会いたくなかった。
ミンミンミンミン、
暑い上に大合唱しているもんだから、
陽キャといえばホモサピエンスの方も夏真っ盛りで盛りっぱなしだ。特に調子に乗った陽キャが周囲の迷惑も顧みずフィーバーするので、街のあちこちでバカップルやら大騒ぎをするクソ集団を見かける。
視覚も聴覚も、ストレスバリバリでムカつく。
ホント、夏は大嫌いだ。
全世界のありとあらゆる陽キャが一斉に全滅すればいいのに。
「ねーねー、なんでそんなに怖い顔してるの?」
汗だくで不機嫌なオレを見つめてくるのは姫だ。そんな彼女も汗まみれ。だけどオレとは違って
「大体分かっているんだろ」
「まーね。お兄さんって友達も恋人もいないし、そんな人達に
「ほぼ正解だよ、おめでとう」
住んでいる世界が違う人間の、人生を
「さっさと済ませて家に帰るぞ」
「はいは~い♪」
現在、オレ達は買い出し中だ。
近所のスーパーへ食材の補給。姫は「お手伝いしたい」と言ってついてきた。正直サポートなんていらないのだが、母さんからの圧で渋々許してやっただけだ。
こんなクソ暑い中の買い物というだけで大変なのに、それに加えて姫の相手をしなくてはいけないなんて。もはや
「そういえばさ、お兄さんってお友達いないじゃん?」
「はいはい、そうだけど?」
「
「余計なお世話だ」
小学生目線で見たら友達がいないヤツ=孤独で寂しい人間と思われても仕方がない。子供向けのメディアでは古今東西友情を大切にしているし、友達がいるのは当たり前なんて風潮もある。
別に友達がいなくてもいいじゃないか、とオレは言いたい。
仲良しこよしが苦手な人間だっているし、友情の維持に精神をすり減らすことだってある。負の側面を無視して『友達は作るべき』と強要するのは間違いだろう。
散々人間の汚い部分を見てきた身としては、下手に他人と関わって友情に縛られるくらいなら全くいない方が
「あ、あたしは寂しいと思うよ?」
「オレは思わん」
「ひっど~い!雑に流した~!」
「ちょっ、静かにしろって!目立ったら絶対面倒なことになるだろ!」
母さんからの指示とはいえ、こんな陰キャ大学生が女子児童と二人きりなんて
だから出来る限り体を縮ませているのだが、姫と一緒にいるとどうしてか、自然と目立ってしまうのだ。
そんな時。
「お、もしかして灰原か?」
背後から呼びかけられた。
この声はもしかして。
悪寒がして、ぶわっと鳥肌が立つ。
「灰原って……あぁ、良太のことか」
「そんじゃあ隣のガキは誰だよ?」
更にもう二人。
間違いない。この声はあいつらだ。
「おい、灰原。シカトすんなよ」
肩を
眼前にはつり目のオールバックヘアー男、
中学校時代、オレをいじめていた三人組だ。
「う、うん……ごめっ……ごめん」
最悪だ、この三人に見つかってしまうなんて。
きっと夏休みだから地元に戻ってきていたのだろう。その可能性を念頭に置いて、外に出るべきだった。
「お前まだどもってしゃべってんのか?
「やめとけって紅松。オレ達もう大人だろ?」
オレの胸ぐらを
「悪いね良太ぁ、こいつキレ
「っせーぞ茶川ぁっ!」
真っ昼間から
「こんなんだけど、オレらこれでも社会人だから。昔みたいにやんちゃしないから安心しなよ」
「う……うん」
藍染の偉そうなフォローに、オレはただ
オレだって言い返したい。
あれだけのことをしておいて、「やんちゃ」の一言で済ませるな。お前らみたいな連中が社会人を名乗るな……と。
でも、それをぐっと飲み込むしかない。
我慢して、耐えきるしか
「ねーねー。もしかしてお兄さんと知り合いなの?」
「ん~、誰なんだい君は?」
おいおい、
何を考えているのか、姫は恐れることなく藍染に問いかけていた。暴力を生き
「あたし?う~ん、良太お兄さんの教え子?みたいなかんじ?」
「ははっ、教え子ぉ?それは驚きですね、はははっ。あの学校一のいじめられっ子から何を学ぶんだか!」
藍染は笑い続けている。
どうして笑えるんだ。中学校時代のいじめをしたのも他の生徒を先導したのも、全部お前達だろ!
それさえなければもう少し平穏に、ぱっとしないながらもまともな日々を送れたかもしれなかったのに……。
「それって、あなた達がお兄さんをいじめてたってこと?」
「お、
「そうそう。オレ達がいじめてたんだよな~」
紅松と茶川が認めて、ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべる。
反省など
「こらこら、それはちょっと違うだろって。オレ達は気弱な良太を
は……?
何を言っているんだ、こいつ?
全部お前らが
どうしてそんな
言葉に表しきれないほどに燃え盛る
はらわたが
「ふ~ん。そうなんだ~」
「そういうこと。オレ達はまぁ、こいつの
「つまり三人ともクズってことなんだね」
姫のその一言が、その場の全てを
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