お風呂でまったり。
それはお互いにとって恥ずかしい体験であり、泡を流して湯船に入ってからはずっと沈黙したままだった。
姫は
「…………むぅ」
膨れっ面で、姫はじっとりオレのことを
「そんな目で見つめられても困るぞ。抱きついてきたのはそっちなんだから……」
「分かってるよそんなこと……」
頭で分かっても納得は出来ない、といったところか。
もやもやするよな、そういうの。
「というか、なんで背中流すの気に入ったんだよ」
そもそもの
「だって……気持ちよかったから」
「うん。それがいまいちピンとこないのよ」
親にやってもらっているであろう背中を、代わりにオレが洗ったまでだ。それ以上でも以下でもない。ちょっぴりソープランドを連想してしまったけど、それはオレの主観だけ。姫には関係ないはず。
……え?もしかして性的な意味で気持ちよかったって話なのか?
おいおいおい。
それはダメだって。調教系エロゲでいうところの『開発』ってヤツじゃねーか。背中が性感帯ってか?
などと
「一緒に体洗うの……ホッとするから」
「え……?」
「だって、いつもお風呂は一人だったもん……」
それは……どういう意味だ?
オレはてっきり、家庭でいつもしている通りにやってほしいから頼んできたとばかり思っていた。なのにいつもは一人ってどういうことだ?
体を洗うのがうまくないのは親にやってもらっているせいではなく、一人で風呂に入っているから自己流になったということなのか?
じゃあオレに「洗ってほしい」と言ったり「もっと」とお願いしてきたりしたのは……。
「なぁ、姫……」
「……なぁに?」
思わず問いかけてしまった。だが――
「いや、何でもない」
――やめておいた。
これは安易に踏み込んではいけないことかもしれない。ましてや憶測だけでその領域に入るなんて絶対にいけない。
「えー、言ってよ」
しかし、
「……べ、別に大したことじゃないから」
聞ける訳がない。
誰が「あなたの家庭って複雑?」なんて配慮も遠慮もない質問が出来るのだろうか。少なくともオレには無理だ。
ここはうまいこと
「隠すことないじゃ~ん」
「う、うっさい。いいだろ別に……細かいことはいいだろ」
だけど、口から出るのは具体性に
「あ、分かった!エッチなこと想像しちゃったんでしょ!?」
「まぁそうだな……――って、ちょっ……ちょっと待て、今のなし!」
思わず生返事で返してしまい、急いで訂正。
確かにソープランドっぽいとか『性感帯開発』とか考えたけど、別に姫をエロ目線で見たってことじゃないから。
ホントに勘違いしないでくれ、三次元ロリはアウト中のアウトなんだよ。
「うわ~……図星かぁ」
「違うからっ!ノット図星!オーケイ!?」
「ホーケイ?」
「ンなこと言ってないって!」
「ひょっとしてホーケーち○ぽ
「やっかましいわっ!」
とまぁ、誤魔化しには成功したが下ネタいじりに移行するハメになった訳で。
風呂でまったりする余裕は、やっぱりなかった。
「ああ、疲れた……」
風呂上がり。
オレはぐったりして食卓につく。
テーブルの上には出来たての
「どうしてくたびれてるのよ、あんた。風呂場で何してたのよ?」
「色々あったんだよ、察してくれ」
母さんが冷ややかな視線を送ってくるが、回答するのが面倒臭い。そんなことより早く食べたい。空腹も限界まできており、お腹と背中がくっつきそうだ。つまみ食いしたくなってくる。
「やけに騒いでいたみたいだけど、いやらしいことしたんじゃないでしょうね?」
「お、おいおい……まだ疑われてるのオレ?」
「だってやりそうだし」
「実の息子のことくらい信じてくれよ」
再三の主張だが、オレはロリコンでおねショタ好きだとしてもそれは二次元に限る。現実でそんなこと求めたりはしない。ましてや悪知恵働く姫に手を出すなんて
「……うっ」
――手は出してないけど、触れてしまったのは本当だ。
ああ、太ももあたりにあの感触が
あの未成熟な禁足地が……。
「っは~~~!お風呂気持ちよかった~~っ!」
「うわぉおっ!?びっくりしたぁっ!?」
思い浮かべた瞬間、その持ち主である姫が戻ってきた。
突然の登場に心臓が止まるかと思ったわ。その反動なのか、今度はもの凄いスピードで脈打っているし。さっきから心臓に負担をかけ過ぎな気がするぞ。
「びっくりはこっちのセリフ~」
「そうよ。もう大学生なんだからもっと落ち着きなさい」
「す、すみません……」
あと、
あ、炒飯と野菜炒めはおいしかったです。はい。
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