第4話 ヘイワの話①
視線を上げると、正面には店内で特にお気に入りの小さめなアンティークの窓枠があり、それが
この
無粋にも携帯電話の着信音が店内に鳴り響く。電話という利器の発明を人類の愚行と称したくなるのは、決まってこんな時だった。持っていたカップを丁寧にソーサーに置いてからわざとゆっくり電話に手を伸ばすのは、愛する静けさを追いやった
「キララです!」
受話器を耳に運んでいる途中にも関わらず、相手の
「ウンモさん。丁度連絡しようと思っていたところです」
「キ、ラ、ラ! 丁度って言うけどね、本当はもっと早くに電話してもらわなきゃ困るんだよな。あー、今の溜息でまた一歳老けた。責任取って早いとこ私のこともらってよね」と続く声から、徐々に鼓膜を慣らしていく。
「二週間よ二週間。あれこれ私に仕事を押し付けたかと思ったら二週間も音沙汰なしってなくない? ノドカ君のおかげでこっちはてんやわんやなんですけど」
「頼んでいた仕事、上手くいっていないのですか?」
「舐めないでほしいな。一切の
「それは何よりです。では、てんやわんやの意味を間違えて覚えてしまっただけということですね。それに、正しくは十二日間かと」
「そうね、十二日間よね、失礼しました。十二日間もブランクが開いてしまって、ノドカ君の正しい扱い方忘れていました。……それじゃあ、報告だけれど」と、珍しくウンモの方から本題を切り出してくれた。久しぶりのウンモとのやり取りをこのまま楽しむのも一興だっただけに、親友が思ったよりも早くに落ち着きを取り戻してくれたことで残念と安堵が一対一の割合で頭を占める。
「至高会がタシロの遺体を見せろって言ってきてる」
愛する静けさと、愛する時間は、些細な溜息にでさえ吹かれて消えてしまうくらい、繊細である。
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