第17話 魔族を倒したご褒美?

「勝った……の?」

「あぁ、俺たちは勝ったんだ」

「そっか……私たち、勝ったんだね」


 アリスちゃんと協力し、魔王の側近だという魔族の男を何とか倒す事が出来た。

 本当にギリギリの戦いだったけど、それでも何とか勝てたのは、アリスちゃんが魔族や周囲の魔物を足止めし、俺が攻撃するという、想定通りの動きが出来たからだろう。

 ただ、あの魔族……物凄く強かったのだが、アリスちゃんや俺の防御魔法を超えて大ダメージを与えそうな攻撃をする時は事前に宣言したり、アリスちゃんが魔物に囲まれて身動きが取れない時は攻撃してこなかったり……不可解な行動が多かった。

 まるで、俺たちに倒してもらいたいかのように……いや、そんな訳はないか。


「アリスちゃん、大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「でも、魔物の攻撃を結構受けていたよね? 一応、回復しておくね。……治癒」


 大きな怪我はしていないけれど、アリスちゃんの色んな所に打撲の痕があったので、回復魔法で治しておく。

 本来なら、俺が前衛でアリスちゃんを護りたい所なんだけど、能力的に逆にせざるを得ないのが辛い所だ。

 しかし……今は魔力を溜めていない、普通の回復魔法なんだけど、アリスちゃんの傷の治りが思っているよりも凄く早い。

 魔法の影響を受け易い……とか?

 回復魔法の効果が高いのは良いけど、デバフ効果のある魔法を受けた時の効果が高かったら困るな。

 まぁそれは後で確認するとして、今は治療が先だな。


「アリスちゃん。他にダメージを受けている箇所が無いか確認するから、腕とかの魔装束を解いてくれる?」

「はい。ありがとうございます」


 俺の言葉で、アリスちゃんが魔力で作った服の一部を消して……


「あ、アリスちゃん、服っ! 一部じゃなくて、全部解除しちゃってるよっ!」

「……えっ!? こ、こんな、外でしちゃうんですかっ!?」

「何をだよっ! というか、俺が脱がせた訳じゃなくて、アリスちゃんが魔装束を全部解除しちゃったんだってば!」


 とりあえず、アリスちゃんが再び魔装束を展開する前に、素早く色んな所を見たけど、何処にもアザとかは無かった。

 回復力が高いのかな?


「って、アリスちゃん!? ど、どうして水着姿なのっ!?」

「えっ!? だって、ライリー君が私の身体を見るって言うから……」

「大丈夫っ! さっき全裸になっていた時に、隅々まで見たから。あと水着姿は、色んな所が見えないけど、これはこれで良いねっ!」

「ライリー君のエッチ……」


 アリスちゃんが恥ずかしそうに、両腕で大きな胸を隠すけど……隠しきれてないっ!

 その上、どういう訳か学校指定の紺色水着姿だ。これは……エロい!

 待てよ。これだけ自由に服を着替えられるなら、本気でお願いしたら、メイド服姿になってくれないだろうか。


「うむ。我が娘ながら、見事な身体に成長したものだ」

「そうですよね。こう、水着の横から胸に手を入れたくなる……って、師匠!? いつから居たんですかっ!?」

「いや、さっき来た所だ。魔族が倒れた気配を感じたからな。しかし、周りに川や湖など一切無い荒野のど真ん中で、アリスをスク水に着替えさせるとは、流石だな。……ちなみに、俺としては巫女装束もオススメだぞ」


 スク水? 巫女装束? 聞いた事のない言葉だけど、そんな事よりも気になる事がある。


「というか、どうやって来たんですか? 俺たち、馬車に長時間揺られ、そこから更に結構歩いて来たんですけど」

「ん? あぁ、転移魔法だ。いつも、他の街の弟子たちの所へ行くのに使っているだろ?」

「使っているだろ? ……って、転移魔法だなんてメチャクチャ高等魔法じゃないですか。師匠って、実は凄かったんですね」

「いや、凄いに決まっているだろ。俺は……まぁその、凄いんだ」


 何か師匠が言い掛けていたけど、転移魔法は、時空魔法と呼ばれる時間を操作する系統の魔法で、かなり難しい。

 俺も母さんに教えてもらったけど、使用する事は出来なかった。

 ただ、別の時空魔法は使う事が出来て、母さん曰く、そっちの方が難しいらしいのだが……魔法にも相性があるしね。魔法がメインではないと言うアリスちゃんが、高等魔法の魔装束を使えたりするしさ。


「さて、こんな何も無い所で喋ってないで、家に帰ろう。送ってやるぞ」

「あ、それは助かりますね。これだけヘトヘトになのに、また歩いて戻るのは嫌ですし」

「……転移」


 師匠が魔法を使って、あっという間に戻って……


「って、師匠。この部屋は……冒険者ギルドですか? あ、依頼の完了報告か」

「そういう事だ。疲れているだろうから、それが終わったら、どこかの店で食事にしよう。もちろん、俺の奢りだ」


 前に通された事のある、冒険者ギルドの一室だった。

 早速アリスちゃんと共に、受付へ行こうとして、


「ま、待ってください。私はまだ水着姿なんですーっ!」


 着替えたアリスちゃんと共に報告と食事を済ませると、すぐに帰宅する。

 それからアリスちゃんと一緒にお風呂へ入り……互いに疲れ過ぎていて何も出来ず、二人で泥のように眠ってしまった。

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