り”が起こる、我々は絶対に力の程度を他学園に知られてはならぬ—

“魔術戦争”を引き起こさないためにも…」


G「特別調査チームを編成し、周囲から調べよう

それと部長の護衛を増やし、各会議の往復ルートの見直しを行う」


N「異論ないよ」

I「———」

K「うむ、これにて臨時密会を終了する」


—魔術戦争—

他国の魔術学園との文字通り、殺し合いの戦い

戦争に勝利した学園は、敗北した学園を吸収し乗っ取ることができる



【生徒会宿舎】

—副会長の部屋—

ノックの音がした


レツィア「—どうぞ」


❓「失礼します、副会長」


レツィア「二人っきりのときにその呼び名はナシって約束したでしょ?

聖煉学園風紀委員長、クロサキ‐サクヤ」


∬風紀委員∬

魔術ランクB ++以上から編成された生徒会に次ぐエリート集団

主な目的は学園内での違反者への処罰、鎮圧

噂では、遊撃と隠密に別れており前者は聖煉内、後者は学園外の争いを処理している模様


クロサキ「承知しました、ユズリハ」


レツィア「ちゃんと名前で」

クロサキ「それは—」

レツィア「今はわたしとあなた、二人だけ」


しばらく鋭く見つめ合っていたが、観念したようだ


クロサキ「レツィア!私を貴女の部屋に招くなんてどういうつもり⁉︎

ここは学園内で、私は風紀委員長、貴女は生徒会副会長なのよ⁉︎

私達が会うには正式な手続きをし、“評議会”を開いて

生徒会と風紀委員メンバーを招集しなければならないのよ!」


レツィア「そんなことはわかっているわ」

クロサキ「なら何故—…え?」


彼女は自らの上着をめくり、腹部を晒していた


——怒りを発していたクロサキの顔色が驚きに変わり、

そして焦り、次第に憤りへと変わっていく


レツィア「裏切り者がいる—ゆえに評議会を開くわけにはいかない」


クロサキ「裏切り…者?」


レツィア「——生徒会に」


クロサキ「目星は付いているのか?」


レツィア「あら、わたしの話を信じてくれるんだ?」


クロサキ「茶化すな、私は真剣に聞いている」


レツィア「…本当にごめん、わたしから誘っておいて」


クロサキ「で、どうなんだ?」


レツィア「うーん、八分ってところかな?まだ結論まで至ってない」


彼女に事の詳細を話した


クロサキ「なるほど、そうなると生徒会でも上位メンバーということになるわね」


レツィア「ごめん、このことを言えるのあなたぐらいで—」


クロサキ「……気持ち悪い

さっきから”ごめん”とか、私の顔色伺ったり…全然貴女らしくない

それとも何?私に後ろめたいことでもあるのかしら?」


レツィア「—そうね、わたしも少し演技が入っていた

おまえにこれが通じるはずなかったのにな」


—殺気が瞬時に魔術へと変わる


既に背後に背中合わせで立たれていた


クロサキ(影縫い⁉︎それも最上位の…S -…だが彼女はAランクのはず…

等級Sの魔術は修得でき—)


ユズリハ「今の一瞬で、おまえは二回死んでるよ」


クロサキ「なぜ…」


レツィア「ランクAの者がSの魔術を修得できないという道理はない」


クロサキ「……まさか私を疑っているのか?裏切り者と—」


レツィア「その逆よ、サクヤを頼りにしてる—だからこれは

お願いに近い命令—

“わたしの下につきなさい”」

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