第16話 無防備に眠るアリスちゃん
「アリスちゃん、お疲れっ!」
「……はふ。ライリーさんも、お疲れ様です」
冒険者ギルドへドラゴン退治の報告を行い、家に帰って来た。
うん。敵の数が多くなると、アリスちゃんが混乱しちゃうけど、今回みたいに敵が単体だと、余裕だったね。
まぁ、魔力を溜めまくって、一撃で終わらせてたんだけどさ。
ただ、戦いは道中の魔物を含めて大した事が無かったんだけど、とにかくドラゴンの居る場所までが遠かった。
夕食は帰りの馬車の中で簡易に済ませたけど、とりあえず早くお風呂へ……
「……すぅ」
って、アリスちゃんが既に寝てるーっ!
いや、ここ廊下だし。
風邪ひいちゃうよ!?
とりあえず、部屋へ運ぼうと、一部を除いて小さなアリスちゃんの身体を抱きかかえ、少し歩いた所で、突然俺の手に触れる感触が変わる。
何事かと思ってアリスちゃんに目を向けると、
「って、何で突然全裸っ!? ……あ、魔装束しか着ていない状態で熟睡しちゃったから、魔力で作った服が消えたって事!?」
俺の腕の中に一糸纏わぬアリスちゃんの身体がっ!
大きな双丘が重力に逆らって、存在感をアピールしてくる。
今、この家には俺とアリスちゃんしか居ない。
これはもしや、寝たふりをしたアリスちゃんに誘われているのか!?
「……すぅ」
はい。アリスちゃんは本当に寝てました。
とりあえず、アリスちゃんのベッドに寝かせて、ちょっとだけ触れてみたけど、全く起きる気配が無い。
なので、無防備すぎる姿で眠るアリスちゃんの色んな所をじっくり見てみたい……という気持ちは正直言って、ある。
一緒にお風呂へ入った仲だし、もう見ても良いんじゃないか? という思いだって、ある。
だけど俺とアリスちゃんは、恋人みたいな関係に近い気もするけれど、ハッキリそうだと言った訳じゃない。
だから、だから……死ぬほど勿体ないけど、アリスちゃんが眠っている間に、あんな事やこんな事はしないんだ! ……物凄く勿体ないけど!
でも最後に、もう一回だけ胸をチラっと……いやいや、ダメだっ! 静まれっ! 静まるんだ、俺の色んな所っ!
ベッドで眠るアリスちゃんに毛布を掛け……俺は、割り当ててもらっている自分の部屋のベッドへと戻る。
惜しい事をしたと、枕を濡らしている内に、気付けば眠っていたようで、
「ライリー君。もう朝ですよー。朝食の準備が出来ていますよ」
「ん……アリスちゃん? お、おはよう」
「はい、おはようございます」
アリスちゃんの、天使の様に可愛らしい笑顔で起こされた。
「あの……昨日はありがとうございました」
「あぁ、ドラゴン退治の事? 俺とアリスちゃんはパートナーなんだから、そんなの気にしなくても良いよ?」
「いえ、そうではなくて、その……眠ってしまった私を、ベッドまで運んでくださったんですよね?」
「……う、うん。けど、アリスちゃんは軽いし、全然苦じゃなかったよ?」
「それは私が軽いのではなくて、ライリー君が男の子だからじゃないですか? 魔法がメインだって言いながらも、ちゃんと筋肉があって、力も強いですし」
「いや、本当にアリスちゃんが軽いからだってば。あ、でも……胸は重たそうだけど」
「そうなんですよ。結構、肩がこってしまって……って、もぉっ! 何を言わせるんですかーっ!」
いや、アリスちゃんが勝手に自爆しただけであって、俺は悪く無いと思うんだけどっ!
頬を膨らませて怒るアリスちゃんを宥めつつ、もしも昨晩、アリスちゃんに無断で変な事をしていたら、俺は後ろめたさで笑い合う事が出来なかったかも……と、思い留まった事を内心安堵する。
うん、昨日の俺は偉い!
そんな事を考えつつ、アリスちゃんと楽しく朝食を食べて居ると、
「うむ。そのイチャイチャっぷりは、良し! もう、事前練習も最終段階に移って良さそうだな」
唐突に師匠が現れた。
……アリスちゃんと喋っていて気付かなかったけど、師匠はいつの間に食堂へ入って来たんだ?
居なかった……よな?
まさか、いつの間にかアリスちゃんの事しか目に入らず、師匠の事を庭の木だと思っていたのかっ!?
「ライリ、良いんだぞ? 俺に気を遣わず、アリスとイチャイチャして」
「えーっと、師匠。さっき言った、最終段階というのは?」
「気を遣わなくて良いと言うのに。……一応、伝えておくと、今日は魔族を倒してもらおうと思う」
「魔族! それってつまり、魔王の……」
「あぁ、部下だな。はっきり言って、ドラゴンとはレベルが違う。具体的には、ドラゴンよりも小さいので魔法が回避され易く、そのくせ攻撃はドラゴンよりも強い。しかも、魔法を使ってくるし、その魔族の配下の者も召喚するだろう」
師匠から魔族を倒せと言われ、アリスちゃんが息を呑む。
魔族と言えば、人間を滅ぼそうとしている、太古の時代から人間の敵だ。
そのトップである魔王を倒す事を目的としているのだから、その手下である魔族くらい倒せなければ話にならないのだろうが……師匠の話からすると敵の数が多そうだ。
魔物の巣へ行った時のように、アリスちゃんが混乱しなければ良いのだが。
「……って、あれ? 他の国では魔族が人間を襲うらしいですけど、どういう訳かこの国では、魔族の被害って殆ど無いですよね? それなのに、どうやって、どこに居るかも分からない魔族を倒すんですか?」
「あぁ、冒険者ギルドが魔族の居場所を知っているよ。偶然、魔王の側近がこの近くで目撃されたらしくてな」
「魔王の側近……そんな魔族が、この近くに……」
青ざめているアリスちゃんを抱きしめて励ますと、いつもの様に基礎訓練を行い、午後から冒険者ギルドへ。
父さんや母さんは、魔族と戦った事があると言っていたけれど、田舎にはドラゴンしか居なかった。
初めて戦う相手だけど、アリスちゃんと一緒なら、何が現れても大丈夫だ。
役割的には俺が守ってもらう方だけど、アリスちゃんには、絶対に勝利をプレゼントするっ!
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