ベテラン
小説に限らずですが、その分野で長年やってきたベテランには原則勝てないものと思います。
例えば戦記要素のある話で、主人公などの才能ある若い人物が簡単に敵の隊長を下してしまうと、少し違和感を覚えます。
ゲームでも、兵隊長と言う敵キャラは一般兵に毛が生えた程度の能力にされているパターンが多いように思えます。
実例を言えば、ファイナルファンタジータクティクスのガフガリオン(主人公が傭兵だった時期の元上司)と一騎討ちになる辺りなんかはもっと理不尽な難易度でも良かったと思います。
一方で、常勝の将軍と言う設定通りのステータスで仲間になった結果、終盤のゲームバランスを粉砕した某オルランドゥ伯なんかも居た事ですし。
名無しの一般兵は、言い換えれば戦闘のプロです。
その中で相応の年数を生き残り、統率者に相応しいとされた者が部隊長と言うものでは無いでしょうか。
たとえ高い地位に抜擢されなかったとしても、基本的に経験年数と実力は比例するもので、何かしら若造には崩しがたい強みがあると思います。
勿論、体力の面ではこの限りではありませんし、持っている情報が若者よりも古い事はあると思います。
そもそも主役などが並外れた活躍をするからこその物語ではありましょうが……。それを差し引いても、ベテランや部隊長、役職者とはワンパンで倒されて良い存在では無いとも思います。
主人公が「凄い!」と称賛されるのは、相応に凄い相手に打ち勝ってこそ。少なくとも棒立ちのカカシを殴り倒して得られる評価ではありません。
勿論、実年齢とキャリアは必ずしもイコールではありません。私の現職の現場でも5歳ほど年下のベテランが居ますが、目下、テクニックで追い付ける気がしていません。
HUNTER×HUNTERのキメラアント編において、稀代の天才とされる主役が血反吐を吐くような努力をしても、短期では先輩ハンターに勝てなかったエピソードなどは、とても印象に残っています。
そう考えると、近年「比較的若いベテラン」と言う形の人物が人気なのも頷けます。
例えば20代半ば~後半あたりの年齢は絶対的には若い部類に入りつつも、10代の主人公(=それに感情移入する読者の視点)からすれば相対的に歳上となり経験豊富なオーラを付加出来ます。
そして、先にも述べたように20代と言うのは、社会全体から見ると若造の部類に入るので、最終的に主人公が彼ら彼女らを追い抜いたとしてもそこまでの違和感がありません。むしろ、リアリティを保ちつつ成長のカタルシスを表現しやすいのでは無いでしょうか。
これが学校の部活であれば、1歳差ですら大きいと思います。
その若いベテランさんの存在感も保ちつつ、主人公を喰われない気配りも両立しなければならないのは、考え所だとは思いますが。
さしあたり思い付くのは(と言うか過去作で一度やりましたが)主人公とベテランさんの得意分野を違うものにすると言う事でしょうか。
主人公が戦士なら、ベテランさんは魔術師と言う具合に。これならベテランさんのレベルが遥かに上でも、実戦での立ち位置が違うので主役を喰うリスクは減らせると思います。
実社会のお仕事を書くにしても、現場仕事は先輩が圧倒的に上でも、主人公には先輩にないスキルや資格があったり。
勿論、若者が格上の相手に勝利する事自体に問題はありません。
条件を整え、現在の戦力差を埋める。その過程の説得力が大事なのでしょう。
その為にもやはり、ベテランさんは相応に強くあって欲しいものです。
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