怪力の真価とは

 並外れた筋力と言うのはまさしく“ステータス”の一つでありますが、果たして単純な打撃力だけがその真価なのか? と、ふと疑問に思いました。

 

 現実にある武器・武術とは、生身の人間が運用する想定で作られています。

 当然ですが、人間に持てない武器や人間に不可能な動きを要求する武術は、いくら強力でも価値がありません。

 武器の場合、重機関銃など据え置きで使う物もありますが……逆説的に、それをサブマシンガンのように軽々と持てる怪力があれば、本来の機関銃とは違った使い方が出来るのでは、と考えます。

 そして、そうした怪力の持ち主が敢えてサブマシンガンを選ぶ利点は薄いでしょう。

 中世の武器であれば、身の丈を越す大きさの大剣や斧などになるでしょうか。

 これらで二刀流が出来る程の怪力があると、その人の挙動全てが従来の剣術のセオリーからも外れる筈です。

 そしてやはり、そうした怪力の持ち主が短刀を使う利点は薄いでしょう。

 とは言え、重量の問題をパスしたとしても、武器には取り回しと言うものもあります。

 持ち主の身体や周囲の物体に干渉しないかどうかなども考える余地があるでしょう。

 そう考えると、逆に、素手で手軽に破城槌の成果を出せる者が戦力としてどれほどの脅威かがわかります。

 しかし、話は横道に逸れますが、素手で建造物やメカを破壊できるハードパンチャーって、自分の手が壊れないのだろうかと心配になります。

 

 岩石を投げる攻撃などは、古典的で安直ながら、意外と面白そうです。歩兵が攻城兵器になり得たり、遮蔽物や地面の起伏と言った“地形”をコントロールするような戦術も考えられます。

 入手性の高さも強みでしょう。

 

 私が良く使う設定で、魔法による常時の自己強化によって、恒常的に超人的身体能力を得ると言うものがあるのですが(=力と肉体の強靭さが必ずしも比例しない)

 過去の作品で長柄武器(40キロの大鎌)を主武装とした若い女性(言うまでもなく美人=軽量)を主役にした事があります。

 大鎌を軽々と振り回す様に違わず筋力の補正は極めて高いのですが、自重(ウエイト)の軽さから押し負ける描写を何度か入れてました。

 大鎌と言う武器の選定も、その弱点を補う目的があります。諸事情から死神っぽい風貌にしたかったのもありますが。

 ただこの設定については若干自信がなく、超人的な筋力が女性一人分の体重や40キロの大鎌でどうこう影響されて良いものなのかどうか。

 もっと数字に強い人なら、彼我の重量・武器の重量・魔法による補正をきっちり計算して書けるのでしょうか。

 

 とにかく、怪力と言うのは単なる打撃力や体格のスケールアップのみならず、全てにおいての条理が変わると思います。本来、不可能な戦術も可能となり、本当に突き詰めると破壊力だけの脅威では無くなる気がします。

 筋肉を書くと言うのは、特に作者の知力が試されるテーマなのでは無いでしょうか。

 ……などと、良い事を言ったつもりのオチとさせて頂きます。

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