世代交代
主役の子供や後進などが成長し、次代の主役として活躍する。これもなかなか魅力的な要素です。
子供はどう成長したのか。親の意思や技能を受け継いだのか、それとも全く正反対の道を選んだのか。
父親似なのか、母親似なのか。
親世代の人物は、今どうしているのか。子世代に対してどのように関わっていくのか。
何なら、旧主役をラスボスにしてしまっても面白いでしょう。
まず、親世代の物語が十全以上に愛されている事が最低ハードル……と言う過酷さでありますが、その自信があれば挑戦してみるのも一つでしょう。
過去の名作の子世代が活躍するパターンも、近年よく見掛けるようになった気がします。
恐らく、かつて子供の頃にその作品を消費し、現在それなりに良い歳になった層をターゲットにしているのでしょうか。
それでなくとも、歴史物や大河ドラマのように1作の中で世代交代が行われるパターンも人気があります。
二世の顔を覚えて貰い、世代交代を納得して受け入れて貰う為に気を付けるべき点を考えてみます。
●親世代が頑張りすぎていないか
ありがちなのが、親世代や先代の主役が頑張りすぎて、二代目の存在を食ってしまうパターン。
結局、先代が主人公に返り咲いてしまい、何のために世代交代したのか? と言うのは名作でも散見されます。
これも難しいジレンマを抱えた問題で、先代の影が薄いとせっかく築き上げた株が落ち(それまでの活躍とのギャップも目についてしまい)、前作据え置きで強いと次世代の存在意義を食ってしまう。
これも新旧主役の得意分野を変えてみるなど、工夫が要る所です(例:先代は武闘派、二代目は頭脳派など)
私が見た巧い例としては、“親”世代と言うには少しズレますが、Zガンダムで再登場した時のアムロ(先代主人公)があります。
シリーズ通して最強のパイロットとして名高い人物ですが、この作品ではちゃんと脇役に徹しています。タイトル名であるガンダムにも一切乗りません。(他の汎用機には何度か乗りますが)
しかし彼は、兵器ですら無い輸送機で新型のモビルスーツを撃墜しています。
少ない出番の中で、新主人公とは毛色の違う活躍を見せたわけですね。
これによって、その規格外の強さが健在である事を示すと同時に「ガンダムに乗って活躍する!」と言う見せ場そのものを新主人公から奪っていません。
少なくとも、次世代が成長途上のうちは、旧主役と競合しない位置に配置すると良いのかも知れません。
●才能を継承させるか否か
この“才能”と言うものについては、次回にでも取り上げようと思っているので、今回は簡単に。
やはり、親や師匠である先代と同じものが、二代目にも期待されてしまう所でしょう。
それでいて、先代と全く同じでも、それはそれで飽きられてしまう。
この辺も、定番の面白さと未知の面白さの関係に近いものがあります。
とりあえず、先代ありきの新主人公であるなら、先代の能力に影響を受けて然るべきでしょう。
先代を凌ぐ才能があるのか、先代に叶わないからこそ別の分野を極めるのか、自己流でやってきたけどここ一番で受け継いだ能力が光るのか。
はたまた、親世代の色んな先達から多角的に影響を受けて自己流を編み出すのも面白いでしょう。親世代の人物達も、今一度輝くチャンスです。
餓狼伝説の最新(最終?)作であるMARK OF THE WOLVESにおいては、それまでの主役だったテリーに育てられた、前ラスボス・ギースの息子が、新たな主役に据えられています。
前主役と前ラスボスの良いとこ取り……と言うと一見して中二病っぽい設定ですが、前ラスボスから受け継いだ一部の大技は制御しきれていない描写もあります。
また、プログラマが意図したのかしていないのか、ゲームバランス的には弱キャラの部類に入るため「借り物の力で圧倒してドヤ顔」的な嫌味は全く感じません。
むしろ、血統による力に驕る事もなく、頑張って強敵と渡り合おうとする姿は応援したくなるものです。
しかし、あれこれ条件が揃うと狙えるコンボでは、敵の体力の半分以上を奪い去る凄まじい爆発力を発揮します。これもプログラマが意図したのか、たまたまなのかはわかりませんが。
ほか、好きな二世タレント・嫌いな二世タレントの両方においてランキング1位を恣にしている長嶋一茂氏なども、親に影響されつつも独自路線を貫くと言う意味で好例だと思います。
●その人物は結婚させても反感を買わないか
直接、次世代の在り方を書く事とは無関係ではありますが、旧世代の人物を本当に結婚・出産させても良いのかは一考が要ると思います。
アイドルの結婚が一大スキャンダルとなる現実を鑑みれば、結婚させようとしている人物が「アイドルなのか俳優なのか」と言う認識は著者の中ではっきりさせた方が良いと思います。
もっとも、俳優が結婚しても発狂するケースはあるとは思いますが、アイドルよりは危険が少なくはあるでしょう。
私も詳しい方では無いので自信は無いのですが、小説においても読者とヒロインorヒーローとの疑似愛を狙ったものがあるとするなら、某46だとか某47だとかのアイドルに通じるリスクもあるのでは、と思います。
疑似愛と言うほど大層なショックでは無いにしても「あの人がまさか結婚して今や三十路過ぎの子持ちだなんて……」と思う人物はあり得ます。個人的にはビブリア古書堂の栞子さんとか。
人物や作風によっての向き不向きはあるかも知れません。
三國志のような歴史物であれば、最初からそう言う前提で読むし、むしろ歴史の流れを期待して読むものなので納得もしやすいのですが。
このように、クリアすべき問題はあまりにも多くはありますが、
著者・読者ともに思い入れの深い作品を書けて、その次世代をも書ければきっと楽しいだろうなと思います。
思い入れのある=面白い
とわかっているシリーズを、全く新しい気持ちで再スタートさせられるチャンスも、そうそう無いと思います。
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