第15話 神速の魔道士ライリー

「さて、ライリー。アリスはどうだった?」

「え、えっと、大きくて、暖かくて、柔らかかったです」

「……俺は昨日の魔物退治の事を聞いたんだが、前にも同じような返しをしてきたよな? というか、ライリー。その感じだと、早速アリスに手を出したんだな? よし、お前に神速の魔道士という二つ名をやろう」

「その二つ名……何も知らずに聞いたら格好良いけど、付けた経緯が微妙なんで止めてください!」

「はっはっは。ちゃんと魔道士ギルドへ正式に言っておくから、これから魔道士と名乗る時は、必ずその二つ名を頭に付けるように」


 いやこれ、誰かに二つ名の由来を聞かれた時、恥ずかし過ぎない!?

 俺は、師匠の愛娘に出会って二日で手を出し、この二つ名で呼ばれるようになったんだ……って、聞いた方もリアクションに困るよっ!


「アリス。そんな柱の影に隠れて居ないで、ライリーの隣に来れば良いじゃないか。何なら、ライリーの膝の上でも良いんだぞ? ……さぁ、俺の事なんて庭の木とでも思って、イチャイチャするがいい」


 いや、庭の木はニヤニヤしながら、こっちを見て来ないよ……って、アリスちゃん!?

 俺の前に立って、何をする気なのさっ!

 まさか、師匠が言った事を実践する気なの!?


「ライリー君。し、失礼します」


 えっ!? 俺の膝の上に向き合うようにして座るの!?

 流石にそれは、俺の理性が……あ、後ろを向いて腰掛けるんだね。

 うぉぉぉっ! アリスちゃんの小さいけど、柔らかいお尻が俺の太ももの上にっ!

 とても良いんだけど、これだとアリスちゃんの顔が見えないっ!

 しかし、今日は長い髪を二つ括りにしているから、うなじが……アリスちゃんのうなじが目の前にっ!


「ふむ。アリスはライリーと男女の中になったというのに、まだ恥ずかしいのか? 顔が真っ赤だぞ? それに、そんな浅く腰掛けずに、もっと深々と座り、ライリーにもたれかかるくらいやってみるんだ」

「こ、こんな感じ……ですか?」

「そうそう。うむ……俺も、もうすぐお爺ちゃんか」


 いや、師匠は何を言っているんだよっ!

 だが、この遠慮がちに、俺の身体へアリスちゃんがもたれ掛かってくるのは良い。

 物凄く密着している感じがする。

 ただ、アリスちゃんのお尻が柔らか過ぎて、いろいろとマズい事になってきた。

 どうしよう。これは……この状況では、どうにも出来ないぞっ!?


「さて。二人とも、そのままで良いから昨日の魔物退治の報告をしてもらおうか」

「あ、あの……巣を壊して、ギルドの依頼を達成はしたんですけど、殆どライリー君が頑張ってくれて、私は何も出来なかったです」

「そうか。やはり、これまで以上に連携を強化する必要があるな。俺から冒険者ギルドに話を通しておくから、高難易度の依頼を毎日こなしてもらおう」

「は、はい。分かりました。今日もライリー君と一緒にギルド……えぇっ!?」

「ん? アリス、どうしたんだ?」

「えっと、突然お尻の下から……ら、ライリー君は、真剣な話をしている時に、何を考えているんですかっ!」


 まぁその、何ていうか……生理現象?

 こんなの、どれだけ真剣な話をしていても、もう無理だよ。


「いや、だって大好きなアリスちゃんと密着しているんだよ? 仕方ないって」

「開き直らないでくださいっ!」

「怒ったアリスちゃんも可愛いね」

「可愛……い、今そんな事を言わなくてもいいじゃないですかっ!」

「じゃあ、いつなら言っていいの?」


 俺の上から降りてしまったアリスちゃんが、少し考え、


「それは……ふ、二人っきりの時に……な、無しですっ! やっぱり今のは忘れてくださいっ!」


 凄く可愛い事を囁いてくる。


「なるほど。やっぱり師匠が邪魔だという事か」

「おぃぃぃっ! それは俺も分かっているんだから、口に出さなくても良いだろっ!?」

「ち、違うんですっ! さっきのは間違いで……ライリー君、顔がニヤニヤしてるーっ!」


 いや、だってさ。

 アリスちゃんにそんなことを言われたら、ニヤつくに決まっているってば。

 ……朝からバタバタしっ放しだったけど、一先ず今日も、師匠から基礎能力の向上とアリスちゃんとの連携について指導を受ける。

 そして昼食を済ませると、今日も冒険者ギルドへ行き、俺とアリスちゃんの連携の実践訓練を行う。


「えっと、冒険者ギルドの本部からですね……驚かないでくださいね。その、S級冒険者だから……と、ドラゴンを倒してもらうようにと指示がありまして」

「あ、なんだ。ドラゴンか。どの辺りに居るの? どれくらいの群れ?」

「えっ!? 群れっ!? というか、ドラゴンですよ!? 普通は王国の騎士団や宮廷魔道士が派遣されるような案件なのに、どうしてそんなに平然とされているんですかっ!?」

「大丈夫、大丈夫。ドラゴンだったら、十歳くらいの頃から倒しているし。で、場所は?」

「は!? ……あ、えっと場所は……」


 何故かギルドのお姉さんの反応が過剰だったけど、次はドラゴンを狩る事になった。

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