第13話 S級冒険者

「じゃあ、俺はそろそろ別の街へ行ってくる。明日の朝にまた来るから、午後からは二人で冒険者ギルドへ行くように。あ、ギルドには話を通してあるから、受付で名乗るだけで良いぞ」

「あ、昼から別の街へ行くのは変わらないんですね」

「まぁな。向こうは向こうで俺を待っている訳だし、いきなり無視する訳にもいかんだろ」


 アリスちゃんの昔の絵を見せてもらった後、基本を疎かにしてはいけないと、そこからは魔法の制御の訓練になり、続いてアリスちゃんと一緒に魔物を倒す訓練となった。

 師匠曰く、魔王は自身を守る魔物を際限なく召喚してくるらしい。

 なので、アリスちゃんが俺を守りながら時間を稼ぎ、その間に複数回魔力を溜めて、一気に倒す……というのが、俺たちの戦い方だと言われ、師匠の指示に従って戦闘訓練を行う。

 ……個人的には、最初からこの訓練で良いような気もするんだけど、


「まぁ実際に魔物の群れと戦ってみれば、俺の言っている事の意味が分かるさ。じゃあな」


 そう言って、師匠が別の街へ移動してしまった。


「えっと……じゃあ、冒険者ギルドへ行ってみる?」

「そうですね。では、案内するのでついて来てください」


 どんな魔物と戦うのか分からないが、一先ず家を出る時に父さんからもらった剣を腰に差し、アリスちゃんと並んで歩く。

 歩きながら、冒険者ギルドでどんな仕事を請ける事になるのかという話をしている内に、すぐ到着してしまった。

 一先ず師匠に言われた通り、受付へ行くと、


「すみません。ライリー=デービスというのですが、師から受付で話を聞くように言われたんですけど」

「ライリー様!? という事は、そちらの女性がアリス様ですか!? ……畏まりました。奥のお部屋へどうぞ」


 受付のお姉さんに案内され、小さな個室へ。

 アリスちゃんと共に、その部屋にあるテーブルの席へ着くと、


「ライリー様、アリス様。先ずは当ギルドへの登録、ありがとうございます。こちらに、お二人の冒険者証をご用意しておりますので、先ずは内容にお間違いが無いか、ご確認願います」


 銀色のカードが二枚出される。

 一先ず、そこに掛かれた内容を見ていると、いきなり誤字を見つけてしまった。


「あの、俺たちのランク? がS級になっているので、修正していただけますか?」

「いえ、それは間違っていませんが。通常は一番下のF級――見習い冒険者からスタートですが、お二人は一番上のS級――白金冒険者とするように、本部から指示が来ておりますので」

「……はい? いや、あの……一番上のS級と言われても、俺たち未だ何もしていませんよね?」

「はい。これから伝説になる逸材だと聞いております。それと、この街では初のS級冒険者となりますので、我々職員一同、全力で支援させていただきますね!」


 伝説って何!?

 というか、師匠は誰に何を言ったの!?

 どうして、全くの未経験者が一番上のランクになるのさっ!


「それでですね、S級のお二人には、以前から問題となっている、魔物の巣を壊滅していただきたいんです」

「魔物の巣!? この街に、そんなのがあるんですか!?」

「はい。街の東側から出て少し行った所に、大きな森があるんですけど、その中が魔物の巣になってしまっているんです」

「ん? 街の東側……って、もしかして、サーベルタイガーとかが出て来る森ですか?」

「ご存知でしたか。その通りで、あの森の周辺は危険なので、冒険者にも近付かないように言っておりまして」


 いや、そこって絶対に俺が走り込みをさせられた場所だよね!?

 師匠は、魔物の巣がある場所で攻撃魔法禁止……って、無茶苦茶だよっ!


「どうか、街の安全の為に、お引き受け頂けないでしょうか」

「あの……ちょっと提案なんですけど、その森ごと消し去るってダメですかね? ちょっと強めの魔法で、ドーンと。かなり早く終わると思うんですけど」

「えっと、可能であれば、森が消滅っていうのは避けて欲しいんですが。魔物ではない、普通の小動物とかも棲んでいるので」


 ですよねー。

 まぁそもそも、アリスちゃんとの連携強化の為に行く訳だし、百倍くらいまで溜めた魔力で一気に吹き飛ばすっていうのはダメか。


「アリスちゃん……どう思う?」

「えっと、街の皆さんが困っているというのであれば、私は頑張ります」

「了解。アリスちゃんが受けるなら、当然、俺も一緒に行くよ」


 どういう訳か、いきなり最上位の冒険者になっていたけれど、一先ずアリスちゃんと一緒に魔物の巣を潰しに行く事となってしまった。

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