ほっとする。
「平気か、姫?」
「うん……大丈夫だよ、あははっ」
「あーーっ。泣いたら
いつも通りに欲しい物をねだるその顔にも
「……悪かった。オレが祭りになんて誘わなかったら……」
これはオレの失態だ。
祭りに対する
姫の敵は現役の小学生。ということは祭りのメインに参加している訳で、
つまり、山車の渋滞を見た時点で
多くの負の経験を積んだオレが彼女を守ってやらなきゃいけないのに。
クソったれが。
何をしているんだ、オレは。
「バッカじゃないの、お兄さん」
だからこそ、その言葉は深く突き刺さる。
「……ああ、バカでごめん」
二十年弱の人生、散々
オレは学習能力のない、救えないバカだ。
「そういうところがバカだってことだよっ!」
どんっ、と衝撃。
姫の細い腕がオレの腰に巻き付いてきた。
「なっ……!?え、どうしたんだよ!?」
姫が。
オレを。
抱きしめた。
「もう、バカバカバカッ!お兄さんは全然悪くないじゃんっ!」
「いや、でも……!」
「だから、そういうところっ!いっつも自分のことダメ人間みたいに言ってばっかりっ!あたしもザコとかロリコンだとか言っちゃってたけどっ!自分のことなんだからさっ……!!」
ぎゅうっと力を振り
それはまるでか弱い者を守るようで、じんわり染み渡るように温かくて心地良かった。
「あたしは別に……お兄さんのせいとか、思ってないから……」
「……そうか。オレの早とちりか」
「もう……ホントだよ……ぐすっ」
姫はまた泣いている。
でもそれは苦痛に耐える涙じゃない。
それが分かるだけで、こんなにもほっとするなんてな。
「ということで、ジュース買って」
「はいはい」
泣き止んだらすぐにご
ちゃっかりしていやがるぜ。
「何が飲みたいんだ?」
「んーとね、トロピカルジュース!一番
「遠慮する気は?」
「ありませ~んっ☆」
ああ、今度こそいつもの姫だ。
七色の層にナタデココとタピオカ盛り盛り、パイナップルまで突き刺さった特大サイズをチューチュー飲んでニッコニコだ。
……コレ、人間の飲み物だよな?
「んっふふ~♪おいし~☆」
「そ、そうなのか……?」
「あれれ~、もしかしてお兄さんも飲みたくなっちゃった~?一口だけならぁ、飲んでもい・い・よ?」
ニヤニヤしながら眼前にゴテ盛りビビッドなジュースをちらつかせやがって。
間接キス出来るのかってオレを挑発してるんだろ?
お前の
「じゃ、一口もらうわ」
オレは一切の
「あ~~~~っ!?飲み過ぎだよ~~~っ!?」
「でも一口だろ?」
「お兄さんのバカーーッ!」
「ぐべはっ!?」
アッパーで
「おー、痛ぇ」
「ふんっ、自業自得だもんねっ!」
姫はそっぽ向いて残った分を大事そうに飲んでいる。
というか、小学生にしては難しい四字熟語を使いおるな。勉強嫌いなくせに。
「ったく。オレをおちょくるからだぞ。大体、今更間接キス程度で恥ずかしがる訳ねーだろ」
そんな程度の低い異性との接触で騒ぐなんて、小学生か中学生のバカ男子までだ。
それに姫とは互いに裸を見てしまった仲だし、事故とはいえ
「むぅ~、つまんないの~……――――あっ」
再びストローに口をつけたところで、姫の顔がぼんっと真っ赤に
って、もしかして。
「お前、まさか間接キスが気になったんじゃないよな……?」
「ふぁいっ!?そ、そそそそんなっ、あたしが!?なっ、ないないないないっ!」
顔をぶんぶん全力で振って否定しているよ。でも必死になればなるほど、真実味が増してくる訳で……。
「べ、別にお兄さんのことが気になるとか、好きになるとか!そういうことじゃないんだからねっ!」
それ、もうほとんど答えじゃないかな。
青春のひとときとは無縁だったオレでも、それの意味は分かるぞ。
まぁどうせ、『LIKE』の方だと思うけどさ。
「んじゃ、そういうことにしておいてやるよ」
「ちょっと、信じてないでしょ!もーーーうっ!」
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