第7話 初めての男の子に驚くアリスちゃん
とりあえず、街に住む人は誰もがドラゴンを倒せる……という事もなく、アリスちゃんも一人でドラゴンは倒せないのではないかという話になった。
だからといって、アリスちゃんが弱いという意味ではなく、止めを刺せないという意味だが。
「まぁ何にせよ、今は昼食にしよう。本当は、魔物を倒さずに命懸けで防御魔法を使って欲しかったんだが……俺の予想の上をいかれたからな」
あ、やっぱり。師匠が攻撃魔法を禁止と言った理由は、俺が思った通りだった。
なので、次からは魔物を倒すの禁止……という条件を付けられてしまいそうだ。
そんな事を考えながら、修行場へ戻って来ると、
「ライリー。とりあえず、シャワーを浴びて来い。そこを真っすぐ行って、右の奥だ」
「あ、それはありがたいですね。行ってきます」
昼食前に汗を流して良いとなった。
いやー、これはマジで助かる。
これだけ走って来た訳だし、アリスちゃんの前に汗をかいたままで出たくないしな。
天使なアリスちゃんは、臭いとか汚いなんて言わないだろうけど、そんな風に思われるだけで嫌だし。
言われた通りに進むと、脱衣所があったので稽古着を脱ぎ、全裸になって風呂場へ。
中へ入ると、誰かが出ようとしていた所だったので、
「あ、どうぞ」
「ありがとうございま……って、ライリー君っ!?」
道を譲った所で、アリスちゃんと目が合い、互いの視線がそのまま下へ向かって行く。
「……あ。えっと……」
「………………い、いやぁぁぁっ!」
風呂場なので、アリスちゃんの柔らかそうな、大きな胸が思いっきり視界に飛び込んできて、その……二度目のおっぱいをありがとうございますっ!
魔力解除で全裸にさせてしまった時も至近距離で見ているのだが、お風呂上がりで、濡れて水滴が付いたままのおっぱいは、先程とはまた違う印象を持っていて……要は、良いおっぱいです!
その直後、アリスちゃんは身体も拭かずに、着替えだけ手にして脱衣所を飛び出して行ってしまった。
アリスちゃんの胸を思い返しながらシャワーを浴びて脱衣所へ戻ると、着ていた稽古着が無くなっており、新しい稽古着が置かれている。
汗で濡れまくっていたので嬉しいのは嬉しいのだが……俺のパンツまで無くなっているんだけど。
仕方なく、タオルを腰に巻いて、一旦荷物を取りに戻ろうとした所で、
「ど、どうしてそんな格好で出てくるんですかっ! き、着替えは置いておいたのにっ!」
脱衣所の外で、顔を真っ赤に染めたアリスちゃんが待っていた。
すぐさま、プイッと背中を向けられたけど。
「あ、あの新しい服はアリスちゃんが置いてくれたんだ。ありがとう」
「それは別に構わないんですけど、その……どうして服を着ないんですかっ!?」
「いや、俺の汚れた稽古着と一緒に、下着まで無くなっていたから、新しいのを取りに行こうと思って」
「下着……って、思い出させないでくださいっ! ……お、お父さん以外のを見たのは初めてなのに……」
下着から、何を思い出すんだ?
その後は、アリスちゃんの声が小さ過ぎてよく聞こえなかったけど、どうやら食堂の場所を教える為に待ってくれていたみたいなので、急いで着替えを済ませる。
何故かチラチラ顔を見られながら、案内された先に行くと、
「おぉーっ! 凄い。これ、アリスちゃんが作ったの?」
「え、えぇ。適当に作っただけだから、大した物ではありませんけど」
「えっと、俺も食べて良いの?」
「はい。ライリー君の分もありますよ」
六人掛けのテーブルに沢山料理が並べてあって、既に師匠が食べていた。
早速俺も席に着き、
「いっただっきまーす!」
先ずは目の前のパスタを口に運ぶ。
アリスちゃんの手料理だ。もちろん、旨いに決まって……る?
んーっと、次はこっちのサラダを食べてみよう。
うん、野菜の味がよく分かる。きっとアリスちゃんは、素材の味を大事にする派なんだよね。
そっちはポタージュスープかな? ……うん。コーンの味だね。
「ライリー君。お口に合いますか?」
「も、もちろんっ! 凄く美味しいよっ!」
「良かった。おかわりもあるので、沢山食べてくださいね」
アリスちゃんが天使のような笑顔を向けてくれるけど……あ、うん。薄味というか、味付けを忘れちゃったのかな?
……いや、アリスちゃんが作ってくれたんだ!
当然、全部食べるべきだろう!
師匠なんて、普通にパクパク食べているし。
だけど、せめて塩を。それだけでも、かなり味が変わると思うんだけど……いや、アリスちゃんの料理に調味料を足すなんて、言語道断!
食べる! 食べるぞっ!
「凄い。師匠に言われて、かなり多めに作ってたんだけど……男の子って、本当に沢山食べるんですね」
「あ、アリスちゃんが作ってくれた料理だからねっ!」
顔には一切出さないけれど、夕食は俺が作ろうと、密かに思ってしまった。
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